モンキー・D一家の日常 ウタの秘密の買い物

モンキー・D一家の日常 ウタの秘密の買い物

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 ベルカントの商店街を通り抜け、少しだけ生い茂った林の奥に雑貨店があった。

 そこは近所の子供がたまに遊びに来るぐらいの繁盛とは程遠い寂れた店。

 流行に聡い品揃えというわけでもなく、別に骨董品やら拘った作品とかがあるわけでもない。

 ここの店主は日がな一日カウンターの前でイスに座って新聞を読んだり、音楽を聴いたりと暇つぶしをする女性。40代くらいのけっこうな美貌を持ち、キセルを愛用していた。

 客のいない店内に一人の来客……海賊王の伴侶、ウタだった。

「……」

 周りを見て、唾を飲み込む。ここに来るときはいつも少しだけ緊張する。

 カウンターの前へ歩き、店主に小声で話す。

「レッド101……」

「…………」

 何かの暗号だろうか、店主はゆっくりと椅子から立ち上がり店の奥にある扉を開けて中に入る。

 ウタも彼女に着いて行って扉の中へ──


 雑貨店の奥にある一室。そこは……何とも卑猥な空間であった。

 手前にあるハンガーラックには女性物の下着がほとんど、だがその布面積は少ない。

 右手側の棚には色々な薬、危険なものではなく人の気持ちを高めた興奮させるものや、男性のモノを大きくさせる興奮剤。

 その隣の棚には長期出張しざるをえない船乗りの奥様に人気なオモチャ。

キセルの煙を吐いて店主はにっこりと笑う。

「いらっしゃい、奥様」

「……どうも」

 ウタの顔が赤い、いつ来てもこの店のこの部屋は慣れない。薄暗く涼しい店内だが緊張で身体が火照りなぜか商品がよく見えるのだ。

「まだ慣れないの?言っとくけど、こんな手前にある商品でドキドキしてたら奥にある‘上級ルーム’地下にある‘深淵ルーム’には案内できないわね」

「大丈夫です!まだ!はい!」

 必死に首を横に振るウタに店主はケラケラと笑う。

「それで、何をお探しかしら?」

「新作が入ったみたいなんで一応」

「そう、あなたが好きそうなのはそこのクローゼットとハンガーラックかしら、一応先週入荷したものよ」

 そう言って店主はキセルで指し示す。ウタは言われた通りの所へ行くと、おぉと声が漏れた。

「可愛い!……あ、こっちも」

 手に取ったのは真っ白な下着、だがブラとショーツには白いファーがたくさんついており、猫耳と猫尻尾がセットになっている。

 そして横の商品を確認すればそんな猫耳下着の色違い、犬耳タイプ、狐耳タイプ。

 むむむと商品を見るウタに店主は小さく笑う。

「ふふ、着ぐるみプレイを知ってからそういうの好きになった?」

「はぅ……そうですよ、着ぐるみってした後洗うの大変なんで、でもコスプレって結構楽しいですし」

「燃えるし?」

「……はい」

 否定はできない。コスプレしてやる新時代はちょっと燃えたりする。


 新しい下着とコスプレを2.3点購入したウタ。次に隣の棚にある小道具コーナーを物色する。

「手錠かぁ……そう言えば使ったことないなぁ」

「意外と面白いわよ、強い男に限ってMっ気があることが多いし」

「……うーん」

 ふと考えてみたがルフィはMかSか判断が難しい。自分に甘える時もあるし、燃えて自分を遠慮なく攻める時もある。

 どうだろうと迷ってるウタに女店主を耳打ちする。

「純粋に興味ない?海賊王が拘束されて、貴方の思い通りに攻められるの……誰もが恐れる海賊を貴方だけが好き放題できるのよ」

「!!!!」

 その時、ウタにある興味本位とSっ気が顔をのぞかせる。

 あのルフィをプレイの中とは言え、身動きを封じて自分が好き勝手出来る。想像すればするほどやってみたい欲がふくれ上がってくる。

 悶々としてるウタに女店主はさらに耳打ちする。

「今なら海楼石のモノを半額でつけてあげるわ、無料で鞭とギャグボールをつけても良いわよ」

「買います!!!!」

 夜の盛り上がりを期待してウタは購入を決めた。


 さて、欲しいものも手に入れたし店を出ようかと思った時に店主がキセルの煙を吐いて話しかけてきた。

「海賊王さん、明日から航海なんでしょ?ならこちらはいらないの?奥様」

 そう言って女店主がお勧めするものをウタは見た。えぇぇっと顔をしかめる。

「こういうの使わないの?」

 勧めてきたのは女性が一人でする時に使うであろうオモチャ。ダイアル技術と併用して作られた動いたり振動するバナナ型のソレ。

 女店主曰く、航海する夫を持つ女性は大抵購入するもの。夫のものを思い出して一人でするのも良いモノである。これで欲求不満が解消されるのでは?と

 そこまで聞いて、ウタはふふふと不適に笑う。

「残念ですが、この中にルフィの代わりになるものはないわ」

「あら、そんなに?なんならオーダーメイドも出来るわよ?一週間はかかるけど」

「違うわ店主さん」

 ここに来てウタは初めてこの人に強きに発言できると確信した。

「ルフィのはね……大きくなるし、膨らむし、伸びるし、曲がるし、捩じれるし、黒く硬くなるのよ。その代わりになるものはないわ!」

 ドドン!

「なっ!?!?」

 これには女店主は何も言い返せなかった。そんな可動式可変式剛柔自在なオモチャなんて無い。

 流石は海賊王、アッチのほうもただものでは無い。女店主は夜の玩具の限界を感じてしまった。


 諸々購入して一部の人しか知らない雑貨店の秘密部屋を出る。今後の予定を考えてほくほくと幸せな表情だ。

 女店主も毎度ありと一言言って海賊王の奥様を見送る。だが

「あれ?ママ?」

「ぁ、ママ!」

「へっ!?!?」

 なんと雑貨店の入り口近くのオモチャコーナーにミライとセカイがいた。ドキリとウタの表情が強張る。

「ぇ、ぁ、ミライ。なんでここに?」

「?……別にセカイとお散歩してて何か珍しいお店があったから寄ってみただけなんだけど?」

「あ、そう!……セカイ良かったね!面白いのあった?」

「ぅぃ!」

 ブイサインをするセカイを見てウタは頭を撫でる。

「ママも買い物?」

「へ?……ぁ、そうそう!ちょっとキッチンとかに使う小物があったから!」

「そ、そう……なんか汗がすごいよ?ママ」

 ミライが何か圧が凄い母親の発言に押され、とウタの顔の汗の量に違和感を感じた。

「いやー今日は暑いからかな?」

「至って普通の気温だけど」

「そう?ママってば暑がりだからかな!……あ!ママまだ買い物あるんだった!ミライ、セカイ気を付けて帰るんだよ!それじゃ!」

「ぁ、うん」

「バイバーイ」

 何を焦ってるのか袋を抱えたウタがミライの前からダッシュでいなくなった。これにはミライは困惑しセカイは手を振る。

 後ろで女店主が笑いそうになっているが、二人は気づかなかった。

「おねえちゃ、これ欲しい」

「ん?星型のシール?良いよ。ぁこれ光るやつなんだ」

「やった!」




──その日の夜

 シャワーを済ませて、寝室にて二人はベッドの上で談笑していた。

 息子のやんちゃ話、娘の学校のことや、今日の出来事とか……

 ルフィは身振り手振りで楽しく話していき、ネタが無くなって来たところで、ふとウタに抱き着いた。

 明日から航海があるから今日はお互い気持ちよくなろうと事前に話した通りそういう雰囲気になる。

「ルフィ……」

「どうした?」

 うっとりとしてるであろう妻に優しく返す夫。これからするであろう彼女との(夜の)勝負に期待が高まる。

「ごめんね」

「え?」

 カチャンッとルフィの両手に手錠が嵌められる。それも海楼石製の頑丈なやつ。

 これにはルフィも驚きの表情を隠せなかった。

「お、おいウタ!?な……なにほぉぉ、力がぁ……」

「ルフィ……今日だけ……私のやりたいようにやらせて」

「ふぇ?」

 能力者であるため力が抜けてベッドに仰向け状態になる。

 そこには、世界中の海賊が恐れ敬い政府も重要視する海賊王の情けない姿があった……

「ルフィ、大好きだよ。だから……ちょっと新しい扉開かせて!」

 いつも力強く逞しくてカッコいい夫のふにゃふにゃの姿を見てウタは昂る。

 見れば今日の下着はいつもの来てるような可愛い系のモノではなく、光沢のある黒。

 それもガーター有り、ボンテージ風のモノ……ようは女王様チックのやつだ。

「大丈夫!ルフィはゴムだから鞭とかも効かないよね?興味本位!興味本位でするだけだから!」

「う、ウタぁ……目が、こえぇ……」

 イチャラブする予定がなぜか自分が拘束されて嬲られることになろうとは誰もが思わない。

 ルフィは覚悟を決めれずにいる。確かにウタの要望には応えてやりたいけど自分はこういう窮屈なものは好きじゃない。

 なので、ウタには悪いが早々に諦めて貰おうと海楼石の手錠を何とか覇気で外そうかとした瞬間。

「……ダメ?」

「ッ!!?」

 うるうると甘えた目で見てきた。燃える夜にしたくて衣装も道具も買ってきたウタのわがまま。

 それも涙目でお願いされたら……

「今日、だけだぞ……」

 こうなるのも無理はない。

「うん!えへへ、ルフィ大好き♪それじゃ……」

 鞭をしならせる。唇を舐めてウタは笑う。

「いっぱい可愛がってあげる♡」




────翌日サニー号


『今日の船長はポンコツだった』とナミは語る。

 まず船に合流した時、体中に見える痣とキスマークが昨日何があったかを物語っている。

 コックは鼻血を垂れ流して船長を呪い殺すかのような目で見ており、船医は何かあったのかと純粋な気持ちで診察しようとしてる。

 考古学者と船大工は察して仲良い二人に小さく笑い、剣士と操舵主はやれやれと少しだけ苦笑していた。

 いつもは鋭いツッコミをする狙撃手もこれは触れて良い話題なのか迷ってしまっている。


 出航だぁと合図と共に新たな冒険を目指して船を出す。

 目指すは100年前にいた海賊が残した財宝。

 どんな冒険が待っているのかと思い、海を出た矢先……他の海賊団と戦闘になる。

「うっし!おれに任せろ!ゴムゴムのォォ……っ!!」

 途端、腰がひけて体勢を崩したルフィ。

「ば、ばずーかぁ……」

 へろへろと伸びる腕、何もしてないのに尻もちついてルフィは腰の当たりをさする。

「なんだお前!?どうした!」

「いや、なんでもねぇぞゾロ!……大丈夫だ!」

 そして、次に回転蹴りの要領で足を延ばしてゴムゴムの鞭を繰り出そうとするも

「……むちぃ……」

 へなへなとただ長く伸ばした足を縮める形になる。

 チョッパーを除き船員皆察した。

──コイツ、昨日はハッスルし過ぎだな。

 と




──ベルカント島の離れ 海賊王の家


「じゃぁママ、私もう行くねー」

「うん、気を付けてね」

 ミライが学校に行き、マストは冒険と行ってベルカント島の商店街へ、ライト達はセカイを連れてお散歩。

 洗い物を済まして、家事を一段落終えたウタはそのまま寝室の方へ向かい。

「ふぇぇ……」

 バフッとベッドに倒れ込んだ。もう限界であった。

 夫を見送って、朝ご飯を用意し子供たちの相手をする。それは良い、いつもしてることだ。

 問題は……

「腰が……」

 こっちもハッスルし過ぎた影響でガクガクになっていた。子供たちにはバレないように笑顔で接してたが本当は歩くのもいっぱいいっぱいである。

 これは今日は一日中横になってようとスケジュールを見直す。

 新曲づくりやら筋トレとかのメニューも全部後に回すと決めてやれやれと我ながら呆れちゃう。

 だが彼女の顔は

「えへへへ」

 幸せいっぱいであった。

「ルフィ……我慢できなかったからって……逆転して襲わなくても……倍返しされちゃった♡」

 否、幸せ過ぎて惚けていた。




 ベルカント商店街の奥にひっそりと佇む雑貨店。

 性のマンネリを感じた奥様、旦那様……一度当店へお越しくださいませ。

 きっと貴方に合う素敵な物をご紹介いたします。

                       ──女店主


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