ルフィとウタの初めての夜
ウタ「ルフィ…今夜…いい?」
ある島に停泊していたときのことだった。ルフィが昼寝から起きると、隣にウタがいた。いつもの歌姫の姿はそこにはなく、ひとりの乙女の姿があった。
ルフィ「今夜…なにがだ?」
ウタ「…ッ!なんでもない!」
全然気づいてない。誘った私がバカだった。
その一言にそんな感情がこもっていることを察したルフィが慌てて引き止めるのも聞かず、ウタはルフィから離れどこかへ立ち去ってしまった。
――――――
ルフィ「ってことがあってよぉ…俺なんか変なことしたかなぁ?」
サンジ「…………」
女性の気持ちを一番分かる男はサンジだろう、そう考えてルフィは相談を持ちかけていた。
サンジ「言いにくいんだが…ルフィ、多分ウタはお前と…寝たいんだと思うぜ」
ルフィ「なんだそんなことかぁ〜、じゃあなんで怒っt」
サンジ「よく聞けルフィ」
ルフィ「ん?」
サンジ「レディから『寝たい』って誘ってくるのは…その、だな…『子供がほしい』ってことで…」
ルフィ「そうなのか、子供…………ええええええええ!?!?」
サンジの発言に思わずエネル顔になるルフィ。マキノやダダンから子供を作るとはどういうことか教えられていたが、“そういうこと”に誘われるなど考えてもいなかったのだ。
サンジ「ようやく事の重大さに気付いたようだな。……しっかしどうすっか……」
――――――
ウタ「ってことがあって…どうしたらルフィに分かってくれるかな…」
ナミ「……あの鈍感に気づかせるのは相当骨が折れるんじゃないかしら」
ルフィがサンジに相談をしている同時刻、ウタはナミとロビンに相談をしていた。
ロビン「そうね…ウタワールドにそういう雰囲気の部屋を用意するのはどうかしら?」
ウタ「それは恥ずかしい…というかこっちでしたいんだけど」
ロビン「あら、ごめんなさい」ナミ「そういうことなら、いっそのこと逃げられないよう…」
<ええええええええ!?!?
ロビン「…今のはルフィの声ね。様子を見てみましょう」
ルフィの絶叫を受け、ロビンは声が聞こえた方角にある部屋に目と耳を咲かせる。
サンジ『…ルフィはウタちゃんのことを傷つけたくないんだよな?』
ルフィ『…ウタがやりたくないことはしたくねぇ』
ロビン「…ふふっ」
ウタ「ロビン…さん?」
ロビン「どうやらルフィはあなたのことを相当大切に思ってるみたいね?」
ウタ「え……それって……」
ロビン「ルフィはあなたの気持ちを理解したみたいよ?少し遅かったみたいだけど」
ナミ「随分はやかったわね、ルフィにしては。あんたはどうすんの?」
ウタ「…わた、しは……」
――――――
サニー号メインマスト、中程のところに新造された船長室。サンジとロビンを筆頭とした一味のお膳立てによって、ルフィとウタはふたりきりになっていた。
ルウタ「「…………」」
ルウタ((き、気まずい……))
お互いがどう思っているのかある程度わかっていても、昼にあんなことになった2人はお互い話しかけられずにいた。
そのまま10分ほど無言が続き、ようやくルフィが口を開く。
ルフィ「……な、なぁウタ」
ウタ「……なに?」
ルフィ「昼間はよ……その……ごめんな、察してやれなくて」
ウタ「それは……こっちもごめん、ちゃんと言わないと分からないよね」
たどたどしくも、お互いの思っていたことを少しずつ吐き出すふたり。……壁に設置された映像電伝虫でふたりが見ていると知らずに。
ルフィ『そんでよ、ウタ。俺はお前がやってほしいことはぜんぶしてやる。だからどうしたいのか、正直に言ってくれ』
ウタ『うん……ルフィ、手、繋いで』
ルフィ『あ、あぁ』
ウタ『こっち…きて?』
サンジ「ったく、時間かけやがって…日が暮れちまうぞ?」
ロビン「でも、あの子達のペースを崩すのもダメ…でしょ、サンジくん」
サンジ「それもそうだな…ゆっくりでいいからぜんぶ吐き出せ!ルフィ!ウタちゃん!」
ルフィ『おぅ…ベッドに座るのか?』
ウタ『うん…隣座るね?』
ウタ「ルフィ…私ね、ルフィに…はじめて…もらってほしいの」
ルフィ「!!ほんとに…いいのか?俺で…」
ウタ「ルフィじゃなきゃ…だめなの」
ルフィ「…………あぁ、わかった」
ルフィ『だけどちょっと待ってくれ、誰か見てんなぁ』
サンジ「げっ気づかれた!」
ロビン「早く接続を切らないと…」
ルフィ「お前ら、ここからは見るなよ?ウタのためにもな」
サンジ「ルフィ!?……あ…あぁ、すぐ切る」
ロビン「ルフィ……ごめんなさい。2人が心配で」
ルフィ「……そういうことなら、心配かけた俺たちのせいだ。ごめんな」
ロビン「え…えぇ、ゆっくり楽しんで」
ルフィ「あぁ…じゃあな」
ばたり、と戸が閉まる。サンジとロビンは何もせず自分たちの部屋に戻るしかできなかった。
その後ルフィは船長室に戻り、ウタとふたりきりの夜を過ごした…。
――――――
ルフィ「ウタ…昨日は…大丈夫だったか…?」ゲッソリ
ウタ「ルフィ…すごかった…」ツヤツヤ
サンジ「あの様子じゃあ…ルフィはいつもより多めに肉出さねぇとな…」
ロビン「うふふ、たっぷり楽しんだみたいね?」
ナミ「フランキーに船長室頼んでおいて正解だったわね…いつかこうなると思ってたわ」
ルフィ「そうか…フランキーにも礼言わないとな」
その後しばらく、船長室の灯りがつく夜が続いたという――