ライブ・ショウ・タイム! 後編

ライブ・ショウ・タイム! 後編

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 トナミの町は、商業広場(トレードパーク)。

 酒場の前を借りて、楽器のセッティングをするウタたち一行。

 通りすがる人々は、珍しそうな目で見ているが、しかし足を止める者はそういない。

「ねえ、ブルック、その……お客さんって、どうやって集めるの?」

 キーボードをケースから出しながら、ウタがブルックに声を掛けて振り返る。

 すると、ギターを取り出したブルックが、おっかなびっくり通りかかった町女に声をかけているところだった。

「お嬢さん、良ければ音楽、聴いて行かれませんか?」

 ウタが『なるほど、ああやって地道に声をかけるのか』と納得しそうになったところで、ブルックの口から出た、

「ついでにパンツ──」

 という言葉。

 ウタは反射的に組み立てていたキーボードスタンドの足を一本、ブルックの後頭部へと投げつける。

 スコーン! と小気味いい音がして、「あいたっ!」とブルックが悲鳴を上げる。

「ちょっとブルック! わたし真面目に訊いたんだけど!」

 ウタにとっては、せっかくの初ライブだ。配信ではいつも、誰かしら視聴者がいた。それがライブになった途端にきちんと聴いてくれる人がいない、なんて事態になったら、さすがに堪えてしまう。

 ブルックは後頭部をさすりながら戻ってきて、スタンドの足をウタに返しながら明るく笑う。

「ヨホホ、まあまあウタさん、そんなに心配する必要はありませんよ。群衆(オーディエンス)は常に、音楽(エンターテインメント)を求めて止まないですから」

 ブルックはそう言いながら、ギターストラップを肩にかけ、音を確かめるようにギターの弦を小さく爪弾く。

 ウタは少し唇を尖らせながら訊いた。

「で、どう人を呼ぶの?」

「こうするんです」

 表情の乏しい、ブルックの頭蓋骨(スカルフェイス)。しかしウタには今、ブルックがニヤリと笑ったように見えた。


ギャーーンン……


 不意に、ブルックがギターをかき鳴らす。

 商業広場にいた通行人や商人たちが、驚いたようにブルックの方を振り返る。


「YAEH!!」


 ブルックは鋭くシャウトをして、シャッフル・ストロークを始める。

 テンポは速め。

 ストロークは強め。

 激しいと言うよりも、叩きつけるように音を奏でる。

 ただし、その音に痛みはない。


ギャーンジャンズカスカジャンジャッ!

ジャーンジャッチャカチャカジャッジャン!


 トニック、ドミナント、トニック……。

 ビートとリズムに乗って、音の重なり(コード)が移り変わっていく。

 それは、既に曲の前奏として機能していた。

 広場にいた人たちが、何だなんだと、その音源の方へと首を伸ばす。

 なるほど、とウタは理解する。

(路上でやるんだから、人を呼ぶのに一番効果的なのは……って、それは音楽だよね)

 曲の前奏ではなく、ライブの前奏。

 チケットも何もないのであれば、今からやろうという音楽で人を呼び込むのは理にかなっている。

 そのことを理解しながらも、ウタには釈然としないものがあった。

(……この曲、絶っっっ対に練習してない!!)

 それどころか、こんな雰囲気の曲、ブルックがエレジアに来てこの方、聞いた事もなかった。

 ウタはキーボードを組み立てながら、唇を尖らせる。こういうことをやるなら、自分もやりたかったのに、と。


 ドントットトコシャン!!


 そんなことを考えるウタの背後で、ブルックのギターに軽快な音が乱入(フィルイン)する。

 ウタがばっと振り返ると──いや、振り返らずとも、音を聞けばそれを誰が上げたのかは明白だった。

 ドラム担当、ゴードン。

 独奏から二重奏になり、奏者の役割が分かれる。

 ドラムがリズムを担当することによって、余裕のできたブルックが和音と単音を組み合わせてメロディーを奏で始める。

(ゴードンもいつの間に練習してたの!?)

 そもそも、ウタはゴードンが楽器の練習をする姿を、ほとんど見たことがない。ウタに音楽を教える時にだけしか、ゴードンは楽器に触る事がなかったのだ。

 ウタが楽曲の練習をしているのを見たのは、この旅にゴードンが同行することが決まってからだ。

 それ故に、余計にいつの間に練習をしていたのか、という疑問と、そして少しの疎外感──。

 そんなウタに、ブルックがギターを弾きながら近づいて、演奏に影響の出ない小声で言う。

「さあ、ウタさんもご一緒にどうぞ」

ウタは一瞬だけその言葉の意味が分からず、首を傾げてから、はっと気が付く。

(即興演奏(アドリブ)か、これ!)

 気が付いた拍子に、ウタの背筋が伸び、同時に彼女の髪もぴょこりと上に跳ねた。

 ウタはそれを知識としては知っていたし、作曲の際には即興から入って煮詰めていくこともあった。

 だけど、配信(ライブ)をするときには、練習して完成した曲を届けることしかしていなかった。限られた時間の中で、最高の音楽を届けるには、それが一番だと思っていたから。それに、未完成の曲を聴かせるのは、失礼というか、恥ずかしいというか……。

 しかし、これは……。

 キーボードの前に立ったウタの口角が、ニッと上がる。

(……ちょっと、面白いかも!)

 ウタは目を閉じて、右足のつま先を上下させてリズムを取る。同時に、ブルックのギターから、音の移り変わりのパターンを判別する。

 よし。

 ウタの指が、キーボードの鍵盤を走り始める。

 メロディーに伴奏が付き、音楽の厚みが増す。

 すると、遠巻きで眺めていた人たちが、次第に近くで聴こうと歩み寄ってくる。

 真っ先に来たのは、十歳くらいの男の子が二人。

 うわー、とか、すげーとか言葉を上げながら、目をキラキラと輝かせている。

 少なくとも、彼らにはブルックの容貌(スカルフェイス)は気になっていないようだった。

 子供が寄ってくれば、大人も子供が心配で寄ってくる。

 大人が増えれば、何があるのかと別の人が寄ってくる。

 およそ二分程度の演奏。

 最終的には、息が合わなくなりグダグダと尻切れトンボにその即興曲は終結した。

 その激しくかっこいい曲調と、最後の締まりのなさとのギャップに、観客から笑いが起きる。

 そう、観客だ。

 商業通りは、ほんの少しの演奏で音楽広場(ミューズパーク)の姿を取り戻していた。

 演奏者(プレイヤー)がいて、観客(オーディエンス)がいれば、そこはもうライブ会場だ。

 間借りさせてもらった酒場の店長が、ここぞとばかりに群衆に酒を売り歩いているのが見える。よく見れば、近くの料理店の料理人も。

 拍手と笑いが冷めやらない中、ブルックがウタに耳打ちをした。

「ウタさん、約束通り……」

 ウタはブルックが言いいる前に頷いた。

「わかってるって。ウタウタの力は使わない、でしょ?」

 ウタが幼い日に食べた悪魔の実“ウタウタの実”の能力は、彼女の歌を聞いた者の意識を、仮想世界に閉じ込めることができるというものだった。

 ウタウタの力の音楽的な利点は、仮想世界は全てのウタの思いのままにできるということだ。

 音響も演出も、天候や時間帯だってなんでもござれ。現実では決してできないようなパフォーマンスだって、ウタウタの仮想世界であれば再現することが可能なのだ。

 ただしその分、使用する者の体力の消費が激しいのだ。一曲力いっぱい歌えば、それで眠ってしまうほどに。

 ウタにとって、今日はせっかくの初ライブなのだから、彼女はブルックに、最後の曲だけでも使わせてほしいと頼んだが、ブルックはそれを断ったのだ。

『使わない方が、きっといいことがありますから』

 ヨホホと笑いながら、ブルックはそう言ったのだった。

 ウタもそれに逆らうつもりはない。先輩音楽家である彼の言う『いいこと』が何かは、非常に気になるところだったから。

 コホン、と一つ咳ばらいをして、ウタは声を張り上げる。

「みんな! ウタだよ!!」

 拍手や指笛に混じって、

「あのウタか?」

「配信をやってる“歌姫”?」

「え、本物?」

「でも歌じゃなくて楽器演奏……?」

「骸骨が動いているけどどういうこと?」

 といったざわめきがところどころで上がっている。

 それを聞いたウタは、少しだけ誇らしい気分になる。ああ、わたしのしていた配信は、しっかり外の世界へと届いていたんだな、と。

 しかし、感傷に浸ってもいられない。

 音楽で呼び込んだ観客が待ち望んでいるのは、やはり音楽なのだから。

「じゃあ、まずは一曲目! ギター担当“死んで骨だけ”ブルック作曲! 『骨の髄から野性的(ボーン・トゥー・ビー・ワイルド)』!!」

 ウタの宣言と同時に、ゴードンがドラムスティックを打ち鳴らす。

 それを合図に、ライブは本格的に幕を開ける。

 一曲、二曲と演奏していくうちに、次第に増えてくる観客たち。

 リズムの合わない手拍子をする者。

 隣の者と肩を組む者。

 知っている曲を一緒に口ずさむ者。

 歓声を上げる者。

 指笛を吹く者。

 椅子を持ってきて座って聴く者。

 酒を飲みながら聴く者。

 三者三様、十人十色に音楽を楽しんでいる。

 皆、笑顔だった。

 観客も、奏者も。

 熱狂は冷めやらぬまま、いつしか音楽通り(ミューズパーク)は人で溢れかえっている。

 男も、女も、子供も、老人も、海軍も、そして紛れ込んだ海賊も。

 誰もが今だけは、音楽に熱狂していた。

 しかし、いずれ終わりは来る。

 ウタもブルックもゴードンも、体力が無限にあるわけではないのだから。

 額に流れる汗をぬぐって、ウタが宣言する。

「みんな、今日はありがとう! ラストはわたしの代表曲『新時代』!!」

 もともとウタのファンだった者も、そうでなかった者も、最後の曲に歓声を上げる。

 まだ、あと一曲分は、ライブは終わらない──。

────




 ライブも無事に終わり、音楽通り(ミューズパーク)は商業広場(トレードパーク)に戻っていた。

 観客たちも、四方八方の帰るべき方角へと帰っていく。

 帰り際に、ウタたちに声をかけていく観客も少なくなかった。おひねりをギターケースに投げていく人もいる。

 ありがとう。

 楽しかったよ。

 いい音楽だった。

 また聴かせてほしい。

 ウタの生歌が聴けて良かった。

 骨なのに動いていてびっくり。

 大きい男の人も演奏が上手くてよかった。

 などなど。

 どう見ても恐怖を煽る見た目のブルックにも、様々な人が声をかけていた。

 キーボードをケースに仕舞ったウタは、立ちすくんで、去っていく観客たちをじっと眺めていた。

(そっか、わたし……)

 いつも配信は、ウタが電伝虫を切ってしまえば、それでお終いだった。もちろん視聴者からの声もウタには聞こえるから、お礼や称賛の声は今までだって聞いた事がある。

 しかし、ウタは彼らが生活に帰っていく姿を見ることは一度もなかった。

 だから、自分の──自分たちの音楽が、聴いた人たちにどれだけ届いているのかなんて、ウタにはわかっていなかったのだ。

 人の表情、態度には、言葉では表せない心の動きが現れる。

 帰路につく彼らは、皆一様に晴れやかな表情をしていた。名残惜しむ者は居ても、足取りの重い者は一人も見当たらない。

 最初は疲れたような表情で来ていた女性が、足取り軽く去っていく。

 ライブ前には喧嘩をしていた魚屋と肉屋の店主が、肩を組みながら上機嫌で帰っていく。

「おねーちゃん!」

 不意に、ウタに声がかけられる。

 まだ十歳にもならないだろう小さな女の子が、ニコニコと笑顔を浮かべてウタを見上げていた。ところどころに痣のある、決して身なりのいいとは言えない女の子だった。

「なあに?」

 ウタはしゃがんで膝を抱えて、目線を女の子に合わせる。

 えっと、えっと、と女の子は言葉を探すようにした後、胸の前で拳を握って言った。

「えっとね、わたし、今日いろいろ嫌なことがあったんだけどね……」

「……うん」

「おねーちゃんたちの歌を聞いたら、元気が出たんだ! ありがとう! またきっと、ここに歌いに来てね!」

「うん。また来るよ」

 ウタがそう答えると、女の子はパッと顔を輝かせると、「本当!?」と嬉しそうな声を上げた。

「絶対だよ! 約束!!」

 そう言って女の子は、小指を立てた右手を、ずいとウタに差し出した。

 ウタは微笑みながら、その小指に自分の指を絡める。

「うん。約束する」

 えへへと女の子は目を細めて笑うと、バイバイと手を振って通りの向こうへと駆けていった。

 ウタもまたね、と言って手を振り返す。

 ヨホホホ、という笑い声に、ウタは後ろを振り返る。いつの間にかギターを片付けたブルックが、ウタの背後に立っていた。

「ウタさん、いかがでしたか、初めてのライブは?」

「うん。最高だった……」

 ウタはそう言って、再び女の子の消えて行った通りの向こうに視線を向ける。

「ねえ、ブルック」

「はい、なんでしょう」

「今日のライブを聴いてくれた人たちも、きっといろいろな悩みとかを抱えているんだよね? 今まで、わたしの配信を聴いていた人たちみたいに」

 そうでしょうね、とブルックが頷く。

 そうだよね、と頷いて、ウタは目を閉じた。

「みんな、わたしたちの音楽を聴いて、笑顔になって帰ったんだよね?」

「ええ、そうでしょうとも」

「……良かった」

 呟いて、ウタはゆっくりと目を開いた。

「音楽を配信して、いろいろ期待されたりもしたけど、今日のライブではそんなこと考えている余裕なんて、なかった。だけど、それでいいんだよね」

 ひと月前の夜にブルックの語った、音楽をやる理由。そして尋ねられて答えられなかった、ウタの音楽をやる理由。

 今であれば、ウタは胸を張って答えられる自信があった。

「わたしは、音楽が好き。歌うのは楽しいし、みんなを笑顔にできるから」

 ウタにできることは、みんなに楽しい気分を分けてあげること。少しだけ、希望の見える方向へと、背中を押してあげることだけ。

 ウタが観客をどうこうしようとしなくても、彼らは勝手に救われる。音楽には、人の心を動かす力があり、そして彼らは彼らで生きているのだから。

 あの日のブルックの言葉を思い出して、ウタは「ふふっ」と笑みをこぼす。肩の力が抜けた気がする。

「わたしなんかが、“救世主”だなんて、まったく、何を悩んでいたんだか!」

 喧嘩をすれば、仲直りもする。

 嫌なことがあれば、良いこともある。

 つらいことを乗り越えれば、きっと報われる。

 一人ひとりが違う人生を歩みながら、時にくじけそうになりながらも、懸命に生きている。

 音楽は、そこに色を付けるだけ。もちろん、その色によって心救われる人は居るかもしれないけれど、その色だけでは人を助けることはできない。

 エレジアでゴードン以外と関わらなかったウタは、すっかりそのことを忘れてしまっていたのだ。

 ──人は強い。きっと、わたしが思っているよりも、ずっと。

 それでもウタは、自分が十年間、エレジアに籠っていたことを間違いだとは思わない。だって、その十年があったからこそ、皆に歌を聴いてもらえる“歌姫”になれたのだから。

「ねえ、ゴード……」

 ウタはその十年を支えてくれたゴードンに声を掛けようと振り返って、言葉を失った。

 ドラムセットを仕舞ったゴードンが、鼻水をすすりながら涙を流していたのだ。

「おや、ゴードンさん、どうされました?」

 絶句するウタに代わって、ブルックが優しく声をかける。

 すまない、と謝りながら、ゴードンは目頭を押さえた。

「久々に人前で音楽をしたものだから、感極まってしまってね……。あの夜、私だけが生き残ってしまった、これは罰なのではないかとも思ったこともあったが……」

 声と肩を震わせて、ゴードンが言う。

「……それでも私は、生きていて良かった……! またこうやって、人と共に音楽をすることができたのだから……!」

 ゴードンの噛みしめるような言葉に、ウタも思わず目に涙を浮かべる。

 ウタからしてみれば、ゴードンが外の世界に出られなかったのは、外に出る勇気も気力もなかった自分の世話を焼いていたからではないかとしか思えないのだ。自分のせいで、彼が音楽を行えなかったようにしか考えられないのだ。

「ゴードン、ごめ──」

「謝らないでくれ!」

 謝ろうとしたウタを、ゴードンが片手を突き出して制止する。

 思ったよりも大きな声になってしまったようで、ゴードンは面食らったように「……すまない」とかすれ声で言った。

「……私は、きみに謝られる資格がない……。ないんだ……」

 苦悩するようなかすれ声に、ウタは少しだけ困ったような顔をしてから、涙を浮かべたままににっこりと笑った。

「じゃあ、ありがとう、ゴードン」

「………………ありがとう、ウタ」

 ゴードンがようやく絞り出した言葉に、ウタが「だからお礼を言うのはわたしなんだって!」と笑う。

 ブルックは静かにその二人を見守っていた。心なしか、骸骨の顔が笑っているように見える。

 すると──。

「いいライブだったなあ、骨の旦那!」

 ブルックの後ろから声をかけてきたのは、店の前のスペースを貸してくれた、酒場の店長だった。

「ヨホホ、ありがとうございます」

「なあ、あんたたち、飯の予定とかはあるのかい?」

「? いえ、ありませんが?」

「ちょうど良かった! せっかくいいモン聴かせてもらったし稼がせてもらったんだ。うちの店で食って行かないか? もちろん、料金はタダでいいぜ?」

 粋な計らいに、ブルックが嬉しそうに言う。

「ヨホホホ! ご厚意骨身に染みますね! 骨だけに!」

 スカルジョークを笑う者は居なかったが、ブルックはどこの吹く風と、ウタとゴードンに声をかける。

「お二人さん! この酒場の店主さんが、夕ご飯をご馳走してくださるんですって! ご厚意に甘えましょうよ! ライブの打ち上げです!」

「打ち上げ!」

 ウタの顔が輝く。何しろこの十年、そういった類のことに参加する機会はほとんどなかったのだから。

「ディーナ~アッ♪ ディーナ~アッ♪」

 ブルックの陽気なディナーコールに、ウタも真似して

「ディーナ~アッ♪ ディーナ~アッ♪」

 と続く。

「あ、こら、ウタ、そんなはしたない……」

 ゴードンがウタを嗜めながら二人の後を追う。

 不意にブルックが通りの方を振り返った。

「? ブルック君、どうかしたのか?」

「ああいえ、お気になさらず」

 ゴードンの問いに、ブルックは小さく肩を竦めた。

「ほーら、二人とも、早く入ろうよ!」

 真っ先に店内に入ったウタが、再び店先に顔を出して二人を引っ張る。

「ヨホホ! 今日はウタさんの初ライブでしたからね! 盛大に祝わなくては!」

 既に酒場の中にいた客も交えて、楽しそうな歓声が上がる。

 夜はまだ始まったばかりだった。


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