一年間敷地内にすら入れなかった
長老ぐるぐると不可思議な力が大気を循環していた。
金髪の男が工房に一人籠り、作業をつづける。ぼこりと地面から大まかな人形を作り、さらに細かく加工する。感覚だよりなため、決まった手順があるわけではないが、どの人形を作るときも真剣な顔をしている。その内心など推し量りようもないが。
踵、鎖骨、頬骨、肩甲骨、顔も性能も要望通りに作り上げ、自分の趣味も些か混ぜる。気が付くようなら上々だ、別の付き合いの形があるやも知れぬ。
工房に籠って早数週間、ろくに食事も摂らない顔は窶れるも眼がギラギラと輝いている。不自然に口角も上がっており、他者が見れば一週間は夢に見る形相だ。本人はこの上なく楽しんでいるのだが。
そうして最後の一つに納得がいくまで手を加え、売却のときまで整列させる。
この国はイベントが豊富だなァとか、孫たちの襲撃は明後日くらいかとか、血族に喧嘩を売ってきた輩はまだ生きているだろうかとか、少し前までは息子が飯を運んできてたなァとか、頭から締め出していたよしなしごとが思い出された。
ふうと大きく息を吐き、そのピンと張った集中の糸が途切れた瞬間、人型の嵐が飛び込んでくる。
普段ならば即刻叩きのめすところだが、普段とは違い回避も思考速度も遅すぎた。
まあ今までにないくらい注文が多かったしなあ。
「気分転換しよう!いいところに送るぞ!」
独り立ちして数百年経っても変わらない性格と物言いに、これからの展開をなんとなく察しつつ、メッセージアプリに二言入力して家から追い出す。
こんどは何が起こるのか。客は待っているから時間が止まる代物ならばいいのだが。
忘れると知りつつ、対話することになる人物に意識を向けた。
それがこの世界には存在しないものであるとは流石に想像の範囲外であったが。
『お前 出禁な』
お借りしたメーカーさん
Picrewの「立ち絵風男子メーカー」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=rTa2UyUO0p #Picrew #立ち絵風男子メーカー