モンキー・D一家の日常 ‘ドタバタバースディ’
あれは何年前のことだったかなぁ……ああ、家が建って直ぐの頃かな……
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「ママ、誕生日おめでとう!」
その時の私は自分で言うのもなんだけど、純粋で可愛らしいかったと思う。
「ありがとうミライ♪あ、ママを描いてくれたの!?嬉しい!」
お絵描きでママの似顔絵を渡すとそれはもう喜んでいたのを覚えてる。
「もう私の子世界一良い子!ちゅきちゅき!」
その時になんだかすごいほっぺにキスされたような気がする。
でも私の記憶で印象に残ってるのはこの後……
「グランドライン・海猫宅急便でーす。モンキー・D・ウタ様ーお荷物が届いてまーす」
「はーい」
配達人が家に来たらしく、ママが紙にサインして礼を言う。
何が来たかというと……
「うわぁ」
「うわぁ」
大量のプレゼントボックス……それも家に入りきらない程の量。もう小さい山かと思う程……
「え……なんで」
困惑するママ。その時の私も不思議に思ってたけどよくよく考えたら配信してて『ベルカントに住んでる』なんて言うものだから直ぐに住所を割り当てられるのは当然。
後はもう世界中のファンから誕生日プレゼントが来るのは当たり前のことである。
「どうしよう……私一人で開けきれないよ」
「ママ、人気者!」
多分、私はママの困惑の雰囲気を知らずに純粋に嬉しがってたと思う。
だけど、ママの人気を侮ってはいけない……世界の歌姫の衆望というものを
「イーストブルー・Uパックでーす、モンキー・D・ウタ様─」
「ウエストブルー・サーガワーですぅ! お荷物が─」
「ノースブルー・フクスリー運送です。サインを─」
「サウスブルー・ワラビー宅配でーす!ウタ様─」
…………そう、住所が割られた歌姫の誕生日はこうなる。
「わわあわわわわ……どうしようー!?!?」
プレゼントの前でプチパニックになるママ。その時の私は呑気に何箱か空けていたかな?
「……ルフィは航海中だし、シャンクスも新世界行ってるはずだし……そうだ!」
こういう時に頼りになるのが
『あー、こういう事態に備えておくべきだったか。すまないウタ』
ゴードンお爺ちゃんだ。後から聞いた話だけど、けっこう力になってくれたみたい。
電伝虫でママがずっと話してたような気がする。
「ゴードン!一時的にも預かってー!ルフィとの愛の巣もとい、お家がギチギチになるよ」
『それは良いけど……多分これからも来るだろうし』
「うぅぅぅ、ファンの皆の気持ちは嬉しいけど背負いきれない……」
『物理的にも背負えないね。よし、なら次の配信ではエレジアのお城に届けてもらうよう伝えておきなさい。
私も口の固いスタッフを雇って君への贈り物を整理する場所を作ろう』
『ああ、ありがとう……お願いします』
「なに、私は君のマネージャーみたいなものだからね。どんどん頼ってくれ」
本当、ゴードンお爺ちゃんの敏腕振りには頭が上がらないママ……今もだけど。
そして
『みんなー元気ー♪ウタだよー♪ この前送ってもらった皆からのプレゼント本当にありがとう!!
それでね、一つお願いが──』
その後の配信でエレジアの城に送るようした筈なんだよね。それから家へのプレゼント爆撃は少なった気がする。
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ああ、懐かしいなぁ。
そうつい現実逃避をしてしまう程……今は忙しかった。
「ミライー!エレジア行きの船がもう来るからどんどん運び出すよ!マストも手伝って!」
「すっげーな母ちゃん!プレゼントだらけだ!」
「お母さんの人気ってやっぱりすごいなー」
男兄弟はわっせわっせと運んでいる。
「セカイ、プレゼント山に近づかないで、崩れたら危ない」
「うーん、なんだか『天国と地獄』を流したい気分」
「箱いっぱい!」
ララがセカイを抱っこして面倒を見てる。ムジカがこのわたわたしてるのを楽しんでる気がするけど手伝って欲しい。
「もーう!レヴェリ―でライヴしたからかなー!?私の家にまでプレゼントだらけになるなんて!
また配信でお願いしなきゃー!」
山盛りのプレゼントボックスを整理しながらママは嬉しい悲鳴を上げている。
「……ふふ、ママ。誕生日おめでとう」
そう呟いてプレゼントの運び出しを続ける。
……今夜はゴードンお爺ちゃんのパエリアが食べたいな。