一等賞
ホビワニされてなんとなくドフラミンゴの部下やり始めたキャメルの話
ショコラちゃんはワノ国で百獣達が可愛がっています
「ほしいものが決まった。一対一で話をさせてくれ。」
人もオモチャも家に帰った0時過ぎのドレスローザ。その王宮でドンキホーテ・ドフラミンゴはある男を待っていた。望み通り人払いは済ませ部下達も帰らせたこの王宮は静寂に包まれている。
「無いのよ、何も。何も見えないの。」とヴァイオレットに言わしめた男の望むものは一体なんなのだろうか。曇り空を見てあの男の濁った目を思い出した。
時は少し遡り数週間前、ある新世界の街の路地裏で獲物を仕留め片付けも終えた狂犬に一人での男が声を掛けた。
「"神切鋏"のキャメル、お前の噂は聞いてるぜ。何だって斬っちまうお前の鋏捌き、こんなとこで腐らせるのは勿体無ェ。退屈してんならおれの元で働かないか?」
「いかにも私がキャメルだが⋯名も名乗らない輩と話す気は無いよ。」
穏やかな口調のまま男は鋏を向ける。
「そりゃ失礼した。おれの名はドンキホーテ・ドフラミンゴ。聞いたことぐらいはあるだろ?」
「七武海の天夜叉君だね。すまないが今パタンナーとしてはお休み中なんだ。」他を当たってくれ、とそのまま路地裏の陰に潜もうとした男を引き止める。
「まあ待て何もタダ働きさせようって訳じゃねェ。望みを言ってみろ。何だって叶えてやる。」
男の動きが止まりそのままこちらへ向き直る。
「何でもか?」
「もちろんだ。その鋏をおれのために使ってくれりゃいい。ドレスローザに来いよ"神切鋏"。」
「⋯口約束は信用出来なくてね。契約書を用意させてもらおうか。」
かくして契約は成立した。
コン、ドアを叩く音が静かな王宮に響いた。入っていいぞと声をかける。
夜分遅くにすまないねボスと言いながら男は巻尺を巻き付けてきた。促されるままに立って測られながら話を続ける。
「フッフッフ何を始めたかと思えば⋯。まさか褒美として仕立て屋させてくれってのは無ェよな。もっと欲張ってもいいんだぞ?」流石プロと言うべきか。テキパキと採寸しながら男は答える。
「仕立ては好きさ。だがそれは人の下につかなくても出来るだろ?ボスは長身だからスーツが似合うと思うんだ。さあ最後に首周りいかせてもらうよ。」
そう言って巻尺を首に巻き付けーー鋏で首を斬り飛ばした。一瞬の出来事に理解が追い付かず固まっているおれにヤツが話しかけてきた。
「さあボス。ここからが本題だよ。」
「まずこれは君の能力かな?」影騎糸の首を持ちながら男は平然と続ける。
「当たりだが⋯。何故気付いた⋯?」
「何をするかわからない神殺しに一人で会うような不用心な男では無いだろう。と思ってね。もしここで本当に殺されるような奴だったらそれまでだ。」と言い放ち首を王座に置いた。
「本題に入ろうか、私が望むのは君の首だよドンキホーテ・ドフラミンゴ。」
「ほう、いきなり謀ほ「君、天竜人だろ?」
「なんでてめェが⋯」どうしてこのことを知っている?誰が流した?政府か?いや⋯
「長年天竜人を狩ってきたからかな、なんとなくだけどわかるんだよ。」こんな時でさえも穏やかな口調のまま男は続ける。
「今はまだ君の為に働くとも。ただもう何もかもが退屈で仕方の無くなったときに、生身の首を狩りに行かせてもらう。」
何を言ってるんだコイツは。訳がわからない。
「なんで今日わざわざ言った?いきなり襲えばいい話じゃねェか。」返事をしたところでさっきから目線が合わない原因に気付く。コイツは首も下の体も見ていない。
生身のおれがいる方に向いて話している。
「ここまで強い天竜人を狩るチャンスなんてもう一生無いだろうからね。不意打ちで終わらせるのは勿体無いだろ。」
いつのまにか出ていた月の光がコイツの顔に影を作ってしまったせいで表情はわからない。ただ暗闇の中で輝く目を見て気付く。
おれが拾ったのは人間ではなかった。
「なあキング、今日のキャメルの様子おかしかったよな。お汁粉にも見向きもしなかったぜ。」
「いつもあちき達を見かけると仲良くてなにより〜って珍しいお菓子くれるのに今日はなんだか怖い顔で素通りでありんしたよ。」
預かった駱駝を撫でながら今日の友に抱いた違和感を思い出す。いつも通り礼儀正しく丁寧ではあったのだが
「人間味が無かった。」
その言葉に同意するように駱駝が鼻を鳴らして相槌を打った。