ルナ冴SS②
いつからだろう。糸師冴は夜な夜な数多の男を手玉にとるクイーン・ビー、あの東洋から来た美しい少年の肉体の虜になったスペイン男は数知れず、なんて事実無根の噂話がまことしやかに囁かれるようになったのは。
どんなガセネタだとうんざりしてスルーしていたのがいけなかったのか。スペインでの生活にすっかり慣れた頃には、指先で顎をくすぐってやっただけで人間の男を畜生の雄に堕とす百戦錬磨のミストレスであるという与太話は真実として定着してしまっていた。
モテる男はモテるという事実によってますますモテる。そのパターンはこのような特例でも発揮されるもので、公然の女王様になってからはますますそうあれかしとばかり求められて愛されて。
挙げ句の果てにこのザマだ。虚像と知らずに女王様を辱めてやろうぜなんてノリでいる低脳の悪漢まで誘き寄せてしまった。
(突っ込まれんのって、やっぱケツいてぇんだろうな。こんな形でバージン散らすならまだ見込みのある部類の駄犬に喰わせてやれば良かった。……いや、やっぱ嫌だな。別にそういう趣味はねぇんだし。駄犬どもにだって目の前の性犯罪者どもにだって股なんざ開きたかねぇよ。そもそもサッカーやりに来てんだぞ俺は)
怪我を回避するために大人しくしようかとも、ほんっっっっとうにちょっぴりだけ考えはしたが。なにせ生来の負けず嫌い。このまま従順に野郎のブツなんぞを咥え込んであんあん鳴くのはプライドが許さない。なんとかして最終防衛ラインを突破される前に逃げ出さなくては。
「ニッポンのオンナノコには女王様より大和撫子がお似合いだぜ。俺がコイツで教育し直してやるよ」
エロ本の竿役じみた発言と共に、男が己の下半身をぐいぐいと冴の太腿に押し付けて来た。具体的にどこと明言するのは凄く嫌な箇所が明らかな芯を持っている。既に臨戦態勢の一歩手前だ。ナマでお披露目されたら生々しすぎて吐き気を催す可能性がある。まだパンツとズボンに収まっていてくれて助かった。
でもこの勢いなら数分とたたない内に男の息子さんがこんにちはと眼前に挨拶してくるだろうし、扉を開けたくなくてもその息子さんは口とか尻とかにアポ無しで訪問をかましてナカを散々っぱら荒らし回るに違いない。なんて迷惑客。女王様に謁見するならもっと紳士的に来い。やっぱり嘘。そもそも誰だって招き入れたくなんかない。