ラヴェル×リバティ

ラヴェル×リバティ




「ラヴェル?どうかしたの?」


あたしは今、リバティちゃんのお腹の上に跨っている。


リバティちゃんが怪訝な顔をして尋ねてくるのも当たり前だろう。


「……どうか、してるかも」


正直に言う、あたしはリバティちゃんのことが嫌いだ。


アルテミスSで勝ったきり、一度も彼女に勝てたことはない。


阪神JF、桜花賞、オークス、秋華賞の全てで圧倒的な勝利を見せつけられて、あたしの心はとっくにズタズタなのだ。


でもあたしには、魔法の呪文がある。


「リバティちゃんに勝ったことがある」という、とっておきの呪文。


これが使えるのは、あたしと、イクイノックスさんだけ。


イクイノックスさんは引退したから、今使えるのは、正真正銘あたしだけ。


リバティちゃんが笑うたび、「その顔を歪めたい」と思う。


リバティちゃんが話すたび、「その声を塞ぎたい」と思う。


リバティちゃんが走るたび、「その脚を閉じ込めたい」と思う。


真っ白で無垢なリバティちゃんを初めに汚すのは、あたしがいい。


そんな想いが、消えてくれない。


そしてそれは今カタチとなって、リバティちゃんを襲っていた。


「ラヴェル?どうしたの?私なんかした?したなら謝るからさ、降りてちょうだい」


「……やだ」


「やだ、って……私動けないんだけど」


「……うるさい!」


そう言ってあたしは、リバティちゃんに口付けした。


憧れてたものとは違う、不本意で、不慣れで、色気のカケラもない、そんなキス。


でも、これでいい。


ただあたしの醜い欲望を満たすためだけに、貪るように口内を蹂躙していく。


あたしを止めようと伸びてくる手を払って、そのまま押さえつけた。


ほんとうはリバティちゃんがギブアップするまで頑張りたかったけれど、その前にあたしの限界がきてしまった。


あたしにとってはファーストキスだったけど、リバティちゃんはどうなの?


ねえリバティちゃん、あたしのこと、ちゃんと見えてる?


「見えてるから、降りなさい……ッ」


いやだ。

弱々しい声で必死にせがむ姿に、あたしは得体の知れないゾクゾクを感じていた。


少しはだけた制服から見えた鎖骨に噛み付く。


「いたっ……ちょっとラヴェル!」


リバティちゃんの声なんかお構いなしで、強く、くっきりと跡が残るように歯型をつけた。


犬歯が皮膚を貫いて、血が出ている。

それを舌で舐め取った。


リバティちゃんは快楽から逃げようと、ラヴェルの顔とは反対方向に顔を向けている。


「リバティちゃん、あたしね、あなたのことが嫌いで嫌いでたまらない」


リバティちゃんの顔に手を添えて、目が合うように正面を向かせた。


「なのに、あなたが他の誰かに汚されるのは、もっと嫌」


「分かる?__分かんないよね、こんな気持ち」


知らぬ間に溜まっていた涙が、あたしの頬を伝って、リバティちゃんの頬を濡らす。


「あなたがあたしに興味ないことも、あたしの行動が迷惑でしかないことも、全部ぜんぶ分かってる」


「でも、止められないの」


「これって、好き、なのかなあ」


「分かんないや」


「教えてよ、リバティちゃん」


「その瞳で、その声で、体で」


「あたしに、教えて」


「愛って、ものを」


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