手に入れるのが勝利なら

手に入れるのが勝利なら


私は勝つために、罪を犯すのです。



始まりは友愛だった。

そして敬愛をへて、恋愛になった。

最初は、自分の身の丈に合わない使命を押し付けられた人に対する、同情に似た友愛。

そして、自力で『失意の庭』を抜け出して、世界を救った / 壊した、彼への敬愛。

そして、妖精國での戦いの後、カルデアに召喚され、なんでもない日々の積み重ねで培われた恋愛。

それら全てが本物で、だけど、私はそれを信じられなかった。

正確には、わからなかった。私が彼に抱いているのが本当に恋愛なのか。

私は、恋に恋しているだけなのではないか。

その疑問に答えが出ることはなく、考えていてもただ時が過ぎ去るだけ。


…けれど、きっとその疑問の答えは、出なかった方が良かったもの、だったのです。





「はぁ…」

食事を食べ終えた私は、どこか憂鬱な気持ちで、どこを目指すわけでもなく、カルデアの廊下をぶらついていた。

特に理由はない。最初は私の悩みを相談できる人を探す、なんて立派な動機があったけど、最近は、どちらかといえば気を紛らわすために歩いている。

(…リツカ)

藤丸立香。人類最後のマスター。ただの一般人だったヒト。私の好きなヒト。

(私は、彼のことを、どう思ってるんだろう…)

私は、彼が好きだ。間違いなく。絶対に。

だけど、それが「どのカテゴリ」の好きなのかがわからない。

「友人として」なのか「異性として」なのか

そして「異性として」だとして、それは本当にリツカへの愛なのか。

───恋に恋しているだけなんじゃないか。

わからないまま、この胸の高鳴りはだんだんと大きくなっていく。

最近は、身近な人に相談したりもしてるけど…

(我が夫です。それ以上でもそれ以下でもありません。わかったのなら立ち去りなさい。)

(もしかして、僕とマスターの関係について聞きたいの?恋人だけど…え?違う?じゃあ僕達の仲良しエピソードが聞きたいのかな?うん、いいよ!なんでも答えてあげる!)

(ふーん。うんなるほど。わかるよ。言いたいことはすっごいわかる。で?それを俺に相談?なんで?)

(膿にはなんとも言えねえが…まぁ、一回マスターにその想いをぶちまけてみたらどうだ?)

リツカの名前が出た時点で話が通じなかったり、聞いてはくれてもまともに取り合ってくれなかったり、解決策がおかしかったりで、結局成果は得られなかった。

(バゲ子とかノクナレアに相談するのはなんか癪だし…次はバーヴァンシーに…でも意味あるかなぁ…?)

なんて考えながら歩いていたら、誰かにぶつかってしまった。

「あっ、ごめんなさい…」

びっくりしてちょっと声がおっきくなってしまう。やってしまった、と思ったけど、目の前の青髪の子供はそんなことには目もくれず、

「いやいい。そんなことより〆切が迫っていてな。謝るくらいならさっさと退くか話のネタでも寄越すことだ。」

とつまらなそうに言いきった。だけど、彼はこちらの目を見た瞬間、獲物(話のネタ)を見つけたような目をして…

「…俺の名はアンデルセン。しがない物書きだが、こう見えて観察眼と人生相談には自信がある。見たところ、お前は何か悩んでいるだろう?もしかしたら、その悩み、解決できるやもしれん。そうだな…少し、食堂で話でもしないか?」

その提案に、なんで私が悩んでるとわかったんだろう?と思いつつも、少しの希望を抱いた私は

「ええと、よろしくお願いします…?」

と、承諾したのだった。



「…はぁ、なるほど、つまらん。」

一通り私が話終わった後、彼から出た言葉はそれだった。

「チッ。時間を無駄にした。こんななら大人しく自室に戻っているべきだったか…

時間は有限だからな。悪いが失礼させてもらう。さらばだ。」

「あっえっはい…え!?」

驚く私をよそに彼は既に席を立っていたので、私は必死で呼び止めた。

「ちょ、まって!あ、アドバイスくらいしてくれてもいいんじゃないかな、って思ったり…あはは…」

自分で言ってて少し烏滸がましいかもしれない。なんて思ったけど…

「…ふん。まぁいいだろう。そうだな、結論だけ言ってしまえば、お前はマスターのことを愛している。それも異性としてな。そら、これで満足か?」

と、足を止めてくれた。この人には少し烏滸がましいくらいがちょうどいいのかもしれない。そう思った私は

「待って。どうしてそう判断したのか、教えて。」

と、更に口調を強めた。

そうすると、その態度になにか真剣さを感じたのか、彼は再び席に座って

「簡単だ。そうだな…俺はマスターに全てのサーヴァントへの印象を聞いたことがあるが、その時、お前に対してなんと言っていたかわかるか?」

と、彼が(このカルデアにおいて)とんでもない情報を握っていることをサラッと暴露されて驚きながらも、私は彼その質問にそれなりの確信を持って答えた。

「仲の良い友達、とかじゃない?」

「正解だ。まぁ正確にはカルデア内でトップクラスに、とも言っていたがな。」

「そっ、か…」

その言葉を聞いて、とても嬉しくなると共に、なんだか、言葉にできないモヤモヤが、私の中に生まれた。

「…俺の予想が正しければ、だが。お前は今、多大な幸福感とともに、何か黒い感情を抱いたのではないか?」

「う…」

図星だった。だけど、何故だろう?

「…まさかここまで言ってわからないとはいうまい?それとも他人に指摘して貰いたいマゾということか?まぁ、他人のフェチズムにとやかくいうつもりはない。指摘して欲しいのならしてやる。お前は心のどこかで、藤丸立香という人間と友人以上の関係になりたいと思っている、ということだ。」

「友人以上の、関係…」

流石にマゾ人間とか憶測でモノを言い過ぎだと思うけど、それは一旦置いといて。私とリツカが、友人以上…

(多分、普段の生活は今とは変わらないんだろうな…ゲームしたり、ご飯を食べたり、オベロンをいじったり…でもちょっと手が振れるだけでお互いを意識しちゃったり、二人で洗濯とか、料理したりとか…こ、子供を授かったり…でも子供が生まれるってことは立香の愛がその子供に向いちゃうのか…それはなんかちょっとやだな…)

「…はぁ。まぁ別に想像を膨らませることは否定しない。だがな、TPOというものがあるだろバカめ!そういうのは自室に一人でこもってやっていろ!」

その言葉で私は現実に引き戻される。

よく考えなくても他人、しかも普段関わりのない相手との会話中に妄想に耽るのは失礼だった。

「あはは…ごめんなさい…」

「ふん。謝る必要はない。そんなことより、これからのことを考えろ。この場所には数多のライバルがいる。妄想なんぞに耽って、出遅れてハンカチを噛み締めることになっても俺は知らんぞ。…さて、そろそろ俺もお暇させて頂こう。全く、収穫がないことが約束されてる他人の相談事に乗るとは、俺もあのマスターに毒されたか…」

なんてことを言いながら席を立ち、移動しようとする彼に、私は

「えっと、アドバイス、ありがとう。それと、最後に一つだけ。

どうすれば、リツカと、その…恋人になれると思う…?」

と聞くと、彼は

「…まずは異性として認識させるところだろう。それができないのならお前はずっと”お友達”のままだろうさ。」

と、こちらを見ることもなく答えるのでした。



「…まぁ、相談相手があのクソ野郎じゃないってだけマシかな。さて、まさか恋を自覚した、って報告をしにきたわけじゃないんだろ?君の頼みだ。ある程度なら、完璧にこなして見せるとも。」

その後、私は王子様モードのオベロンのところにきていました。もちろん、リツカに、自分を異性として認識させるために。

「…今日の夜、リツカを、起こさないようにしてくれない?」

「…さて、理由はなんとなく予想ができるけど、こういうのは本人の覚悟が一番重要だ。覚悟の表明として、ここは一つ、理由を聞かせてくれないかい?」

わかってるくせにそういうことを女の子に言わせるのは、妖精の王としてどうなんだ。まぁ、別に喧嘩しにきたわけじゃないから、包み隠さず言うけど。

「リツカに、私を女として認識させるため。そのために、今日の夜、彼を襲っちゃおうかな….って」

最後の方は恥ずかしくてちょっと口篭ってしまう。それを聞いたオベロンは、少しだけ心配そうな顔をしたけど、すぐにいつもの顔に戻って。

「わかった。正直、サーヴァントとしてマスターに危害を加えるのは気が引けるけど…うん。他ならぬ君の頼みだ。全力で引き受けよう!」

よし、これで今夜襲う準備は整った。あとは覚悟を決めるだけ…




そして時間は流れて、誰もが寝静まった真夜中。

音を立てないようにマスターのマイルームに侵入する。マスターはオベロンのおかげで起きないはずだし、マイルームにいたサーヴァントもオベロンがチェックして追い出したって言ってたから問題ないはず。

そしてベッドの側に到達したので、ゆっくり服を脱ぐ。

脱いだ服の置き場に困ったけど、とりあえず床でいいだろう。そう判断した私は、特に意味もなく丁寧に畳んだ服を床に置いた。

そして覚悟を決めた私は、リツカの服を脱がせて、本来愛し合う人が、子供を作る目的でする行為を始めた。



「あれ…アルトリ、ア…?」

「え…?」

なんで?なんで起きてるの?

そう疑問に思いながらも、私は腰を振るのを止めるどころか、さらに早めるばかりだった。

彼にバレたという事実が、背徳感を増幅させたからかもしれない。

私は今、生まれたままの姿で、彼の上に跨がっている。いやらしい音を立てて、喘ぎ声を出しながら、腰を振り続けている。

そしてリツカはリツカで、この状況を把握したのか、彼の手の紋章が赤く光りだす。

「令呪をもって…」

だけど、その言葉の続きが発せられることはない。だって、リツカの口は私の唇で塞がれたから。リツカの口が、私の舌で犯され始めたから。

ああ、欲しい。唾液が、精液が、彼が。その肉体ならず魂まで、全てが欲しい。そして今このときだけはそれが独占できているという根拠のない感覚が、私の理性が崩壊する速度を更に早めていった。

結局令呪が使われることはなく、二人が果てるまで、その行為は続けられた。


行為が終わり、服を着直した私たちは、私が起こしてしまったことについて話すために、向かい合って座っていた。

気まずい空気が流れる。そもそも私がさっきまであんなに向こう見ずだったのも、快楽や背徳感による一時的な精神高揚によるものだったのだから、正気に戻ったら罪悪感に襲われて、気分が重く沈むのは当たり前だった。

(でも言わなきゃ…まず謝って、その後、好きだって、恋人になって欲しいって、じゃないと、もう言うチャンスが無くなっちゃう…!)

そう思いはするものの、どうしても勇気が出せなかった私は、これが一番の悪手だとわかっていながら。

「ごめん…今日のことは、忘れて…」

と言って、逃げてしまったのでした。




翌日、私は朝早くに食堂に来ていました。

理由はとても簡単で、昨晩はずっと泣きっぱなしで眠れなかったから。

流石にこの時間帯は、食堂の当番の人以外、ここにいるとは思わなかったけど。それでも何人か人がいるのだから、やっぱりカルデアにはいろんな人がいるな、と思う。

…しかも、その中には、リツカの姿があって、リツカは女の人と喋っていた。

ああ、羨ましいな、私はもうあんな風には喋れないだろうな、なんて喋り相手の女の人に思ったのも束の間、私の世界を切り替える目が、リツカの心を写してしまった。

そこにあったのは、罪悪感。

“ 昨日あったことについてアルトリアと話せていないのに、他の女性と話すのは、アルトリアにも、話し相手にも、失礼だ ”

なんていう、真っ黒い罪悪感。

そんなことを感じているリツカを見て、私は、

(これを使えば、まだ、チャンスは…)

なんて、最低なことを思っていた。

「…さっきまでの様子だと、やっぱり昨日は失敗した、ってこと?だとしたら俺は本当に骨折り損じゃねえか。ふざけやがって。」

と明らかな悪態をつく声が聞こえてきた。

「…なんで昨日、リツカを途中で起こしたの?」

その声の主に心当たりがあった私は、ちょっとばかしドスを効かせた声で聞く。

「おやおや、その反応だと行為前に起こしちゃった、ってことはなさそうかな?ならよかった!俺に責められる謂れはないってことだ!」

「オベロン!」

リツカに聞こえない音量で、でも最大限の怒りを込めて言う。

「…はぁ。でもさぁ、俺が怒られる理由なくない?だってお前、既成事実を作りたい、とかじゃなくて、自分のことを友達としか思ってないやつに、”自分は女だ”ってアピールするために夜這いしたんだろ?だったら行為後に起こしてどうするんだよ。あ、それともなに?”君は寝てたから知らないと思うけど、私と君はそういうことをしたんだよ。だからこれからは私を女として見てね”って?それは無理でしょ、冷静に考えてさぁ。」

「ぐ、ぐぬぬぬ…」

「あまりの正論に言葉が出ないかい?ほんっと口喧嘩弱いよな、お前。

まぁそれはいい。問題はこれからどうするか、だ。さっきの表情を見るに…策、あるんだろ?」

と、ニヤつきながら聞いてくるオベロン。正直勝ち逃げされた感じがしてやだったけど、ここで噛みついても意味がないことぐらい私にも分かるので、大人しく私の” 策 ”を共有する。

「…ふーん。まぁ、いいんじゃない?多分、あの底抜けの善人なら、それで堕ちてくれると思うよ。だけど…

それでいいの?あいつも、時が経てばお前のことを異性として見てくれるだろうし、異性として愛してくれるだろうけど。俺が思うに、それまでは長いよ。それに、そんなことして、罪悪感に耐えられるの?お前。」

それはきっと、言葉のままの意味ではなく、昨日オベロンが言ってた、”本人の覚悟が重要”ということなのだろう。昨晩のような結果にならないようにと、自分に誓えということだろう。

だから、私は。

「…うん、やる。リツカに、振り向いてもらうために。私は、使えるものを、全部使う。」

その言葉を聞いたオベロンは満足げにニヤッとして。

「わかった。最後だ。協力してやる。我らがマスターと話してるやつを俺がどうにか引き剥がすから、お前はその間にあいつと話をつけろ。」

そう言ったオベロンは、瞬く間に王子様モードになると、リツカと話していた女性に声をかけて、違う場所に移動していきました。

この二度目にチャンスを逃すわけにはいかない。そう思った私は、間髪入れずにリツカの元に近づいて、

「リツカ、こっちに来て!」

と、少し低い声で言いながら、彼の部屋まで引っ張っていったのでした。



そして部屋に着いた私はリツカをベッドに押し倒して、

「ねぇ、リツカ。」

そう、怒気を含んだような声で彼の名前を呼んだ後。

思いつく限り一番乱暴な言葉を選んで、涙ながら彼を責め立てた。

「なんであの時、私じゃない女の人と話してたの!?そんなの、私にも、話す女の人にも失礼じゃん!」

そんなことない。忘れてと言ったのは私なんだから、少なくとも私に失礼なんてことはない。

「そもそも!昨日!私が逃げちゃった時!追いかけてくれれば良かったじゃん!」

無理だ。なんの援助もなしに、しかも混乱してる状態で、サーヴァントの私に追いつけるわけがない。令呪だって、こんなことに使えるほど、安いものではないはずだ。

「それもせずにただ申し訳ないと思うだけ…!なんなの!?……人類最後のマスターとして、恥ずかしくないの!?異聞帯の人に申し訳ないとは思わないの!?」

罪悪感で吐きそうになる。人類最後のマスターなんて称号、本来は背負わなくていいものなのに。異聞帯を、生きていた彼らの暮らしを奪って、一番辛い思いをしているのは彼だろうに。それを誰よりも理解してるはずなのに、彼を手に入れるためだけにそれを悪用するなんて、本当に私は…醜い…

「私はあなたが好きなの!異性として!大好きなの!」

ここまで言っておいてそれとか、あまりの身勝手さに内心笑えてくる。私だったらそんなこと知るわけがないとキレているところだ。自分で自分を軽蔑する。

…だけど、

ずっと罪悪感を感じ続けてる、心優しいリツカなら

「…本当に、ごめん」

ここで絶対に謝ると、わかっていた。

だから私は、泣いているとき特有の声で。今出せる精一杯の声で。

「謝るくらいなら、私と付き合ってよ。私と、恋人になってよ…!」

と、今の自分が出せる、一番強いカードを切った。

これでダメなら、何をしてもダメだろう。

───緊張感が漂う。

お互いが黙り込む中、口を開けたのは立香だった。

「…アルトリア」

ああ、怖い。やっぱり、こんなことしなければよかったかもしれない。

「今の俺は、君のことを」

…ダメ。言わないで。それを言ったら、私は、もう

「友達としか見れない。」

…知ってた。ダメだった。どうしよう。こうなったら、リツカをアヴァロンに…

「…だけど」

「…え?」

「今の俺は、アルトリアのことを友達としか見れないけど、頑張って異性として見れるよう、努力する。一人の女性として愛せるようにする。だから、俺から言わせて。

───俺と、付き合ってください。」

…涙が、溢れてくる。

「いいの…?こんな、卑怯で、弱くて、勇気もなくて…」

「アルトリアが良い。好きだから。」

わかってる。その”好き”が”友達”としてだってことくらい。

その言葉も、正当性の無い罪悪感によって吐き出されたものってことも、簡単に理解できた。

だけど、卑怯で、弱くて、勇気もない私は、リツカにそう言ってもらえたことが、本当に嬉しくて。

「私も…大好き…!」

押し倒していた彼に、そのまま抱きついた。

そうして少しの時間が経って、私が泣き止んでから、改めて話し合う。

「リツカ。本音をいうとね、私は、あなたを独り占めしたい。

私とだけ笑い合って欲しいし、私とだけ遊んで欲しい。私にだけ欲情して欲しいし、クエストとかも、私だけを連れて行って欲しい。けど、それは難しい。だから。

私に、一番多くの時間を使って欲しい。

強欲だってわかってはいるんだけど…ダメ、かな…?」

なんて、できる限りあざとく言ってみた。言ってみてわかったけど、あんまりこういうのは向いてないかも…

だけど彼は、少しだけ悩む素振りを見せた後、

「うん。わかった。じゃあ、まずは二人で、ゲームでもしよっか!」

なんて、笑顔で言ってみせた。

…正直なところ無理な要求だと思っていたので、笑顔であっさりと許可した彼に、すごい驚いてしまう。

だけど、せっかく彼からの遊びの提案が出たのだから、そのことについては深く考えないことにして。彼のその誘いに、私は。

「うん!」

と、とびっきりの笑顔で返したのでした。





















「…ま、誰も幸せになれないよりは、マシなんじゃない?

俺の努力も無駄にならなかったし。まぁ、俺にメリットがあったかってのは別の話だけど。

…はぁ〜しっかし、なんか嫌な予感がする。ま、気のせいだろうけど。」




















マイルームの天井裏。オベロンでさえ把握しきれなかった場所にて

「ンンンン…なるほど。此のようにして、マイマスターとアルトリア・キャスター殿は結ばれた、と…..」

愛なき羅刹は、独り、呟きながら。

「もしこれが愛の告白による、真っ当な関係ならば多くのカルデアの皆様は祝福なされるでしょうが…」

美しき肉食獣は、独り、未来を想像しながら。

「その実、マスター殿の罪悪感に漬け込んだ陰湿な作戦、その上我が主からの恋情がないとなれば、話は別…」

そのアルターエゴは、独り、顔に笑みを浮かべ。

「ンンンンンンン…拙僧、昂ってまいりました!

まずはこの事態を”一度に”かつ”マスターを愛している者”に知らせる手筈を整えなければいけませぬが…かるであにおいて、拙僧への信頼は無と言って相違ない…ともすれば、代理役を立てる必要がありますか…

ふむ…しからば、なぜか拙僧に懐いている小さきお嬢様方に…いえ、いえいえいえ。彼女らが、うっかり拙僧の名を口に出す可能性を見捨てることはできますまい…ならば、ここはやはり…」

キャスター・リンボは、独り、行動を始めた。






続かない

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