ライブの裏側

ライブの裏側


 音符が飛び、光が複雑に絡み合う。道行く人々が思わず足を止め、視線を移す。その視線の先にあるのは1つのステージ。中央で今なお人々を魅了する歌声とダンスを披露する歌姫。海軍の歌姫ウタはいつものようにゲリラライブを行っていた。勿論現地だけでなく、持ち込んだ映像電伝虫によってそのライブは世界中に配信されている。

 だが、歌姫という立場はそれだけ狙われやすいという事でもある。それが海賊溢れる大航海時代ともなれば尚更だ。歌姫たる彼女自身も、齢19で海軍本部の准将になる英傑ではある。だが、ライブをしながらとなるとその実力を充分に発揮しきれないのも当然と言えよう。

「皆!もっともっと楽しんじゃお!」

 だが、彼女の顔に不安の色はない。それには、歌姫としてのプロ意識や本人自身が持ってる悪魔の実の力もあるだろう。だが、彼女が不安を感じない理由は最も単純だ。

"愛する幼馴染が護衛として付いている"

 ただ、それだけだった。


「ゴムゴムの鞭!!」

 伸びた脚が迫り来る海賊達を薙ぎ払う。歌姫を狙った海賊達は最初の防衛線にして、早くも足を止めざる得なかった。

「何をしてやがる!相手はたかだか1人のガキだぞ!」

 迫り来る凶悪な海賊達を相手にたった1人の海兵は姿勢を崩さない。何処までも伸びるように思えるその四肢は海賊達との人数差を覆し、本来ならばカバー出来ない範囲までもを守護範囲にする。迫り来る海賊達の攻撃を躱し、カウンターで奮われる拳は1度に10の海賊を吹き飛ばす。

「やっぱり無理ですよ!相手はあの英雄ですよ!元七武海に、金獅子まで降した!」

 土煙の中から姿を表すのは特徴的な麦わら帽子と海軍の将校以上の者しか身に付ける事を許されないコート。正義の文字を背負い、若き英雄ルフィは立つ。海賊達と比べて低い背丈とあどけな良い顔付きからは想像も出来ないが、齢17で英雄の名を背負うその海兵はその異名に違わぬ実力を持っていた。

「雑魚どもが!使えねェ…退け!おれらが出る!」

 海賊達の海を割り、2人の男がルフィの前に立つ。1人は鹿のミンク族、もう1人はサメの魚人だ。油断なく彼らを見据える海兵を目の前に、2人の男はその力を解き放つ。

「動物系の能力者か。しかもミンク族と魚人族…厄介そうだな。」

「ハッ!怖気ついたってもう遅いぜ!英雄さんよォ!!」

 ミンク族の男がヒレのついた腕をルフィに向かって振るう。しかし、その拳はルフィの細腕により容易く受け止められた。油断なく海賊達の動きを観察するルフィに対し、ミンク族の男は笑みを浮かべる。次の瞬間には、電撃が両者の間を駆け抜けた。鍛えた相手であろうと戦闘不能に追い込むと彼らが自分する攻撃をモロに受けた英雄を見て、彼らは嘲笑い、次の瞬間にその表情は恐怖に変わる。

「なんで!?」

「効かないねェ。ゴムだから。」

 動揺するミンク族の男の腕を掴み逃げられないようにし、ルフィは逆の手を振り絞る。

「お前らは強いからな。全力で行かせてもらう。」

 動物系の能力者とは厄介なものだ。単純に身体能力が上がり、タフさも上がる。実際、彼らが新世界でロクな情報収集をせずにやってこれたのも種族の地力と動物系の能力が噛み合っていたからに他ならない。だから一撃で決めに行く。

 振り絞られた腕は後方へと大きく伸ばされ、その体温を上げていく。武装色で保護されたゴムの腕が自らの温度で溶け始める。ポツポツと溶けたゴムが滴り落ち地面を溶かす。そこから繰り出されるのは、マグマの如き一撃。

「噴火口!!」

 ミンク族の男の腹に突き刺さった拳はその熱で男の肌を溶かしていく。腕を離された男はその勢いのまま打ち上げられた。その勢いたるや凄まじいもので、ルフィが腕を離していなければ今頃男の腹に大穴が開いていただろう。

「相棒!テメェ、よくも相棒を!」

 我に返った魚人族の男が、ルフィを睨みつける。対するルフィは技の反動かその場から動けないでいる。だが、反撃のチャンスなど訪れなかった。

「氷河地帯(グレイサー)」

 強烈な冷気が海賊達を包み込み、実力不足の者達はその時点で氷となる。先程のマグマの如き熱が嘘のように周囲が冷気で包まれる。その中で冷気を発した本人であるルフィは、魚人族の男の方を向き右脚を構える。

「舐めるなァ!!」

 魚人族の男が纏わりつく氷を力任せに振り払い、攻撃をしようとした所で不意にルフィの右脚が光る。その輝きに思わず目を瞑る。その一瞬の隙で充分だった。

「厨子」

 今までと違い短い技名。だが、その技名よりも早く攻撃は終わる。一瞬にして加速し、伸びた右脚が魚人族の男の腹を打った。視界を奪われた上、突然の衝撃で思わず仰反る。だが、攻撃はそこでは終わらない。ルフィは右脚で体を引き寄せるとその拳を振り下ろす。

「さて、まだやるか?」

 魚人族の男を降したルフィは覇王者の覇気を全開にし威嚇する。それだけで、海賊達は撤退していった。

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噴火口・・・赤犬の大噴火がモデル。自身の熱で半分溶かした腕で相手を殴る。武装色による強化とゴムの弾力によるブースト、受け止めたら熱で火傷すると威力は申し分ない。自身の腕を溶かしてるので使った後は少し腕がボロボロになるのと、熱が篭って思うように動かせなくなるのがデメリット。腕が溶けるまで体温を上げなきゃいけないので予備動作も大きい。ルフィは作った後ウキウキで赤犬に見せにいって怒られた。赤犬命名。

氷河地帯(グレイサー):青雉の氷河時代がモデル。武装色と覇王者の覇気を混ぜて撒き散らす事で文字通り空気を凍らせる技。予備動作が無くどの体制からでも使えるが、相手が強い程効果が薄く2つの覇気を同時に使うので覇気の消耗が大きいとデメリットもある。精密な操作も出来ないので共闘には向かない。青雉命名。

厨子:黄猿のピカピカキック(名称不明、無し?)がモデル。覇気で一瞬脚を光らせて高速で相手にヤクザキックをかます単純な技。が、ゴムの脚でそれをやると離れていても光で目を瞑った次の瞬間には暗闇の中で衝撃が襲ってくる恐怖の技になる。その性質上最速の蹴りをしなければいけない為、しっかりと構える必要がある。伸ばした後、伸ばしきった右脚で体を引っ張る事で相手に急接近出来るなど汎用性も高い。黄猿命名

モブA:サメサメの実を食べた鹿のミンク

モブB:シカシカの実を食べたサメの魚人

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