ライチの災難
しまクイーンであるライチの朝は早い
空がまだ白ばんでる時間に起き、身支度を整えるとアーカラ島の守り神であるカプ・テテフを祀る命の遺跡に向かう
そこで感謝の祈りをした後は遺跡の前の広場で愛する岩ポケモン達とトレーニングを行うのが日課であった
しかし…
「あーあ、お気に入りだったのに…」
ライチは全裸になっていた
なぜこうなったかというとトレーニングも終わりかけの際、巨大なドヒドイデ…ぬしドヒドイデが襲いかかってきたのだ
ドヒドイデはライチとポケモン達の力でたおすことができたが、ドヒドイデの毒技が服にかかり、とっさに服を脱ぎ捨てたのであった
「まあ体は無事なだけマシか…」
幸い毒は身体までは当たらず、犠牲は服だけであった
アローラの強いひざしを肌で感じながらライチはしばらく呆然としていた
ライチの身体は日々のトレーニングにおかげで引き締まっており、岩タイプのような頑強さもあるが、滑らかな美しさもある
一種の芸術作品とも感じる肉体だが、本人には羞恥の感情がある
「こんな姿見られたらしまクイーンライチさんの威厳がなくなっちゃうよ」
「…あと、お嫁にいけなくなっちゃう」
自分の結婚よりしまクイーンの威厳を先に心配してしまった自分に苦笑しつつライチはダイノーズをボールから呼び出した
『ノーズ?』
「ごめん!家に帰るまでの間私を隠して!」
ライチが住むコニコシティは観光地である
朝からしばらくたったこの時間は多くの人で賑わっているのは確実だった
しかし、ずっと裸でいるわけにもいかない
そこでライチが考えた作戦がこうだ
①ダイノーズに隠れて海岸まで行く
②水中に身体隠しながら海を泳いで海沿いの自宅の裏庭まで行く
③窓から帰宅して服を着る
④なんやかんやで素敵な結婚をする
⑤HappyEnd…
完璧な作戦である
「よしっいくよ!ダイノーズ」
『ノズッ!』
スニーキングミッションがスタートした
ダイノーズに隠れながら海までの道の外れを歩くライチ
「なんだぁ?あのダイノーズ」
遺跡見学に向かう観光客がそんなことを言ったのが遠くに聞こえた時は心臓が止まるかと思ったほどであった
全裸の今は心臓の音がいつもより大きく聞こえるように感じる
その緊張からか次の一歩を踏み出す瞬間に足がもつれた
ここで転倒すれば観光客に全裸なのがバレてしまう
「くっ…とうっ!」ビシッ
ライチはとっさに岩Zポーズとることでバランスを取り戻し転倒するのを防いだ
恐らく過去、そして未来でも他にする人はいないであろう全裸での岩Zポーズ
それはライチの人生史上一番動きが洗練されていた
ライチは日々のZ技トレーニングをしていた自分自身に感謝した
その後、遂に海岸近くまでたどり着いたライチであったが、海岸がなんだか騒がしい
ザワザワ
「いーじゃないスカ!カントーのサンド欲しいじゃないッスカ!」
「や…止めてください」
スカル団が観光客に絡んでいたのだ
「あいつら…許せないわ」
いつもならすぐに観光客を助けに向かうのだが、今は全裸
堂々と二人の前に出て行くわけには行かない
「…」
「でも仕方ない、やるよ!ルガルガン」
『ガウッ』
《ワールズエンドフォール!!》
岩タイプのZ技は巨石を落とす技
その巨石をスカル団の近くに落として驚かすことにしたのだ
「ぎゃああああ!なんなんスカ~!」
スカル団が逃げたのを確認するとライチは即座に行動を開始した
ダッ
岩Zで出現した巨石はすぐに消えてしまう
ライチはその巨石に隠れて海まで駆けた
褐色の素肌から流れる汗が飛び、虹となる
胸の二つのゴージャスボールが風で震える
あの時の素早さは岩タイプ最高速のプテラを凌ぐ素早さと後にライチは語る
ザプン
「ふう…なんとかここまでこれたね」
「でも…これは…」
無事に海まで着いたライチであったが予想外な点があった
そうアローラの海は水面下の身体を隠すには澄みすぎていた
他の人に見つかれば全裸なのがすぐにバレてしまうだろう
「はあ、でも行くしかないね」
スイ~
「誰にも見つかりませんように…」
泳ぎながらコニコシティの海沿いの自宅に向かうライチ
泳ぎながらライチは生まれて初めてアローラの美しく澄んだ海を恨んだ
『カプゥ~フフフッ』
その姿をドヒドイデを惑わしたイタズラ好きな守り神は無邪気に上空から見つめていた