ラーメン食べに行こう!
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主霊術院での授業が終わった後帰ろうとしている梨子と帰り道の護衛代わりの綱彌代継家だったがそこに霊術院の教員である芦原 伊邪那に声を掛けられた
「せっかくですので何か食べに行きませんか?」
正直継家は教員の誘いという事で多少警戒はしたが逆に『面白そう』だと考えそれを承諾した
梨子は晩御飯を食べることを連絡すべきではと進言するくらいで食事に行くのは楽しみな様子である
「という事でこちらは元死神の方が店主のラーメン屋です とりあえず入りましょうか」
流魂街の番号が若いある場所に足を運びそこにあったのは少し寂れた屋台
三人が暖簾をくぐると出迎えたのはおよそ140cmほどの男と2mほどある女だ
「おお!開店1時間で今日初めてのお客さんだ!今まで五年前の記録の開店開始から一時間十分までは人が来なかったが遂に新記録だな!しかも三人!」
「ふふふ 相変わらず元気ですね船附朗(ふなつきろう)さん こちら元五番隊十一席だった方ですよ...お二人からすると稲生さんの親友の方ですし仲良くしてあげてくださいね」
元気よく店の不人気を自白する店主はどうやら稲生の親友らしい
「よく見たらセンセじゃないか!そこの二人は完全に初めましてだな 俺の事はフナッキーでもローとでも好きに呼んでくれ!モットーは『贈り物と女の胸は際限なくデカく良い物を』だ!」
「妻です イエイ」
妻はモットーに即した通り高身長のデカいガタイにデカい胸が付いている
「もう既にトンコツ並みに濃いのだが それと稲生の親友となるともう既に嫌な予感しかしない」
「たしかに…」
継家はなかなか骨が折れそうだと感じ梨子もそれに同意した
ラーメンは普通にしっかりと美味しくサイドメニューも追加で頼んだ 値段はアホ程低くどう考えても売り上げ足りないだろうと継家が指摘したが帰って来たのは
「不動産の不労所得で生活に困ってないからそもそもラーメン屋は道楽」
という返答だった
「ラーメンを食べに来た以外にも梨子さんを連れてここに来たのは理由があります 斬魄刀との付き合い方について継家さんと船附さんのお話を聞いてもらおうと思いまして」
「成程な 私は言っておくが私はある程度普通だぞ 鍛錬して実力をつけて…」
「そういうのではなくコミュニケーション的な意味合いですね継家さん」
やはり斬魄刀も人格があり接するとなるとコミュニケーションは大事になってくるいろんなケースを知っておけば多少なりとも役に立つだろうという教員からの計らいである
「フナッキーさんは死神だった時にどうせっしていたんですか?」
「俺の時はな...とにかく励ましてた 稲生もだったけど」
─過去の霊術院にて─
「終わりだ...私はただ主の右から左に流れる霊圧をどこぞのCMのキツネの如く鴉へと変化させる以外に出来ません 鴉も主の劣化コピーもいいとこですし更に言えば刀身すら無くなって物理的にも何もできません
もういっそ新しい斬魄刀を教員さんに直談判して持ってきてもらいます」
「お前は良いよな まだ使ってもらえそうで...俺なんて持ち主が完全に白打型だから箪笥の奥にしまわれてずっと使われないまま過ごしそうだよ したくないなぁ始解」
教室の端で始解した『堅獄鴉』とまだ始解していないが『錫音』がグチグチと落ち込んでいる
「今までいろんな生徒とその斬魄刀を見ていましたが持ち主とは結構違ったタイプでもここまで極端なのは珍しいですね」
教員もひねた性格であったり持ち主を試す類の斬魄刀は良く見ていたがこのタイプはあまり経験が無かった 当の持ち主たちは
「"しーえむ"はよく分からんがともかく吾が強くなれば鴉も強くなるから大丈夫じゃな!とりあえず共に頑張るぞ!」
「俺は一回刀でも拳でも振るったら十分間はくたばる...まぁでも全部一撃で倒せば良いだろ?その一撃で倒している俺をかっこよく演出でもしてくれる方面に全力出してくれて良いぜ!」
特に気にしていなかった ちなみに『錫音』の始解は『開け』で始まり刀が展開して全身鎧へと変形する素敵使用(だいたいアイアンマンである)になり『生物無生物に関わらず一定範囲内の物を浮かばせる』能力が付いた
───
「梨子さん 貴方の斬魄刀はまだ貴方に心を開いてくれていませんが対話にも様々な物があります...継家さんの場合ですとどちらかといえば力を試すようなタイプだったようですし 梨子さんもどうか懲りずに斬魄刀とコミュニケーションを取ってあげてくださいね」
「はーい!」
話も終わり帰ろうとした時にふとある事が頭をよぎった梨子は船附に一つ質問した
「なぜフナッキーは死神を辞めてラーメン屋になったの?」
終始笑顔だった船附の顔は少しだけ陰ってすぐに元に戻った
「正確には辞めたというより休職に近いものだ 死神は基本辞められん」
継家が念のために梨子に訂正を入れた後に船附は喋り始めた
「滅却師殲滅戦...まだ君は知らないかもしれないが 俺と稲生はそれに参加した
そして俺は もう死神としていたくはないと考えた...それだけだ
稲生と俺は現世の滅却師を殺して回ったんだ 情報通な綱彌代家なら知っての通り稲生は滅却師だからな滅却師が死神と決定的に敵対した時に稲生も危機感を感じて滅却師との戦闘で武功を立てて滅却師との決別をアピールしたんだ
俺と二人で戦った時はあいつも容赦がなくてな鴉に爆弾や火炎瓶を取り付けて放火をして中にいる滅却師を縛道で縛って酸欠かやけどで殺した
俺はこれでも一撃だけなら隊長格レベルでね...能力で霊子に乗る飛廉脚を逆手にとって霊子から足を浮かせて無防備なところを一撃で仕留めた...その後十分間は動けないが防御自慢の稲生が護っておけば問題は無かった
俺たちは相当な人数を殺し 武功を立てた...不動産はこの時のボーナスも使って買ったよ ある意味死神を辞めやすなって笑えるだろう」
乾いた笑いを零しながら船附は喋り切った 十三番隊の活躍なら基本見る継家は一応稲生の戦闘としてこの戦いを見たが賞賛するような誇りも誉も信念もない戦いで直ぐに見るのを止めたことは覚えはあった
唯一そこにあった誇りは精々死にゆく滅却師が口から語った『滅却師の誇り』とやらだけだった
「梨子ちゃんだったか 俺は妹分である稲生を助けようとして地獄を見たがそれについて後悔はしていない
閑古鳥が鳴いている屋台の店主だがなんかあったら頼ってこいよ?」
そう言って渡されたのは結構高そうな飴玉が3つだった
稲生はこうやって渡される飴が嬉しくて自分が渡すときに真似をして沢山渡すのだろうかと考えたり 今後の事をどうするべきか悶々と考えながら歩きだした