ルフィvsシャンクス?
覇気と覇気がぶつかり合う。
黒い雷が何度も弾ける。
雷の中心には白く染まった青年。
対するは赤髪の男。彼の思考も未来も読み取れない。
ベガパンクを筆頭に所属を問わず医者や科学者、研究者など多くの専門家を集めたワクチン研究所。
その研究所の攻防戦という思わぬ形で赤髪海賊団と麦わらの一味の戦いは幕を開けた。
「なんでワクチンが出来るのを邪魔すんだシャンクス!!」
赤髪の男は静かに答える。
「ワクチン開発にMAD'sが関わっているからだ。
この混乱に乗じてろくでもないものを作っているかもしれないだろう」
それはありえない話だ。この状況でそんな真似をすれば世界の全てを敵に回す事になる。
「みんなはどうするんだよ!!このままじゃフーシャ村の皆はずっと寝たままじゃねェか!!巨人族のみんなだって!!」
「……もう世界はめちゃくちゃだ。いっそのことこのまま目覚めない方が幸せだと思わないか?」
それは自分に帽子を預けてくれた男でも新時代を望んだ歌姫の父親の言葉でもなかった。
「誰だ…おまえ?」
シャンクスの目が醜悪に歪む。口元には無機質な笑みが浮かぶ。この赤い髪の男はシャンクスではない。しかし気付くのが遅すぎた。
ふと視界の下から赤い液体が吹き出した。
視界を下げる。自分の胸の真ん中から美しい刀身が生えていた。
「ゾ……ロ?」
背後には誰よりも信頼を置く自分の右腕。
その顔はシャンクスと同じ様に表情が歪んでいた。
ゾロの腕にはかつての幼馴染から譲り受けたという刀が握られていた。
薄れゆく意識の中でも分かった。分かってしまった。かつて憧れた大海賊も苦楽を共にした大剣豪もとうに居ないのだと。
解放のドラムの響きが小さくなる。ルフィの姿が元に戻ってゆく。
ゾロの後ろではサンジがロビンをしきりに殴り続けているのが見えた。アフロを燃やされたブルックは乾いた音と共にフランキーに握り潰されていた。残ったナミとウソップとジンベエは赤髪海賊団の面々と共にそれを無感情に眺めている。まるでスイッチの入っていないロボットのようだ。
ルフィは消し飛びそうな理性を必死に抑え最後の力を振り絞る。そして今なおワクチンの研究を進めているであろうチョッパーたちに逃げろと叫んだ。
しかし既に声は出せなかった。