ライダル(腕無し) R-18

ライダル(腕無し) R-18



やばい集団に誘拐されてたライダル。

ダルクがライナを庇い続けた結果右腕を失い、心も壊れかけて、そんなダルクに罪悪感、恋愛感情、色々なものが混ざった感情を持ってるライナ。

実験として性行為をさせられたりもして、囚われてた時期はそれが唯一の触れ合いだったから、組織が潰れて霊使いのグループに合流した後も安らぎを求めてセックス依存症気味になってる世界観




「ライナちゃん、洗濯物干し終わった〜!?」

「あ、うん! 終わったよ!」

 トマトやきゅうりの入った野菜籠を抱き抱えたエリアちゃんの声に、洗い立てのシーツを伸ばし切ってから返事をする。

 私たちを誘拐した組織がエンディミオンの技術を盗んで、エンディミオンが本格的に編成した討伐隊に壊滅させられてから数ヶ月が経ち、私とダルくんは他派の霊使いのグループに迎え入れられていた。

「そっか、じゃあアウス達が帰ってきたらご飯にしよ! ウィン、ご飯の準備どんな感じ〜?」

「スープもパンも美味しくできたよ〜」

 家の中からウィンちゃんの少し間延びした声が聞こえてくる。

「よし、じゃあ後は野菜洗って……。ってウィン、パンつまみ食いしたでしょ」

「あ、ばれた〜?」

「そりゃ、焼きたてのパンの断面が見えてて、切れ端がないんだからバレるでしょ」

 空になった洗濯籠を持って家の中に入れば、そんなふうにエリアちゃんとウィンちゃんが話してる声が聞こえてくる。

「ウィンちゃんまたつまみ食いしたの?」

「そー、ライナちゃんも怒ってやって!」

「え〜、ちょっとだけだから許してよ〜。焼き立てパンが美味しすぎるのも悪いと思うし」

 きゃいきゃいとじゃれあっている二人を見て思わずくすくすと笑ってしまう。

「え、笑う要素あったかなぁ!?」

「お、隙あり〜」

 私の方を見たエリアちゃんの口に、ウィンちゃんが一切れのパンを突っ込んだ。

「ふぁ、ふぃん!?」

「これでエリアちゃんもつまみ食いなかま〜」

 何か言いたげなエリアちゃんだけど、口の中にあるパンを飲み込むのに必死で何も言えていない。

「ライナちゃんも食べよ〜」

 ウィンちゃんは口をもごもごしてるエリアちゃんを気にすることもなく、私にもパンを差し出してくる。

「あんまり食べるとダルくんたちに悪いから一切れだけ貰うね」

「うん!」

 ウィンちゃんから受け取ったパンは温かくて、焼き立ての良い香りがした。

「ウィーン」

「ひゃっ!」

 低い声と共に、エリアちゃんの手がウィンちゃんの顔を掴む。

「悪いことする子は罰としてほっぺむにむにするんだから! まったく、つまみ食いばっかりするから、こんな触り心地いいほっぺになるんだよ!」

「うぇ〜、やめてよぉ」

「やめません! 少なくとも私が満足するまでこのまま!」

「うにぃ〜」

 ほっべをむにむにとされ続けるウィンちゃんは何とも言えない顔をしてるけど、二人とも声に笑いが混じっている。

 二人とも本当に仲がいい。ウィンちゃんとエリアちゃんはお互いに始めての友達だったらしいから、当然なのかもしれない。

 私とダルくんも、もしかしたらこういう関係になれてたのかな。

「ただいま〜」

「あ、アウス、おかえり! 結界どうだった?」

 頭の中が澱みそうになった時、玄関の扉が開く音と一緒に三人の足音が聞こえてきた。

 外の魔物避けの結界の点検をしていたダルくんが帰ってきたみたいだ。

「うん、特に問題は無かったよ。やっぱり、闇霊術の術式は興味深いね! 元々荒ぶる魔物が多い土地で発祥したからか、魔力を多く使う防壁型の結界じゃなくて隠蔽や魔物避けでそもそも見つからないことに特化しつつも、侵入者に対して呪いっていう形での攻撃手段も備えてる! 今度詳しく教えてね!」

「ああ、いいよ」

「あたしは闇霊術は攻撃魔法の方が興味あるけどなぁ」

「良いよね、攻撃術も! いやぁ闇霊術は特殊なものが多くて面白いよねぇ」

 ダルくんがアウスちゃんに片方しかない腕を掴まれながら、部屋の中に入ってきた。その後ろから手を頭の後ろに組んだヒータちゃんも着いてきている。

 ダルくんが動くたび、中身のないローブの右袖が頼りなく、ゆらゆらと揺れる。けど、ダルくん本人はそれを気にする様子もなく、アウスちゃんの質問やお願いに静かに答えている。

 無くなった右腕に、凄く鈍感になってしまった痛覚、心にも体にもまだまだ傷は残っているけど、霊使いのみんなと過ごすようになってからは、少しずつ昔の穏やかな日常の中に戻っていけてるみたいだった。

「おかえり、ダルくん」

「……ただいま、ライナ」

 こんな普通のやりとりをするのだって、少し前までは考えられなかった。

「あ、ウィン、先につまみ食いしただろ!」

「うぇー、なんれわらしぃ。ふぁんもってるのらひなひゃんもじゃん〜」

「いやどう見てもお前が主犯だろ」

「ねぇねぇ、闇霊術の媒体に使うのはどんなのが多い!? 植物、鉱物? それとも魔獣の体の一部とか?」

「はいはい! お話はそのへんにして、先にご飯食べよ! ライナちゃんとダルクくんもほら!」

「はーい。ダルくん、座ろ?」

 みんなが揃うと一気に騒がしくなって、その騒がしさも落ち着かないうちに、みんなで食卓を囲む。

 攫われて、実験動物のように扱われていた頃には考えられないくらい幸せな暮らし。

 本当に、幸せだと、思う。




 みんなが寝静まった夜中、ダルくんと一緒の部屋でベッドの中に横になっている。

 月明かりの中、小さな引き出しを挟んだ隣のベッドに、ダルくんが眠っているのが見えている。

 鳥も寝静まって、ときどき聞こえる虫の声も静寂の中に飲み込まれていく。

 そんな夜の静けさに満たされるように私にも眠気が訪れてしまうのを、光霊術まで使って払い続ける。

 今日はそれが起きないと良いな、なんて思いながらも、それを待ち望んでいる私が居るのを感じながら、ただ時計の音に耳をそばだてていた。

 突然、カヒュッと強く空気を飲み込む音が聞こえた。

 音が出たのは隣のベッドから、音は間隔を開けることなく、ヒューヒューという音は強くなる。

 それを待っていた私は、迷いなくダルくんのベッドへと向かった。

 ベッドの上で白目を剥いて、片腕で胸を掻きむしるダルくんがあまりにも可哀想で、けれどなぜか安心してる私もいて。

 ダルくんを優しく抱き起こして、そのまま抱きしめる。

「ダルくん、大丈夫だよ。私、何にもされてないよ」

「ライナ……。ほんとうか? けが、してないか?」

「うん、ほんとだよ」

 私の言葉を聞いたダルくんが一つ、深い呼吸をする。

 ダルくんの心はまだ、あの監禁部屋に戻ってしまう事がある。

 その時に気にするのは私が無事かどうか。だから、こうして私が無事なことを伝えれば少しずつ落ち着いてくれる。

 この部屋は、霊使いのみんながそうした私達の事情を考えて、用意してくれた二人部屋だ。

 けれど、これからの事は、みんなも知らない。

「ダルくん、ちゅー、しよ」

 私の言葉にこっちを見てくれたダルくんの唇に、唇で触れる。

 そのままお互いに舌を絡ませたら、酸っぱい味が私の口の中に広がってくる。

 ダルくんの冷たい体に私の体をぴったりとくっつけて、腕一本分の幅の無い、余りにも細いダルくんの体に私の熱が移るまで、胃酸の味のするキスを続ける。

 銀色の橋を架けながら、唇が離れる。

 ダルくんの顔を見ると、固い表情の中に、ほんの少しの熱がちらついている。

 ちゅーは、実験として交尾させられた私達に唯一許された、温かい触れ合いだった。

 そのせいか、ちゅーをすると私達はシたくなってしまうようになったけど、今の私にはうれしいことだった。

「ねぇ、見て、ダルくんのおかげで私、何にも怪我してないよ」

 ダルくんにそう声をかけて、パジャマを脱ぐ。下には何も履いていないから、そのまま私の裸がダルくんの瞳の中に映る。

 キスだけでピンとたったおっぱいの先端、濡れたあそこ。そして、ダルくんと違って、何の傷跡もない、無駄に丸みを帯びた姿が。

 ダルくんの喉が動いたのが、見えた。

 けれど、優しいダルくんは私を無理やり襲ってくれたりなんかしない。

 ダルくんに再び抱きついて、硬くなってくれてるダルくんのそこをさする。

「ねぇ、ダルくん、私、エッチしたくなっちゃった。"お願い"、して?」

「っ、わかっ、た」

 ダルくんが壊れかけてしまっていた時に、唯一聞いてくれたのが私の"お願い"。それを利用して、ダルくんの枷を外す。

 横たわって、ダルくんが挿れやすいように、指で私のあそこを開いて、ダルくんを待つ。

 ダルくんが服を脱ぐと、傷だらけの、細い体が見えた。

 全部、私の愚かさと、弱さの結果だった。

 ダルくんが私の上に覆い被さる。

「ん、あっ」

「くっ……」

 ゆっくりとダルくんのものが私の中にはいってくる。

 気持ち良さそうにするダルくんの顔を見ると、ようやくダルくんの役に立ててるように思えて暗い澱みが少し薄れた。

「あっ、はっ、ダルくん、わたしの、なか、あったかい、でしょ?」

「……ああ」

 ダルくんの癒しになれてると思いたくて、そんなことを聞いてしまう。

 返ってくる言葉は分かりきっているのに。

 そんなことを考えていたら、ダルくんに抱きしめられて、まだ冷たさが残ってるその体を思わず抱きしめ返した。

 中にダルくんのものを感じながら、私のものを全部渡したくて、そのままお互いに動かずにいた。

 平凡だけど、監禁されていた時には絶対にできなかったこと。そんな幸せなんか、感じちゃいけないのに、噛み締めてしまう。

「うごいて、いいか?」

「……うん、良いよ」

 ダルくんに尋ねられて、頷いた。

 ダルくんが私のことを一本しか無い腕で優しく抱きしめながら、ゆっくりと動く。

 ダルくんのが私の中で引っかかるたび、優しく奥をこつんとついてくれるたび、甘い声が漏れる。

 ダルくんが私のことを触ってくれてる、興奮してくれてる、愛して、くれてる。それだけで気持ちよくなってしまう。とても、安らいでしまう。

 だけど、それだけじゃ、だめなの。

「あ、ひぅ、ダル、くんっ」

 声をかけると、ダルくんは動きを止めて、心配そうに私のことを見つめてくる。

 どこまでも優しいダルくん、けど、私が求めてるのはそうじゃ無いんだよ?

 ダルくんの頬に手を伸ばして触れる。

「ダルくん、私のこと、めちゃくちゃに、して?」

 その言葉と共に光霊術を使う。

 使うのは感情に作用する術。

 強制的に欲望を発現させたり、洗脳するような闇霊術とは違って、あくまで本人の心の中にある欲求や願望を素直にさせる精神医療なんかに使うためのもの。

 それを、ダルくんの暴力的な欲求に対して、使う。

「んっ、むぅっ!」

 ダルくんに勢いよく唇を奪われて、私を抱きしめていた手が私のおっぱいを掴む。止まっていた腰の動きが、激しくなって再開される。

 口も、おっぱいも、あそこも、私の『一番気持ちいいところ』を責められる。

 ダルくんはどんな欲求を強くしても、私のことを傷つけてくれない。私のことを憎んでくれない。私のことを、壊してくれない。

 何度も気持ちいいのてっぺんにいって、私から出る、ぐちゅぐちゅという水の音が強くなる。

 もう頭の中がパチパチして気持ち良すぎてなんにもわかんなくなったとき、わたしのなかにびゅっとあたたかいものがはいってきた。


「ライナ、大丈夫か?」

 ダルくんの声が聞こえて、意識が戻ってくる。

 私の頬に手を当てたダルくんが心配そうに見つめてくれていた。

「うん、大丈夫。えへへ、ダルくんとできたのが嬉しすぎたみたい」

「そう、か」

 決して嘘じゃないけれど、本当でも無いそれを、ダルくんは信じてくれたみたいで、少し恥ずかしそうにする。

 ダルくんは私の言うことを何でも信じてくれる。どんなことでも。

 その度に、どうしようもない私に吐きそうになってるのをダルくんは知らない。

「ねぇ、ダルくん」

「……どうした?」

 お互いに裸のまま、ダルくんに縋り付くように、肌を寄せる。

 さっきまで暖かかったダルくんの肌は、もう冷たくなり始めていた。

「ずっと、一緒にいようね」

 こんな醜い私に、縛りつけて良いはずがないのに、そんな言葉が口から出てしまう。

 いや、否定して欲しいから、言ってしまうのかもしれない。

 でも。

「ああ、ずっと、一緒だ」

 ダルくんが言ってくれる言葉なんて、分かりきってるのに。

「うん、約束だよ?」

 ああ、ほら、こんな事まで言ってしまう。

 泣きそうな笑顔になってしまった私のことをダルくんは優しく撫でる。

 違うんだよ、ダルくん。ダルくんの前にいるこの女はね、どこまでも醜い怪物なんだよ。

 今のみんなとの生活だって本当に、幸せなはずなのに、こんなことを考えてしまうの。

 ただ、ただ、私とダルくんだけが居れば良いのに。他のみんなも、世界も無くなって、ただずっと二人で抱き合っていられたらって。

 ああ、ほんとうにどうしようもなく──


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