一時(いっとき)の邂逅

一時(いっとき)の邂逅


「ん~…あれ?」

ルフィが目覚めると、そこは夜の草原だった

穏やかな風が吹き、大きな満月が辺りを照らす

「おっかしいなー。おれ、メリー号にいた筈なのに…」

首を傾げながら周囲を見回していると、目の前に人影を見つけた

ルフィのいる場所からは後ろ姿しか見えないが、腰に二本の刀を差しているのはわかる

「よし、アイツに何か聞いてみよう」

ルフィはそう言うと「おーい!」と手を振りながら人影に向かって走った

だが半分程近付いたその時、

「うわっ!!」

人影が振り返ったかと思うと、神速の抜刀でルフィに斬りかかった


「おい、急になんなんだよ!?」

ルフィはジャンプで距離をとりながら尋ねる

人影の正体は着物姿の男で、後ろにはねた青みがかった黒髪が風に揺れる

男は二本目の刀を抜き、鋭い切れ長の目を細めながらルフィに向かって構える

「いきなり襲ってくるなんて、オッサン何者だ?」

男は返事の代わりに踏み込み、一気に間合いを詰めた

ルフィは襲いかかる二刀をなんとか避ける

「なんだか知らねェけど…ちょっと止まれェ!スタンプ!!」

ルフィは一瞬の隙をついて跳び、ゴムの足による蹴りを放った

しかし、男はそれをクロスさせた刀でいとも簡単に受け止めた

着地したルフィが息を吐くと、男は急に刀を納めた

そして、

「くく…だっはっはっはっはっ!!」

急に大笑いし始めた


「な、なんだなんだ!?」

困惑するルフィをよそに、男は彼の元に歩み寄る

「いやァ、スマンスマン!さっきはいきなり悪かったな」

「オッサン、急にどうした?」

「いやなに、おれは“双子”達の話を聞いて、倅の見込んだ男がどれ程か試したかっただけだ」

男はそう言ってルフィに笑いかける

その整った顔立ちと目は、ルフィのよく知る人物に酷似していた


「おい坊主」

「なんだ?」

「お前さんの野望はなんだ?」

「おれは海賊王になる男だ!」

真っ直ぐに目を開いて言うルフィに、男は小さく笑う

「そうか。じゃ、その海賊王とやらに必ずなれ。世界一の大剣豪の船長だ。それぐらいなってもらわないと困る」

「大剣豪って…オッサン、ゾロの知り合いか?」

男は返事の代わりに指でルフィの額を弾いた

痛みや衝撃はない代わりに、段々瞼が重くなる

「あれ…なんか、ねむく…」

「短い間だが、会えてよかった。お前さんが船長なら、アイツがお前さんを選んで後悔してないなら、おれもテラも文句はねェ。アイツとの約束、忘れるなよ」

男はが微笑むと、ルフィの瞼は完全に閉じたそして、


「当たり前だー!!」


現実のルフィが目を覚ました

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