ルフィとウタの話 3
42 44 46「やっぱここにいたルフィ!」
「ん?ウタか?」
「もう夜なのにそんなとこいたら危ないよ。」
「大丈夫だ!ウタも隣くるか?」
「………行く。」
そういい、ルフィがいる船首にたどり着く。
「じゃあ私、こっち座るからそっち寄って。」
座ろうとするのはもちろん顔がよく見えるようにルフィの左側。
「……いや!ウタはこっちだ!」
「わぁ!ちょっと!」
体に腕が巻き付けられ、無理やりルフィの右側に座らされる。
「……何でいっつもルフィは私の左側にいるの?」
もう少しあとで聞く予定だったものをこの場で聞いてみる。
「……………」
「何となくはなしね。ちゃんと答えて。」
そう言ってルフィを見つめる。
「…………前の戦い覚えてるか…」
「…私がルフィに助けられた時のやつ?」
「おう…。あん時よ…最後…見聞色が途切れただろ…お前…」
「……うん。油断してた。」
「気づいたおれが助けれたけど、ウタ…お前気づかなかっただろ…」
「……そうだね…完全に油断してた。」
「おれが気づけたからよかったけどよ…次は誰も気づけなかったらって思うとよ…怖いんだ…」
「…それが左側にいる理由…?」
「……左目のほうにいれば…何かあってもおれがぶっ飛ばせるだろ…?」
「そっか……ありがとう…ルフィ…私を守ろうとしてくれて…」
ルフィの肩に頭を預ける。
「でも…ルフィ…私はルフィと同じ海賊なんだよ…?あなたに守ってもらうだけのお姫様じゃないの!今度はあんな油断はしない………だからルフィ…私を信じて…!」
「…何言ってんだよウタ…」
「あ……」
ルフィに抱き寄せられる。
「おれはずっとウタのことを信じてるぞ…おれはただ、お前の左目になりたいって思ったから、隣にいたんだ…勝手だけど、ウタのことを守りたいんだ。」
「(どこで覚えたんだろ…こんなこと……あったかいな…)」
「左目になりたいって……そういうことでいいの?」
「ん?どういうことだ?」
「…ま、あんたはそういうやつよね…気にしないで。」
「わかった。」
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「じゃ、聞きたいことも聞けたし、部屋に戻るね。あんたもいつまでもここにいちゃダメよ?」
そう言って立ち去っていくウタ。
「…………今回もバレずに済んだか…」
ポツリと呟く。
バレずに良かったと呟くルフィ。その理由はーーー
「………………」
ルフィの顔はウタの髪の色に負けないほど赤く染まっていた。
生まれて初めて感じる無自覚な恋情。それがバレたくない理由だった。
「ウタといたら、なんか恥ずかしいんだよな…」
ウタの一つ一つの行動がそんな感情を知らなかったルフィを苦しめている。けれどもウタを守りたいと思う親愛の方が強いため、顔をあまり見られず、視界を補助できる左側に立っていたのである。
未だに顔は赤い。ウタの身体の感触が、ルフィの身体に残っているからだ。
「柔らかかったな………忘れろ!………流石にそろそろチョッパーに聞いてみるか……おれ…なんかの病気なのかな…」
ルフィがウタに恋をしたと知るのはもう少し先の話である。
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「あ、もう一つのこと聞き忘れてた!一回戻ってーー」
ウタのことを守りたいんだ。
「……あれ…なんでこんなドキドキしてるんだろ…」
抱き寄せられた時のことを思い出す。男らしく成長した、女の自分とは全く違うルフィの身体。思い出すだけで顔がどんどん熱くなる。
「……ま、また今度でいいかな……」
なぜか怖気付くウタ。
「これって病気なのかな…ナミに聞いてみよ…」
ウタはルフィよりも先に恋心を自覚する。その時、どのように変わっていくのか、はたまた何も変わらないのかは、今はまだ、誰も知らない。