モブ生徒の日記 4冊目

モブ生徒の日記 4冊目

ハモンドオルガン

ツクリとであってはや1ヶ月と数週間

窓のない高速列車のうわさは全く消えず、それどころか大体どこに行ってもうわさされるようになった

ツクリはまったく気にしていなかったが流石にここまで大きくなると真相を調べてみるしかない

ただの噂だよーと言っていたが私は正義実現委員会に追われているところを見た

手配された理由は列車とは何も関係がないことは分かっているがそれでも怪しく見える

正直なにも根拠がないがヘルメット団や切符を失くした私への対応を見るに何かを隠しているはず

そして私は調査を行う事にした

まずはハイランダーの生徒に聞き込みを行ったが、全く寮にいない、急に走って飛び出してゆく、人体に関する本や楽器の仕組みについての本を大量に読んでいる、という結果に終わったが全員が共通して言ってたのは外で何してるのかは全く知らないという事だ

つまりツクリはハイランダーに所属しているがハイランダーでは全く人付き合いがない

そして外での行動をだれも知らない為そもそも誰とも会話していないかもしれない、あるいは話を逸らしたり、そもそもその話をさせていない可能性がある

まとめると外での様子は誰も知らないから何かをしている可能性があり、何かあるならばそれは確実に窓のない高速列車関係ということだ

そして粘り強く調査を進めたところ高速列車の停車駅近くにある倉庫と車庫によく行っていることが分かった

私は高速列車の今までの運行時間帯を調べ次に運行されるならこの時間帯という予測を立てた

そして、計画を実行に移す時が来た

列車が発車したのを見て倉庫に忍び込む

もちろん鍵はかかっていたが便利屋に頼んでおいたピッキング用具で鍵を開ける、少々手痛い出費になってしまったがこれも真相を確かめるためだ仕方ない

鍵を開け、中に侵入する

倉庫の中には大量の棚とよくわからない器具備品の山だったが端にはノートパソコンがスリープ状態で置いてあり、幸いにもパスワード等によるロックはかかっていなかった

この中に証拠があるはず

わたしはそのパソコンを調べることにした

パソコンの中は大量の動画データと音声ファイルが存在した

動画データを調べる

それはあの列車の内部の様子だった

その中で乗客はお互いの体をほじくる

血が飛び散るが混ざったり分離することはなく

まるで苦痛を楽しんでいるように見えた

絶えず悲鳴が聞こえる...

突如として吐き気がこみ上げる

私も何回か乗ったことがあり、そのたびにこうなっていたのかもしれないのだ

何とか込みあがってきたものを呑み込み証拠としてスマホに転送するがファイルデータが大きく転送に時間がかかる

私は他にも何かないか探すことにした

音声ファイルは悲鳴と楽器の音、そしてそれらを編集し曲にした物があった

悲鳴の中には聞き覚えのある声も入っていた

楽器の音は普通の楽器のものだと思うが、なぜかどうしようもなく不安になる

曲は本当に悲鳴と楽器の音で構成されているのかと疑うほどに完成度の高いロックなミュージックだ、おそらく何も知らなければ普通の曲として聞いていただろう

そろそろ転送も終わるという頃にドキュメントの中に私はテキストドキュメントが一つだけぽつんと置かれていたのを発見した、ファイルの名前はデフォルトのものだったがなぜかそれから目を離せなかった

そのテキストを開く

そのテキストの中身は私の個人情報だった

所属、学年、身長体重、番号メアド...趣味や癖なんかも詳細にまとめられており、その下には沢山の私の写真が貼ってあった

アングル的に隠し撮りもされている

私は言いようのない恐怖に包まれた

スマホの通知が鳴る

メールの通知だった、連絡先に登録されていない

メールには文字がなく画像が添付されている

そのメールを恐る恐る開き、画像を確認する

真っ黒な画像だった、しかし、真っ黒だったからこそ私は気づいてしまった



反射して見えてしまったのだ

私は衝撃のあまりスマホを落としてしまった

私には後ろを向く勇気さえもなくなってしまったことに気づいてしまった

「ばれちゃったね...全部...」

かなしそうな声色だ

一歩一歩、距離を詰めてくる

私は完全に恐怖で縮み上がった

マウスが操作され、パソコンのフォルダが開かれる

開かれたのは...楽器になった私の写真だった

「ねえねえ、今まではこうなっても現状復旧っていう特異な技術で元に戻ってたんだけどね、今はねそれがないの...あなたの座ってるその椅子はただの椅子だから...普段なら真実を知られても現状復旧で記憶も戻って忘れるんだけどね...ねえ、私は貴方をどうすればいいんだろうね?」

そういいながら喉にナイフを突き立てる

あまりの恐怖に震えが止まらなず、息が乱れ、涙がこぼれる

「...ねえねえ...どうすればいいって...聞いてるんだけど、ねぇ!」

その瞬間、ナイフは眉間に突き立てられ、代わりに首を絞められる

答えようにも答えられず、意識が遠のく

いろんな瞬間が垣間見える、あの何も知らず幸せだった日々が見える

...

...い

死にたくない

その瞬間少しだが息ができるようになった

まだ...私は...死にたく...ない

「うーん、でも君を殺さないと私が」

なん...でも...します

その瞬間、私の首を絞める力が弱くなったのを感じた、まるで言うことを想定していないような顔を浮かべる

「いま、なんて?」

なんでもする...なんでもするから...殺さないで...

彼女の手からナイフが落ち、カキンと音を立てる

「ほんとに何でもする?」

やります...何でも

彼女は悲しそうな顔を浮かべる

「...そう、それじゃあ行こうか、ハモンド」

はい

ハモンド、それが今の私の名前だ

私のやることは列車の整理業務と、ツクリにやれと言われたことだ

それさえやれば、今すぐには殺されずにすむから

ドアを開け、襲い掛かってくる肉の塊どもをバラバラにはがして席に座らせる、元に戻して下車させる

今日も列車は無事故で運行しております




「そういえばさ、あの子感じ変わったよね」

「あれは感じ変わったっていうよりも人が変わったんじゃないか?」

「なんか目が怖くなったよね」

「それに常に何かにおびえてる感じがしてるんだよ」

「前なら話聞いてなかった場面が何回かあったよな」

「何があったんだろう?私ともあまり話してくれなくなっちゃった」

「あーでもハイランダーの生徒と一緒にいるところは見たな」

「えー、絶対何かされてるじゃん!」

「でも普通に仲良さそうだったよ」

「そっか...じゃあ何だろう」

「さあね」


...うん大丈夫、私は生きていく、これからも、この先も

恐怖に砕けた栄冠


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