一対の超新星

一対の超新星


新世界を目指す海賊たちが集う島、シャボンディ諸島。現在この島は麦わらの一味船長「モンキー・D/ルフィ」が天竜人を殴り飛ばしたことで大混乱に陥っていた。しかしそんな中において妙に落ち着いている者が二人・・・


「・・・まさか本当に殴り飛ばすだなんて。君の言うとおりになったな、セレーネ。こんな酔狂なことができるのは僕たちぐらいだと思ってたよ。」

「ホントホント!正直私も驚いてるよ!やっぱり一目見た時から何かやらかすと思ってたんだよね~。」

「でもどうしようマーロウ君?このままだと安全に出航できなくなっちゃうよ?」

「そうだね。彼の顔を拝んでみたいとも思ったが、そうも言ってられないみたいだ。すぐに出港準備を!」


この非常事態においてやけに落ち着いた会話をしているこの二人。片方は炎のような色の赤い髪が目を引く落ち着いた雰囲気の青年、もう片方は明るそうな雰囲気を漂わせた緑髪の女性だ。

すると二人の前に大きな影が現れた。

「・・・懸賞金3億2250万ベリー、『火輪』ヴァルツ・マーロウ。懸賞金2億3600万ベリー、『毒輪』アルテミア・セレーネ。」

「ッ、七武海・・・⁉」

大きな影の正体はバーソロミュー・くま。王下七武海の一人であり『暴君』と呼ばれた大海賊である。そんな大物が何故ここに・・・。マーロウと呼ばれた男性が疑念と驚愕を抱いたのも束の間、くまと思わしき大男は手を前にかざし二人めがけてビームを撃った。

「うわっ⁉」「きゃあ⁉」

しかし二人は悲鳴をあげつつもバック宙で難なくビームを避けた。どうやらあちらはやる気のようだ。二人の間に緊張が走る。

「見逃してくれるって雰囲気じゃないみたいね・・・!」

「ああ、こうなったらやるしかない!行こうセレーネ!」

「了解!私達『双炎同盟』の力、教えてあげる!」

覚悟を決めた二人は能力を解放した。するとマーロウの頭部が赤色の竜のような形状へと形を変え、腕は模様が描かれた一対の翼になり、足には鋭い爪が生え、腰からは赤い甲殻に包まれた尻尾が生えた。同時にセレーネの姿もマーロウと似たような容姿でありながらも緑色の甲殻に包まれた姿へと変化を遂げた。両者ともにワイバーンと人間を合体させたような姿だ。

「目標、排除。」

最初に仕掛けたのはくまと思わしき大男だ。彼の掌から再びビームが放たれる。これをマーロウは空中へ羽ばたいて避け、セレーネはバックステップで回避した。

「最初から飛ばしていくわよ!」

ドンッ!!っと思いっきり地面を蹴って突進していったセレーネは、そのままくまと思わしき大男に体当たりを食らわせた。ダメージを受けてよろめく大男だが、すぐさま口からビームを放ちセレーネを迎撃しようとする。

「させるかっ!」

しかしそこに空中からマーロウが襲い掛かり、大男に強烈な蹴りを加えて地面に倒した。更にマーロウは追い打ちとして口から火球を連射し、大男に更なるダメージを与えた。

この追撃が効いたのか、大男はマーロウに狙いを変更し、口と両手からビームを放ちマーロウを撃墜しようとする。

しかしマーロウはこれを次々と避けた。当たる気配は全くない。それどころかマーロウは攻撃を避けながら器用に火球を放ち大男にダメージを与えていく。

「私のことも忘れないでよ!」

そしてマーロウに気を取られた大男にセレーネが接近し、疾走の勢いそのままに後方宙返りしながら尻尾を打ち付けた。続いて吹っ飛んだ大男に接近し、尻尾での連続殴打。更にマーロウと同じ火球を吐いてダメージを与える。だが大男もタダではやられない。

「ああっ!?」

「セレーネ!ぐあッ⁉」

大男はすぐさま体制を立て直してセレーネを殴り倒した。続いてそれに気を取られたマーロウをビームで打ち抜き撃墜する。そして倒れたセレーネを押さえつけ、ビームで攻撃しようとした。しかし。

「なに、するのよ・・・!」

「!⁉?」

『グルルルルルル・・・!ギャオオオオオオオオオオオッ!!!』

その瞬間セレーネの姿が更なる変貌を遂げた。体躯は人間の数倍に巨大化し、顔も、身体も完全に緑色の甲殻を持つワイバーンのそれになった。そして巨体からくる凄まじいパワーであっさり大男の拘束を解いて弾き飛ばした。

「大丈夫かい⁉セレーネ⁉」

「平気だよマーロウ君!そっちは⁉」

「こっちも問題ない。しかしタフな相手だな・・・」

二人は顔を見合わせて考える。海軍大将が来ている以上これ以上時間は掛けられない。

「セレーネ、もう時間がない、連携技で一気に決めよう!」

「マーロウ君・・・うん、分かった!」

そう言うとマーロウは大男めがけて姿を変化させながら駆けていく。その姿はセレーネに酷似しながらも全身を赤い甲殻に身を包んだ巨大なワイバーンとなっていた。そしてマーロウはそのまま飛び上がると大男を軽々と掴み上げ、そのまま放り投げた。それと同時にワイバーンへと変化した二人の口の中に先ほどまでとは比べ物にならないレベルの炎が溜まっていった。マングローブに叩きつけられた大男は、全身から火花を散らせながらも立ち上がりビームを放とうとしたが、もう遅い。

「「天地双炎砲(リオス・デュオ・フレイム)!!!!」」

二人の口から放たれた火球が合体し、大きな一つの炎となって大男に直撃・大爆発を起こした。そしてこの一撃で限界を迎えたのか、くまと思わしき大男は倒れ伏し、動かなくなった。

「はぁ、はぁ・・・よし、なんとか倒せたみたいだ。」

「良かった~。やったねマーロウ君!」

二人は勝利を喜び合う。しかし、この勝利は並大抵のことではない。この二人が戦った大男は「パシフィスタ」と呼ばれる政府の人間兵器であり、億越えの海賊すら苦戦させる強敵である。しかしこの二人はそんな強敵を連携ありきとはいえ倒してしまった。『火輪』ヴァルツ・マーロウと『毒輪』アルテミア・セレーネ。まだ若いながらも強大な力を持つこの二人は、大いなる力を持つ大海賊へと成長しつつあった。

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