ルコンの日々

ルコンの日々

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・先生


「教師?私が?」


草刈りが終わった後の庭でミーを撫で回していたら秘書君が声をかけてきた。

なんでも経験豊富な私から色々聞いてみたい人が多いとの事で、勿論私の承諾を得てから場所などのセッティングをするそうだ。

ココがお仕事で他の町とか行き来して数日帰って来ないので、正直暇だった事もあり引き受けることにした。


「その、いいのかな?私が下手に話すとマズい事だって……」

「大丈夫です、事前にどの様な分野について話すか分けておきますので何を話すか決めてくださればコチラで確認を致しますので」


それなら、大丈夫かな?


という事で後日。

非常時の避難所兼普段は子供達の室内遊び場をそのまま教室の様に椅子や机を並べた場所になりました。

……どっかの世界の講演会とかする状況みたい。


時間で区切って私が経験した事や知っている事の中でこの世界でも通用する知識と他の世界特有の事象という事で分けて説明したり、魔法、気候、科学の類を触りの部分だけ話したりした。


分かってはいたけれど、この世界では魔法が余りにも根付いているため木を使って火種を作る方法を殆ど知らない人ばかりだった……何気にナイフと木材だけで火起こしを実践したところが今日1番盛り上がったのはショックだったと言っておきます。


夜の時間に大人だけの参加として私が経験した奴隷について話した時には青ざめた人がちらほら居たり、人の売り買いに引いたりしていたのがこの世界の異様なまでの優しさを実感させてくれた。

まぁ奴隷と言っても本当に潰れるまで好き勝手されるのと高い金で買ったから大切に使うからな!というガチ奴隷と雇用奴隷とか幾つも種類があったのも言ったけどね?

後は……その、エロい話は大体盛り上がりました。基本的に民度良いんだけどこの世界ってエロい事はオープンというか、すっごく大好きすぎる。

ここじゃ振動魔法が全く見向きもされていなかったのにえっちに使えると分かった途端に老若男女問わず肉食獣の様な食い入り方をしたあの瞬間は……正直怖かった。


「ふぅ、やっと終わった」

「お疲れ様です、ルコン様」


裏で色々頑張ってくれていたのを知っているとこっちの方がお疲れ様と言いたくなるモノでして。

思わず頭を撫でてしまうと何も言わずに撫でさせてくれる。綺麗に整えられた髪は撫で心地がいい。


「ルコン様、そろそろ……」


ごめんなさいと私が言うとほんの少し触れただけで髪を整え終わる秘書君。

私のもさもさ髪には出来ない芸当だ。


そして私の火起こし話から始まって魔法を可能な限り使わずに野営を行う……アウトドアがブームを起こすとは、流石に予想が出来ないのでした。



・子供


お昼の公園、少しずつ木々が赤色に染まりつつあり……もうすぐこうして寝っ転がれないだろうなと思えてくるそんな気温の日。

お仕事の休憩中に公園へ来ているカルカルナと遊んでいる子供達。

……カルカルナ。ナだったりパだったり多少の差はあるけれども他の世界でもたまに見る子達。

そして私にはその世界の安全や安定度の指標だ。彼らが居るのは何かしらの条件の下、人手不足解消に役立っていたり、人が一切居ない星での資材採掘やのんびりと遊んでいるのを見かける時がある。

聞いてみたらこの世界に彼らが現れ始めた時期は戦争が終わって本当に平和になってきた頃らしい。

どこかの世界から、他の世界へ出稼ぎの様にやってくる彼ら。


「みーきゅ」


頭にお菓子が入った籠を乗せて歩き回ってる子が近づいて来た。ジャム入りのクッキーを1つどうぞと公園に居る人に配っている様だ。

1つもらって頭の籠に触れない様に顎を撫でるとすごく嬉しそうに尻尾を揺らす。


「僕にも頂戴!」


気が付けば子供達が集まってきていて、籠からお菓子をもらって美味しそうに食べている。

配り終えたカルカルナが子供達にもみくちゃになるくらい撫でられているが……撫でられている方は幸せそうなのでそのままにしておく。


「ルコンお姉ちゃん、またあれやって!ボール飛ばすやつ!」

「今日も取れなくて転んじゃうんじゃないのー?」

「大丈夫だもん!」


柔らかいボールがたくさん入った籠を私に渡すと子供達は一斉に散らばる様に距離を取る。

一度遊んだら恒例と言えるようになる程お願いされる遊びだ……着ている服の右腕側は私専用に改造されていて簡単に捲る事が出来る。

右腕を巨大な腕に変形させるとパキパキと音をたてながら腕が砲身に変わる。昔とある世界で全身武装の怪物を腕が取り込んだ事で使えるようになった形だ。

今回は単純に空気圧でボールを飛ばすだけなので特に考える事もない。砲身の中にボールを入れて垂直寄りの斜め上を向けて……撃ち出す。


ひゅるるると軽いボールは風に流されながら落ちてきて、子供達がそれを追って走り出す。直接キャッチする事は出来ずワンバウンドしてから女の子がキャッチした。

取れなかった子達が悔しそうにしているのでちゃんと次を出すことを伝えてから撃つ。

ポンポンポンッと音をたてながら3個空へ舞い上がる。ピンクに青に黄色、3色の点がふらつきながら近づいていくとその1つを男の子が目を直接キャッチした。今まで成功させた子はいなかったのもあって嬉しそうな声が聞こえてくる。


「お姉ちゃん!やったよ!」

「ん、よくやったね」


腕を通常に戻して男の子の頭を撫でるとニシシと笑ってくれる。

今度は他の子がコレをやってほしい、アレをやってほしいとせがんでくる……これはしばらく開放されなさそうだ。



・夜のバイト

「いらっしゃいませー3名様ですね、空いている席どうぞー」


カウンター席に座っている俺は口に運んでいた途中の肉を口に入れることも忘れ、近くを通るウェイトレスから視線を外すことが出来なかった。

1歩歩く度にたぷんたぷんと音を慣らしながら揺れるとんでもなく大きな胸。

本来形だけを浮き立たせて肌の露出は無いはずの胸元で谷間が見えるほど布が引っ張られている。

銀色のふわふわとした長い髪を纏めて身長はまぁよく見る位の大きさの女性。あの胸で見間違えるやつが居るならその目は節穴だろう。


「おやじさん、なんであの人働いてるのさ領主様の奥様だろ?」

「んぁ?あぁ……お前さんこの町に来て短いんだな。ルコンちゃんは月に何度かここに来ているよ、本人がやりたいって言ってね」


うーむ、金持ちの道楽なのだろうか。わざわざこんな安い(上に凄く美味い)店で働くとは。


「店長、4番テーブルに丸オーブン2と麦酒3とソーセージ盛り2です」

「あいよ、これ2番に持っていってくれ」


器用に幾つも皿を持ってスタスタと歩いていく。

その姿にふと違和感を感じておやじさんに聞いてみる


「……揺れなくなってません?」

「なんでも上半身を一切動かさないで歩く方法らしい。微妙に中腰になって足の動きで調整して上半身の揺れを無くす……って教えてもらったが俺にはできん」

「普段からその動きでいいんじゃ?」

「……俺たちの目が癒やされないだろうから、って言ってた」

「すごいいい人じゃないですか、ありがたや」

「働いてくれる日は倍近い売上になるから本当にありがたい」


運び終えて戻ってくる時にはたぷたぷと揺らしながら戻ってくる姿に思わず拝んでしまうのだった。



おわり


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