モンキー・D・ルフィ 15歳の絶望 ②
ヱ四それからルフィは『自分の正義』というものを模索し始めた。海兵としての任務をこなす傍ら、数々の先輩海兵に接触し、『正義とはなにか』を聞いて回ったのだ。
最初は憧れの祖父と、その同期の偉大な海兵たち。
「なあじいちゃん、聞きてぇことがあるんだけどよ」
「おっルフィか、何じゃ」
「おやルフィくん、元気かね」
「ノックおしよ、ルフィ。いきなり部屋に入るもんじゃないよ」
「あ、ばあちゃ、間違えた。お鶴中将、センゴク元帥、ごめんなさい」
「いいよ、次から気をつけな」
「何じゃわしとは随分態度が違うのう」
「だってじいちゃんがかしこまらなくていいって言うから…他の目上の人にはちゃんとしろってモモンガ先生が…」
「よせガープ、この子が正しい。…わたしは未だにこの子がおまえの孫だということを信じられずにいるよ」
「なにを!わしのかわいい孫を疑うのかセンゴク!」
「疑われてんのはあんただよガープ。かえりみな。…それでルフィ、なにが聞きたいんだい?」
「あ、えっと、お鶴中将と「お鶴でいいよ」お鶴さんとセンゴク元帥に「センゴクで構わないとも」センゴクさんにも聞きたいんですけど、『あなたの正義ってなんですか?』」
「何じゃルフィ。いきなりややこしいことを聞き出したのう」
「ガープ、子供の成長を…いやしかしなぜ急にそんな話になったんだい?」
「実はこないだ……〜
〜という話になって、おれが掲げる正義ってなんなのかなっておもったんだ、です」
「ブワッハッハッハ!よしよしすっかり海兵が板についてきたのう!偉いぞルフィ!」グワシグワシ
「やめなガープ!その子の首がもげるよ、まったく」
「いやしかしそのスモーカーという海兵は有望だな。人事部に資料をもらっておこう。…それで、そうわたしたちが掲げる正義の話だったな、ルフィくん」
「うん。じゃなくてはい」
「ようし、よく聞けルフィ!わしの正義は「あんたは黙ってな、ええ恰好しい」お、おつるちゃん!?」
「今この子は真剣に悩んでるのさ。子供なりにね。自由すぎるあんたの正義は今参考にはならないよ」
「そんな、後生じゃおつるちゃん!ルフィにええところ見せるチャン「あたしゃあんたがこの子をジャングルに放り込んだ件もまだ許してないよガープ」…はい、すいません」
「そういうことだよ、ルフィ。今日のところはセンゴクの正義について聞いていきな。全海兵の鑑だよ、その男は。…あたしはちょっとこの老耄(おいぼれ)に折檻してくるからね」
「え、あ、お鶴さんありがとうございます…?あ、じいちゃん。その、頑張れよ!」
「後生じゃぁぁぁ〜……」
「…あれ、いいんですか?」
「いいとも。あれしきでガープは懲りんし、いい薬だろう。…そこに座るといい。お茶を出してあげよう」
「ありがとう!…あ、ございます!」
「今はなれない敬語はやめても構わないよ、ルフィ」
「え、いいのか、ですか」
「公の場でもないからね。そこに意識を割くよりも、君の学びのほうが大切だ」
「えっと、じゃあ、普通にするぞ…」
「うん、さてわたしの正義だが…わたしは『君臨する正義』というものを掲げている」
「くんりん…」
「まだ座学で学んでいないかな?そうだな、簡単に言うと、「統治する」という意味だ」
「統治…王様みたいに?」
「そう。そして正義が統治するのは世界の治安、ひいてはソレを脅かす悪党、海賊共だ」
「海賊を統治…?あいつらって言うこと聞くのか?」
「聞かん場合の方が多いとも。だから正義を持って統治する。海賊や海賊になりうる悪を、『悪となり海軍に敵対すれば負けるぞ』という影響力で牽制する。それが『君臨する正義』だ」
「なんにもしなくても海賊を止められるってことか…!スゲえなセンゴクさん!」
「そうだな。そう在れたらいい。…もっと言うと、海賊になろうとすら思わせなくなる。それがわたしの正義の理想形だよ」
「ハァ〜…!(お目々キラキラ)」
「(気持ちがいいくらいに純真だなこの子は…)参考になったかね?」
「うん!なった!ありがとうセンゴクじいちゃん!」
「じいちゃんか、そうか…。…ところでルフィ、他のものにも正義を聞いて回りたいのかい?」
「うん!ヒナが、『わからないことは人に聞くのが一番』って言ってたから、まだ色んな人に聞きてえ!」
「そうか、賢いな(ナデナデ)。…よし、ではモンキー・D・ルフィ軍曹!君に任務を与える!」
「! はい、センゴク元帥!」
「君にはこれから大将以下各隊を周り、わたしが指定した文書を届けて回ってもらう。そして文書の受け渡しが終わったら、『各隊の仕事をいくつか』手伝って戻ってきたまえ!」
「…! はい!拝命しました、元帥殿!」
「よろしい!…よくみて、よく聞き、よく感じてきなさい。ソレがきっと、君にとって一番の糧になる」
「はい!失礼します!…ありがとうセンゴクさん!」
「(フフフ、つくづく有望。本当にあれの孫とはおもえんな。…っと、いかんな、つい贔屓してしまう。お鶴さんの気持ちもわかるというものだ。まったく、…次代は育っている、か。)」