一目惚れ

一目惚れ



「元の世界の“お兄ちゃん”の中にきみはいる?」


藤丸立香にこう質問された時、少女達は三者一様に「家族として」という枕詞をつけながら「いる」と答えるだろう。


「オレの中にきみ達はいるよ。きみ達の中にオレはいる?」


藤丸立香にこう質問された時、少女達は三者三様の花開くような笑顔で「恋人のあなたがいる」と答えるだろう。


───


イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

美遊・エーデルフェルト。

クロエ・フォン・アインツベルン。

この三人は、藤丸立香を心の底から愛している。

一目惚れだった。初めて彼を見たその瞬間、心と身体がずくん…♥ と疼いたのだ。

最初に分かりやすく一目惚れしたイリヤと、ある意味並行世界のイリヤと、イリヤから分かたれた半身。そんな似た者同士の彼女達が立香に運命を見出すのは、ある種の必然ですらあったと言えよう。

…魔法少女達が集うあの特異点で、イリヤは主役兼立香の相棒、美遊とクロは囚われのお姫様だった。故にイリヤは立香と肩を並べて戦い、美遊とクロは自分達を助けようと奮闘する立香(とイリヤ)を見ることになった。

イリヤ達にとっての立香は、『白馬の王子様』そのものだった。絵本の中にしか存在せず、また自分達には縁遠い存在……それが実像を伴って目の前に現れた時のショックは、イリヤ達自身にすら計り知れない。無垢な少女達の心には、それ程巨大な恋の楔が打ち込まれてしまったのだ。


元の世界の“お兄ちゃん”への想いが、消えてどうでも良くなった訳ではない。

…が、一向に報われない想いや“妹”としてしか見られていない事実、そして敵うはずもない恋敵(セラ、リーゼリット、アンジェリカ)の存在が、三人の心に諦観を生んでいたのは確かだ。

───恋の楔は、そんな諦観をもぶち壊した。

溢れる恋慕の情。久方ぶりな上に尽きることのない、甘酸っぱい心の疼き。それが少女達の恋の蕾を花開かせた。

…元の世界に戻った自分達は立香への気持ちを誤魔化し、いずれ若かりし日の思い出として心の奥底にしまっていくのだろう。ある意味憐れな話である。それは、開花もしていない萎びた蕾を無理矢理押し花にするようなものだ。

だが、立香のサーヴァントとして召喚されたイリヤ達は違う。イリヤ曰くの「かっこいいお兄さん」である立香と過ごす濃密な時間は、立香への恋慕を際限なく成長させていく。それに伴い、元の世界の“お兄ちゃん”への感情は“兄妹”としての揺るがない親愛以外全て押し流されていった。

それを心地良いとすら思う幸福の中、イリヤ達は今の己が免罪符を持っていることに気づいた。


───自分達はサーヴァントであり、元の世界の自分達とは関係ない。

───兄妹の情があるなら、別の人に恋愛感情を向けても良い。

───だから。


───


夜、立香のマイルームという名の愛の巣にて。


「ん…♥」


裸の立香と少女の唇が重なる。二人の横では、別の少女二人がそれを羨ましそうに見ていた。

舌を絡め合う中、少女は立香の背中に手を回す。

───幸せ。

でもまだ足りない、もっと欲しい。壊れてしまうくらい激しい愛をちょうだい、お兄ちゃん。

そんな意思を込めて背中に回した腕の力を強めると、立香は一旦身体を離して次の行動に移行した。

獣欲に塗れる中でも優しさを保たんとする、そんな複雑な表情の立香が自身の男根を少女の女陰と重ね合わせる。くちゅり♥ という卑猥な水音が鳴り、互いの性器が口づけを交わした。お互いの手や口で濡らしたそれらは驚くべき親和性を示している。

だが、立香はここで終わらせるつもりなど毛頭ない。彼はその先の鈴口と子宮口のキスを交わすつもりだった。

立香の男根がずぷぷ…♥ と膣内を進む度、互いの距離が縮まる。そして…。

少女は、立香の全てを受け入れた。


「あっ♥ あんっ♥♥ ぁんっ♥♥ あぁんッ♥♥♥」


熱に浮かされ思考も定まらない中、少女は自分に覆い被さり、必死に腰を振る立香を見つめる。


(───かっこいい。…やっぱり思った通りだ。かっこいいお兄ちゃんのすることは、何でもかっこいいんだ)


肉のぶつかる音、火照る身体に浮かぶ汗が伝う感覚、全身を貫く甘美な快感。それら全てが少女を煽り、官能的な嬌声を口から勝手に引き出していく。それを聞いて興奮したのか、立香は攻める手をどんどんヒートアップさせていった。

カリ高のそれが荒々しく膣内を擦る度、少女の心から元の世界の“お兄ちゃん”に抱く淡い恋慕が掻き出されていく。

代わりに充填されていくのは、「わたしの運命の人はお兄ちゃんなんだ」という確信と、「わたしの居場所はお兄ちゃんの腕の中なんだ」という圧倒的安心感。精神的な快感・充足感が、肉体的な快感を増幅する。

そんな快楽の大波から逃れようと身をくねらせる少女だが、立香はそれを許さなかった。おまえはオレの女だ、逃さないと言わんばかりに腰を掴んで、何度も何度も己の腰を打ちつける立香。結局、全てを呑み込む程の快感に少女の思考は途切れた。

獣のようにはしたなく喘ぎながら、立香の体に手を回す。立香にみっともなく縋りつき、身体を密着させながら全身全霊の愛を示す。

段々と腰の動きの速度を早めていく立香は限界が近いのだろう。それは少女も同じだった。

もっと、もっとちょうだい。わたしの全てをお兄ちゃんで塗り潰すような、“お兄ちゃん”への想いを呆気なく押し流すような、そんな快楽を。───かつて“お兄ちゃん”に求めた愛を。


「…ッ…!! ッ!!!」

「ッッッ♥♥♥ お兄ちゃんイぐッ♥♥♥ い゛ぐイぐいぐイくイ゛くぅううううッッ♥♥♥♥♥♥♥」


少女の膣内に吐き出される熱い白濁の奔流。それは、アインツベルンの最高傑作達と朔月の神稚児を虜にした男の遺伝子の群れ。立香の愛の証。

途方もない快楽で朦朧とする意識の中、少女は最愛の男性にキスを捧げる。舌同士を絡めて、口の端から唾液を垂らしながら余韻に浸る。

───少女達にとっての“お兄ちゃん”……それが指す人物は、いつの間にか立香になっていた。イリヤのように戦闘不能に陥った時、美遊やクロのように会話の中で言及する時、“お兄ちゃん”と言う単語で真っ先に思い出されるのは立香の顔だ。それ程までに、イリヤ達は立香のものとなっていた。


───


立香と少女達は、その後何度も何度も求めあい、貪りあった。


「お兄ちゃん♥ お兄ちゃんっ♥♥ お兄ちゃんッ♥♥♥ 結婚しよっ♥♥ それでもっともっとずーっと♥♥♥ 一緒にせっくすしよっ♥♥♥」

「お兄ちゃん好きっ♥ 大好きっ♥♥♥ 神稚児の力も子宮も卵子も心も全部あげるっ♥♥♥ わたしっ♥ お兄ちゃんのお願いなんでも叶える専用願望機になるうぅぅぅッッ♥♥♥♥♥」

「見つけた見つけた見つけた見つけたッ♥♥♥ わたしの運命っ♥ わたしのつがいッ♥♥ もう元の世界なんか戻りたくないっ♥ ずっとお兄ちゃんと一緒が良いッ♥♥ 藤丸立香お兄ちゃんと一緒がイいぃぃッッッ♥♥♥♥♥♥♥」


自分を貪欲に求める少女達に、立香は言い様のない愛しさを覚えた。彼女達はもう立香に首ったけだった。吐き出される欲の塊を全身で受け止め、ヨがり狂う程に。


「ぁ、は…♥ お兄ちゃん、せっくすもかっこいいよぉ…♥♥♥ 全部かっこいい…♥ 全部好き…♥♥♥」

「はぁッ♥ はぁっ♥ は、ぁんっ…♥ …あぁ、母様……わたし、やっと運命の人を見つけたよ…♥」

「…わたし、お兄ちゃんと出会えて良かった…♥ ご主人様の奴隷になれて本当に良かった…♥♥ …身体も心も全部惹かれ合って…♥ どんなご命令にも絶対服従して……幸せぇ…♥♥♥」


イリヤ達は、ようやく女としての充足を得た。かつて“お兄ちゃん”に求め、しかし与えられることのなかった種別の愛。“お兄ちゃん”ではなく、立香が与えてくれた愛。それが三人の少女の器を満たしていた。

…あのビースト衣装を着て精一杯媚びたら、この人は喜んでくれるだろうか。魔法少女衣装で媚びれば喜んでくれたので、期待はできる。

あぁ、お兄ちゃん。藤丸立香お兄ちゃん。わたし達の素敵な旦那様。

世界で一番大切な人。かけがえのない唯一。心の相性も身体の相性も最高としか言い様がない人。

この人との赤ちゃんが欲しい。幸せな家庭を築きたい。精神・魂・肉体の全てがそう叫んでいた。


───お兄ちゃんと一緒なら何も怖くない、ずっと幸せ。だからわたし、この人のお嫁さんになる。


それは、三人の少女が出した共通の結論。元の世界の自分達とは決定的なまでに乖離した証だった。

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