一問一答ならず
「何でテメェなんだろうな。」
風神の子は呟いた。
「さてな?」
凶兆の申し子は嘲笑った。
「何でアンタなんだ!」
憤怒の化身は吠えた。
「さてな。」
カリの化身は微笑んだ。
「何で兄様なんだろうなぁ」
弟たちはぼやいた。
「さてなぁ。」
兄は苦笑した。
「何で兄貴なの……。」
妹は咽んだ。
「……。」
兄は黙した。
「何でなんて、……わし様が、此れが、俺が聞きたい!」
怪物はから笑いする。
「運命とは、得てして望んだ者の元へ、望んだように運ばれはしないものだ。とある求道僧が語ったという言葉がある。⸺『間が悪かったのだ』と。」
太陽神の子は語る。
「おーおー。そんな一言で片付けるとは、薄情者ではないか、カルナ!」
怪物はから笑いする。
「ああ。過ぎた話だからな。……だが、そうだな。あえて余計な言葉を付け加えておくならば。」
太陽神の子は語る。
「オレは、お前の辿った運命を……遣る瀬無いと感じている。お前の側に居ることが出来ていたならば、もっと長く命を手放さず居れたならば、少しでも良い方に導くことが出来たのではないか……と。憂うだけで物事が解決されるならば、お前がそのように空虚な笑みを浮かべる必要もなかったというのにな。薄情者と誹りを受けるのも無理はないと思っている。」
友は目を伏せた。
「はあ?本っ当にお前の言うとおりだっ、後悔で腹が膨れるか!」
怪物は。
「スーリヤの子だろう。わし様の友だろう。それだけ言うなら、何で目覚めず沈んでいる!あっさり死んでるんじゃないよぉ!酷い、酷いぞカルナ!」
……怪物と化した、ただの人間は。
「たすけて、欲しかったのに……何で……。」
漸く、泣いた。
「嗚呼。嗚呼!あんな結末、こんな結末、誰が望むものか。認められない、認めたくない!」
青年は嘆く。
「悪という概念が無ければ、そんな誰もが報われない悲惨な世界になんてならなかった筈だ。……ならば、俺は。」
青年は嘆く。
「⸺私が、世界を、救わなければ。」
そして、授かりの英雄が、決意した。