ライブ後の前哨戦

ライブ後の前哨戦

ウタルテットのkoum


この話は、拙作「蛇姫語」の後日譚の位置づけです。ただし蛇姫語を読んでいなくても、一応平気です。

なおウタ一人称なので、ルフィやハンコックにフィルターかかっているのでご注意ください。

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ライブの後の片付け。

ルフィの姿が見えないな、例の友達のところかな?と思っていたら、ひょっこりルフィが現れた。

 

サンジ「ふん、ふふーん♪ って、おい、ルフィ。どこで油売ってきたんだ。もう片付け終わっちまうぞ」

ルフィ「悪ィ! ・・・なんかやたらご機嫌だな、サンジ」

サンジ「分かるか! 今日は出店にやたらレディーが多くてな!」

ルフィ「そっか、良かったな」

ナミ「サンジくん? 女の子へのオマケはほどほどにって前言ったわよね? ちゃんと守れてる?」

サンジ「・・・・ごめんよ。ナミさん、おれは男として、オマケしないワケにはいかねェ!」

ナミ「ちょっと! 材料の在庫と売上、見せてみなさい!」

 

サンジがナミに怒られてる。

ナミ的にポーズだろうなぁ。

サンジが女の子へのちょっとしたサービスが止められるはずもないし。

・・・私のオヤツ的にも、止めて欲しくない。

 

ルフィ「ウタ、ライブの時に言った友達が宴やるから、一味で来ないかって言ってんだ。皆でいかないか?」

 

ウタ「私は行くよ! ちゃんとルフィの船長って挨拶しなきゃね」

 

ルフィ「おう! あいつも喜ぶと思うぞ。ウタの歌、気に入ってたみたいだからよ」

 

ウタ「本当! ファンが増えるのは嬉しいなぁ。みんなはどうする?」

 

サンジ「船長とは言え、レディーを守るのは騎士の勤めだ。俺も行くぞ」

 

ゾロ「止めとけ、クソコック。会場警備していたから相手のことを知っているんだが・・・お前には荷が重い。オレが行く。美味い酒も飲めそうだしな」

 

サンジ「はぁ? 何つった、お前! レディーを守るのに俺が力不足だと!」

 

ナミ「なに? そんな物騒な感じなの? だったら私はパス。もうライブ運営で疲れたわ」

 

ナミ来ないんだ。ちょっと寂しいけど、気が乗らないんなら仕方ないな。

 

危険の可能性があるなら、なおのこと、船長の私は前に出ないといけない。

ピンチのときはルフィが守ってくれるけれど、船員を守るのが船長の勤めということは忘れてはいけないのだ。

 私がしっかりしないと。

 

ロビン「私も欠席させてもらうわ。・・・さっき軽く噂話を集めていたら、私たちの後にこの港町に来た『海賊』のことは聞いてるの。『七武海』のクロコダイルと組んでいたのよ。だから副船長さんが隠そうとしている『友達』が誰か予想は着く。・・・私が顔を出すワケにはいかないわ」

 

ロビン、噂話集めるの凄いよね。

私も耳は良いつもりだけど、ロビンは耳を生やすんだもん。

ちょっとまねできない。

 

でもルフィが隠してるって?

 

ルフィ「ウシシシ! いやー!ウタも名前は知ってるやつだから、驚くかと思ってな。バレたかぁ。あのな、友達ってのは・・・」

 

???「ルフィ! 宴の準備が出来たから、妾自ら呼びに来たぞ! 感謝するが良い!」

 

ルフィ「おう、ありがとうな、 ハンコック! 紹介するよ、友達の七武海、九蛇海賊団のハンコックだ」

 

とんでもない美人が現れた。

ルフィとの距離が近い。

 

ハンコック「アマゾン・リリーの皇帝でもあるぞ。先程のライブ、素晴らしかった! 正直舐めておったが、不覚にも夢中にされてしまったのじゃ」

 

ウタ「えっと、 ライブに来てくれて? ありがとうございます?」

 

ボア・ハンコック。

女海賊として秘かに憧れていた。

確かルフィに溢したこともあったように思う。

 

皇帝にして船長という女海賊の頂点のひとつ。

 

自分にはないシンプルな武力に、メロメロの能力という反則で、七武海に十年以上、君臨する実力者。

 

いやさ。

理想とか目標みたいな扱いで、ニュースを追ってはいたけどさ。

 

ハンコック「のぅ。ルフィ、今でも妾のことを友と思ってくれているのじゃな。久しく会っていなかったのに、嬉しく思うぞ」

 

ルフィ「そりゃそうだろ。仲良かったじゃんか」

 

ハンコック「ふふふ・・・ルフィは相変わらずじゃの。妾の方は友達止まりじゃなくて構わんのじゃぞ?」

 

ルフィ「うへー。またその話か」

 

ハンコック「ルフィが想像している関係とは、少し違うと思うがの」


ああ、ルフィの頬を指でツンってした。

 近い、近い! 距離が近い! 

その脅威がこんな形で自らの身に降りかかってくるのは、話が違う 


世界一の美貌。

極めて女性的な体躯。

 あれ?

海賊としても、女としても、私、音楽以外で勝っているところなくない?

 

ルフィ「なんかライブ終わったあたりから、変だぞ、ハンコック」

ハンコック「なに。お主のドラムを叩く姿に色々思うことがあっただけじゃ。詳しく聞きたいか? 聞きたいじゃろ?」

 

ルフィに寄り添い、ルフィの開襟している胸に手を当てた。。

 

ルフィ「くすぐったいぞ? 別にいいけどよ。ほら、宴を呼びに来てくれたんだろ? ここでしゃべってないで行こうぜ!」

 

ハンコック「もぅ、いけずじゃの。でもそんなところも妾は・・・。あぁ、船はこっちじゃ」

 

ルフィ「おぅ。もう腹がペコペコだよ。こっちだってよ。ついて来いよ~。先行ってるぞ」

 

ルフィの呼びかけに、空気が読めていないのか、なんなのか、ゾロはついていったが、後は続かなかった。

 

皆が一歩も動けない。

 

動かず、皆が私を見ている。

 

ナミ「ウタ、あなた、アレ、かなりマズイんじゃない? 泥棒猫されちゃうわよ」

 

ナミの一言に、緊張の糸が切れた。

 

ウタ「ナ”ミ”・・・」

 

ナミ「なに? ちょっと落ち着いて、その泣きそうな顔、どうにかならない・・・?」

 

ウタ「た”す”け”て”・・・つ”い”て”き”て”・・・」

 

ナミは船で休むって言っていたけど、一人では心細い。 

敵は強大だ。セコンドが欲しい。

 

ナミ「もう。手のかかる『お姉ちゃん』ね。ああそう、そういえばロビン。さっき言っていたルフィの話ってなんなのよ」

 

ロビン「大したことじゃないわ。副船長さんは海兵時代、ハンコックに気に入られて送迎担当になってたってだけ」

 

ウタ「大し”た”こ”と”じゃん”! 海軍公認って”こ”と”じゃん」

 

送迎?!

わざわざ会いに行って、しばらく過ごして、送り届ける?!

しかも海軍も、ガープさんも、それで良しってしていたってことでしょ。

聞いたことないんですけど!

 

ナミ「泣いちゃった・・・」

 

前世でどんな悪いことをしたら、十年来の想い人に、2歳年上幼なじみで、好感度が高くて、世界的な美貌の王女さまが突然生えてくるというのか。

 

誰か教えて欲しかった。

 

『宴』が始まろうとしている。

 

チョッパー「大変だ! サンジがハンコック見たせいで、心臓が止まってる! 医者~~~~! オレだァァァアア!」

 

薄暗くなってきた夜空を割くようなチョッパーの声。

それすらも不吉に感じた。

 

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