一歩進んで手放せない温もりを
※謎時空注意
※多分付き合いたて初デートとかだけど細かいシチュエーションは決めてないのでお好きに想像してください
『好きな人とやりたいことリスト』には『恋人繋ぎをする』なんて項目を用意しているけれど、普通に手を繋ぐことさえこうもハードルが高いとは。
スレッタのすぐ隣で揺れるグエルの手を掴む勇気が出なくて、手の甲にそっと指先を触れさせてみる。偵察は大事。
一瞬触れただけなのに心臓がドクドク激しく鼓動して思わず反射で手が引っ込んでしまう。
そんなスレッタの手をグエルの大きな手がギュッと握りこんだ。
「えっ」
想定外の反撃に口からは小さく驚嘆の声が漏れ、思わず歩みを止めてしまう。
グエルは急に立ち止まったスレッタを振り返って言う。
「間違いだったか」
平静を装った顔だけど、その声には不安がにじんでいて、スレッタの手を握る力が緩められる。
違う。 そうじゃない。
ぶんぶんと首を横に振る。離れそうになる彼の手に自由になった親指で踊りつく。
「間違いじゃ…ないデス……ただビックリしちゃって、ドキドキしちゃって……」
「リストの項目、だし……離れてほしく、ない、し……」
私は何を口走っちゃってるんだろう。ゴニョゴニョと誤魔化した後半の言い訳は耳に届いてないといいんだけどな。
顔がカアッと熱くなる感覚がする。でも、ここまで来たらもう一歩進みたい。
「……その…こ、こ、こ、恋人繋ぎしてもいいですか…?」
「おう」
無自覚の上目遣いでおねだりしたら、短い返事が返ってきた。
緩い繋がりを一度ほどいて、しっかり指を絡めて繋ぎなおす。
指先で触れたときよりも、手を握られたときよりも、心臓は忙しなく動いている。いっそ痛いくらいだ。
でもそれでも、この手を離したくないと思うほどに幸せだった。グエルさんも同じ気持ちでありますように。