ワールド・ブレイク

ワールド・ブレイク


一進一退の攻防を繰り広げるボルシャックドラゴン。しかしそれでも尚龍世壊ドラゴ大帝の力は健在であった。

(自分に戦える力があれば…皆に力を与えられるならば…)

その姿を見て一人不甲斐なく感じている藤丸。

「そんな事ないよ、マスターが私を信じてくれているから、私も全力を出せるんだよ」

「その通りだ…想いや絆は時に単純な力以上のモノを生み出す…超獣の歴史はいつもそうだった…」

気付けば傍にいたメリュジーヌとボルシャックがその意を感じ取り諭す。

「……ありがとう二人とも。俺(私は)信じる!今まで紡いできたモノは無駄なんかじゃないって事を!そして皆の勝利を!」

その時である。

突如光と闇それぞれの力を模した球体が現れ、令呪とは異なる形で藤丸の手の甲に紋章として宿ったのだ。

「わわっ、なにこれ!?」

「令呪とは違う力…なのか?」

突然の出来事に慌てる藤丸とメリュジーヌ。しかしボルシャックはそれを見て…

「そうか…彼らも力を貸してくれるのだな…」と呟いた。だがその雰囲気を裂くようにドラゴ大帝の咆哮が響き渡る。

「カルデアのマスターよ、ここで奴にケリを付ける。先程その手に宿った紋章を掲げ我に力を貸してくれ!」

「分かった!」

「そして境界の竜よ…今一度その力を振るってはくれないか?」

「任せてよ、アルビオンの力…まだまだこんなものじゃないから!」

———今、役者は揃った。


ボルシャックはドラゴ大帝の前に立ちはだかり、必殺のボルシャック・ファイアーを放つ。

非常に増大したその力はドラゴ大帝に直撃したがダメージを与えただけである…

だがそれはあくまでも囮の一撃。

その直後ボルシャックは飛翔し突進した。それと同時に背後の藤丸が片腕を掲げて叫ぶ。

「絆(NEXUS)の力を纏い、今こそ限界を超えてその先(NEXT)へ!翔べ!ボルシャック!」

すると掲げた腕から先程の光と闇の二つの力が飛び出した。

光の力は神々しい聖霊の王となり、そして闇の力は禍々しい悪魔の神となりボルシャックの身体を纏うように飛んでいた。

「行くぞ皆!今こそ我らの力を見せるときだ!」

そう叫んだボルシャックはその二つの力と共に光に包まれ新たな姿へと変わる。

だがそれを黙って見ているドラゴ大帝ではなく、その姿を消し飛ばそうと攻撃の体勢に入る。

その時———


「———誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)!」


天空より境界の竜からの一撃が放たれた。その一撃は凄まじく不意をついたとはいえ、あの龍世壊が呻き声を上げ、その核たる部位が露わになる程であった。

当然邪魔をされ怒り狂ったドラゴ大帝はその矛先をメリュジーヌへと向ける。

「ま、そうなるよね……」

そうなる事を覚悟していた彼女は静かに目を瞑り…そして龍世壊の怒りの奔流に包まれる———事はなかった。

「え?」

思わず辺りを見回すメリュジーヌ。見下ろすとボルシャックから放たれた光がドラゴ大帝の力を封じ込めていたのだ。

「すごい……!」

そのまま一直線に突き進むボルシャック。

それを阻むように未だ尚龍世壊に付き従う巨大な竜がその前に立ちはだかる。

しかしボルシャックから放たれた闇の力がその竜をいとも容易く破壊し尽くした。

ならばとドラゴ大帝は無数の竜を二人に差し向ける。

力など無いにも等しいがその数で纏わり付けば足止めにはなる。そうすればその隙に二人を葬り去る事も容易いだろう。

しかしボルシャックは止まる事なく突き進み咆哮する。

無数の竜が襲いかかるその時、ボルシャックの咆哮と共に炎が召喚陣となり…


「禁断竜秘伝———エターナル…プレミアムズ!」


突如響いた声と共に無数の竜は一瞬で消し飛んでいた。

メリュジーヌが振り向くとそこにはかつて戦い、共に肩を並べた少女———

禁断竜王Vol-Val8の姿がそこにあった。

彼女はメリュジーヌの方に振り向くとにこやかな笑顔を見せる。そんな彼女に涙ぐみながら笑顔で返すメリュジーヌ。

その顔を見たVol-Val8はドラゴ大帝の方を振り向くと、片腕を前に出し、広げた手を握りしめた。

するとどうだろう。ドラゴ大帝だけが時が止まった様に動けないでいた。


これこそが禁断竜王の力の一つ。数多なる弱者を吹き飛ばし、敵対する者の時を止める———

かつて歴史の裏に葬り去られていた、かの竜の力の再現であった。

再び二人は顔を合わせ頷き、前を見据える。


「龍世壊の守りは"境界の竜"が打ち破った———」

「龍世壊の摂理は"禁断の竜"が堰き止めた———」

「「だがそれより先を成し遂げるは我らにあらず———」」

「「ゆけ!絆を紡ぎ、翔け抜ける竜(ボルシャック)よ!今こそ歪み狂う"世壊"を撃ち壊せ!」」

メリュジーヌとVol-Val8が叫び、ボルシャックを送り出す。そして遂にドラゴ大帝の目前…露出した核たる部分にボルシャックは肉薄した。

僅かに動く瞳でドラゴ大帝はボルシャックの姿を睨みつける。

あれ程の力…ましてや光と闇の力をあの竜が使える訳がない…故にその理由を確かめる為にその姿を凝視する。

そしてその瞳に映った姿は———


光の聖霊王

闇の悪魔神

そして火の決闘竜

本来交わる事のない存在が友情と絆で結び付き、一つになった奇跡の存在…


【竜魔神王 バルカディア・NEX】


友と出会い、強敵と分かり合ってきた…

超獣世界を翔け抜けていったボルシャック・ドラゴンの集大成たる姿の一つ…


友情を…無念を…そして全ての者達の想いを込めたその一撃が遂に——"龍 世壊"を撃ち壊す———!



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