ライム×モージ
・ライムジュース→モージ
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ぽにょ、ぽにょぽにょぽにょぽにょぽにょ……ぽにょ
無言かつ真顔で腹をつつく男と、ひたすら飯を食い続けながら腹をつつかれている男。
カバジはそんな二人を眺め、顔を顰めた。
なんだ、あれ。
なんで赤髪海賊団幹部が腹を触っているのかも分からないし、モージが腹をぷにぷにと触られて無反応なのかも分からない。
よく四皇幹部を前にしてあの反応ができるな。
だってカバジもモージも弱いのだ。いくら王下七武海の幹部だからといってもそれは運によるもの。我らが船長が何故かあのインペルダウンの囚人を解放し、何故か海賊王の元船員だとバレ、何故か頂上戦争に参加した故の結果だ。
だから天と地、月とすっぽんのように力の差がある相手に対してあんな態度をとるなんて、まさに自殺行為。バギー座長からよくよく自分の命を優先しろと言われている身としてはゾッとする光景だった。
「カバジ、助けてやらないのかい」
「姐さん」
カバジが二人を観察しているとアルビダがワインを片手に現れた。そのままカバジの隣へ座り、優雅に足を組む。
「赤髪の幹部相手におれが適うと思いますか……」
アルビダはフゥンと呟きワインを一気に飲み干した。さらりと靡く黒髪と晒された白い喉が酷く美しい。
バギー座長がやるのとは大違いだな。
「面倒そうな顔をしてるねェ」
「ああ、はい」
アルビダの視線の先にはいまだ飯を食べるモージの姿があった。しかしうっすらと眉間に皺が寄っているし、食事の進みが悪い。あれは面倒だなと思っている顔だった。
バギーズデリバリーのメンバーならともかく、相手は赤髪海賊団幹部。そう無下には出来ないのだろう。いや、そう思うなら最初から反応しろという話なんだが。
ぷにぷにと腹をさわる手がついに煩わしくなったのかついにモージが動く。
雑に扱って怒りを買わないように出来るだけそっと、優しくライムジュースの手に触れる。
その瞬間、赤髪海賊団の幹部が集まっている卓からとてつもない歓声があがった。何故か盛り上がっているらしい。
カバジとアルビダが横目で見るとバギーもいて、上機嫌なシャンクスに捕まり、絡まれていた。
頑張ってください、バギー座長……
カバジは南無三と手を合わせ、視線をライムジュースとモージに戻す。
モージはライムジュースの手を握るとその掌を上に向けた。そしてつい先程まで食べていたおにぎりをのせる。
「……」
「……どうぞ」
そう言ってモージは食事を進め始めた。
「飯分けるほどしつこかったんですね」
「そりゃああんだけずっとやってればウザイだろうさ」
呆れるアルビダの手には新しいワインが注がれていた。それをくるくると回し、香りを楽しむ。
赤髪海賊団の卓は先程よりも盛り上がっており、巻き込まれていたはずのバギーも一緒に酒を呑んでいた。
アルビダは、幸せそうにはにかみながら少しずつおにぎりを食べるライムジュースを見てため息をつく。
あれは本人も気づいてないみたいだねェ。
人様の恋路に巻き込まれるのは好かないが、見ている分には面白いかもしれない。
さてさてどうなるやら、とアルビダは見蕩れるほど美しく笑った。