エースとの別れ1
モー
(…これは、脚が痛いのかな?獣医さん呼ばないと。)
モーモー
(お水どうぞ。)
父親であるシャンクスや、師匠であるベックマン程ではないが、研ぎ澄まされた見聞色の覇気を使えるアドは、生き物の感情がぼんやりと分かる。
激しい動きは出来ないが、家に居させてもらうだけなのは申し訳ないと思ったアドは、ここ数日牛の世話を手伝っていた。
エースは…ちょっと行ってくると言い残して裏山へ消えて行った。
(まあ…エース君なら仕方ない。)
正直こういう作業に向き合える性分ではないことは理解しているので、自由にさせておこうと思った。
(さてと、ご飯を捕ってくるか。)
「モーダちゃん、ちょっと狩りに出掛けてくるね。」
「はい!お気をつけて!」
アドは3つの銃を持っているが、その内の一つ、ライフルの"踊"を担いで狩りに出掛けた。
■
裏山に入り、生き物の痕跡を探す。
(…ここで待とう。)
1時間程待つと、オスのヤマドリが姿を現わした。こちらには全く気付いていないようだ。
ふ~っと息を吐き、息を止め、自身の心臓の鼓動と鼓動の間に銃弾を放つ。
ヤマドリを仕留めた。
(今日は鍋料理かな。)
仕留めたヤマドリを持ち帰ろうとしたその時、ガサガサと後ろの茂みから音がした。とっさに踊を構える。
「おいおい、俺だよ俺!ったく危ねえな~。」
「なんだエース君か…ってそれどうしたの?」
エースが担いでいたのは巨大な猪だった。
「遊びに行ってた訳じゃなかったんだね。」
「お前なぁ…俺のこと何だと思ってるんだ?」
「冗談だよ。捌いてあげるからご飯にしよう!」
こんな時間がずっと続けばいいのに。そう思ったアドだったが、叶わぬ願いであることはわかっていた。
■
「―――で、結局赤髪達と喧嘩して家出したってわけか。あんなにべったりだったのにな~。」
「…オヤジ大好きなエース君に言われたくないよ。」
「何だと!」
「ちょっと、火強くし過ぎだよ。もっと弱くして。」
「おっと。」
夜、アドはエースにメラメラの実の能力で火の調整をしてもらいながら鍋料理を作っていた。
「…うん、しばらくそのままの火力でいい、かな。」
二人で火を眺めながらエースはアドに話を切り出した。
「お前、本当は知ってるんだろ、俺がどうしてこんな所にいるのか。マルコ辺りに聞いたか?」
聞かれちゃったなと呟いたアドは、唇を結び、何かを堪える表情を浮かべる。
「そうだよ。私はエース君を殴ってでも止めるつもり…だった。」
「…だった?」
エースはアドの脇腹を見る。
「その怪我、ティーチにやられたんだろ?偉大なる航路の前半、それもこんなところでお前と殺り合える人間なんてそういねえ。」
「お陰で、エース君と喧嘩できなくなっちゃったけどさ、バカだよね私。」
「ならお前なんでティーチと―――」
エースは言葉を失う。
アドは大粒の涙を流していた。