ルナ冴SS⑬

ルナ冴SS⑬


「ああ、着替えたいのかい? 俺が手伝ってあげる」


……なんて考えは甘かった。

ストリップショー扱いされるどころか、いつの間にやらまた距離を詰めていたルナはニコニコと冴のバッグから衣服を取り出してそんなことを宣う。

お着替えタイムだ。幼児番組でしかお目にかかったことのない行為をよりにもよってさっきの今で悪気も無くやろうとしている。ムカつくを通り越してビビってきた。スペインの情操教育はどうなっているんだ。


「サエ、急に叫んだり暴れたりして情緒不安定なのはやっぱり犯されかけたせいで疲れてるんだろう? 俺は脱がせるのも着せるのも上手だよ。安心して任せて」


唖然としている内に元から伸びて破れて散々だった練習着の上をビリビリと剥ぎ取られ、トップレスの状態になる。

「はっ?」と冴は声と目を泳がせた。早業すぎて止める間も無かった。あまりに唐突であったから憤ることもできず、ただあんぐりと口を開ける他ない。

さらに意識の隙を突いてごろりとベッドに転がされ、視界に天井が入ったと思った瞬間にはもうズボンまで脱がされていた。スムーズすぎる。だが冴も鈍間ではない、パンツに指をかけられた事には気付き慌てて静止のためにルナの手を抑えた。


「待て、パンツまで履き替える予定はねぇ。っていうか上だけのつもりだったんだよ、ズボンも履くから返せ」

「ああ、そうなの? 早とちりしてゴメンね。いつも『みんな』は俺に脱がされれば脱がされるほど嬉しそうに鳴くからさ。つい」

「だから俺をテメェの飼い猫どもと一緒にするなっつってんだろ愛玩系サド。いいからどけ」


げしげしと、自分の脚も相手の脚も痛めない程度の力加減で太腿のあたりを蹴る。

シーツはカス野郎どもの血が散っていて破瓜を迎えた後みたいだし、胸元にはキスマークと見紛う虫刺され、体の至る所に手型のアザ、そしてベッドに横になっている少年はパンツ1枚で、その少年を押し倒したような姿勢の男は少年のパンツのウエスト部分に手をかけている。

こんな姿は目撃されれば誤解を免れない。


「冴ちゃん!!!! ねぇ犯されるところだったってどうい……う……」


考えたことがフラグになったのか。

顔中に心配ですと貼り付けてバタバタと旧救護室に乗り込んできた自身のマネージャーが、目に入った光景を見てこの世の終わりみたいに絶句した。


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