ローアド
え4注釈!
この短文は「双子のウタとアド」の概念を下地に「redの世界線でなんやかんやあってウタワールドに巻き込まれなかったローが、トットムジカが顕現した時点で付き合ってられるかとクルーたちを連れてさっさと逃げようとしたところ、恩人と妙にかぶる印象の女がいたのでつい手助けをしてしまう」というロー視点の話になっています。ご注意ください。
音楽の島エレジア ライブ会場
〜トラファルガー・ローの視点〜
――別に絆されたわけじゃない。
恩人と同じ能力の持ち主に、驚いたのは確か。だがそれだけだ。特段に気にすることなんてない、姉に比べて決断力にかける凡人と、さっさと見切って進めばいいだけだった。
なのに、それなのに、
(重なるんだ。あの日のコラさんの影に)
みっともなく震えながら、黒に飲まれた姉に立ち向かう妹の後ろ姿が、どうしようもなく恩人に重なる気がして、目を離せなかった。
ガラでもねぇと悪態をつきながら、あの青色の女に振るわれた喧しい鍵盤に割り込んだ。
ガキィィィン!!!
「トラ男くん…?」
「…別に絆されたわけじゃねぇ」
確かめるようにつぶやく。そうだ、誰が相手だろうと関係はない。大切なものを守るために大切なものを立ち向かう背中が、あんまりにもあの日の憧憬に重なったから。この女を志半ばで倒れさせたら、コラさんが俺にしたことを否定してまうような気がしたから。
「……ここでアンタに手を貸すのは、俺の矜持の問題だ」
「…え、なん、…あ、ありがと…う…?」
「呆けるな、立て凪屋。あの喧しい魔王とやらを止めるんだろう」
「!、っうん。ウタをアイツから引きずり出したい」
「やるべきことは分かってるのか」
「うん、でもそのためにはアイツに近づかなきゃ…」
「なら俺が道を開いてやる。自分のやることに集中しろ」
言い切って、返事を待たずにソイツを抱える。何か言いたげにしていたが知ったことじゃない。無駄にルームの範囲を広げてられるか。
「行くぞ、つかまってろ」
「エチョッ、ナニナニ」ヴーン!
ライブ会場の大天翼、今はもう朽ちた翼状の岩に転移し、音符の間抜けヅラを睨めつける。
途端に群がってくる音符の化け物共。狙いが露骨だ。どうやらあの魔王とやらはよっぽど俺と後ろの女を排除したいらしい。…まぁ天敵だよな、能力の性質上。
「別に弔いってガラでもねぇが…」
一合で雑兵を切り払いながら考える。
ドレスローザでドフラミンゴを下したことに後悔はない。コラさんの仇である以上、奴らがあれ以上力をつける前に目的を果たすのが最善だった。…だが同時にあの男もまた、コラさんが守りたかったものの一つだったことも忘れていない。
(だから今度こそ…)
「凪屋のジャマをする気なら、刻んでやるよ魔王サマ」
(最善以上を目指してみてもいいだろ?コラさん。)
突きつけた刃の鋒に、懐かしい濡れ羽のコートが映った気がした。