モブくん脳破壊SS

モブくん脳破壊SS


ペパアオが実際デキてるのか何かしらの勘違いを含むのかはご想像にお任せいたします






最近、僕には気になる子がいる。新チャンピオンであり学校最強でもあるアオイちゃんだ。

幸いにして同じクラスだった彼女とはそれなりに話す機会に恵まれ、連絡先も交換してもらっている。

ある日彼女に貸してもらっていたペンをそのまま持って帰ってきていたことに気付いた僕は、少し遅い時間ではあるが一応本人に電話してみることにした。

ドサクサに紛れて食事に誘えたりしないだろうかと少しだけ期待してスマホロトムを開く。

ロトロトロトと鳴り響く音がやけに長く続き、もしかしてもう寝てしまったのだろうかと思い始めたその時。

『……あー、はい』

電話に応えたのはやけに低い声だった。

「あれ?えっと……どちらさまですか?」

『どちらさま、ってオマエこそ誰……ん?アレ?これアオイの?』

「ま、間違えました」

それが男の声だと一泊遅れて気付いた僕は慌てて電話を切ろうとした。すると、『すまん』と抑えた声が続く。

『合ってた合ってた。間違えたのはこっちな。アオイなら寝てるけどなんかお急ぎちゃんか?』

アオイなら寝てる。男から聞くには飲み込み難い響きを伴うその言葉に、僕の思考がぴたりと止まる。

「あ、いえ……」

そこでもぞもぞとした音と同時に、眠たげでよく知った声が加わってきた。

『んー……どしたの?』

アオイちゃんだ。聞きたかったはずの声なのに、何故かひどく喉が渇く。

『わ、起きちゃったか?じゃあ代わ……』

「いえ、急ぎじゃないので大丈夫です。明日直接話します」

とりあえずこの状況を一旦整理する時間がほしい。この時間にアオイちゃんが男といるらしいことも、起きたアオイちゃんに対して一瞬かけられた男の声の甘ったるさも、全部何かの間違いだと思いたかった。

『そりゃお気遣いどうも。なあアオイ、ナントカくんって子からだけど急ぎじゃないから明日にするってさ』

『ナントカくんじゃわかんないよ』

くすくすと笑う声がする。先程から薄々気付いていたことだが、普通はそこまで広範囲の音が拾えない電話でアオイちゃんの声もかなり鮮明に聞こえるのは不自然だ。

そう、例えば二人が寄り添うくらい近くに。寝ていたという話だから、お互い横になっているのでもなければ。

『悪い、名前聞いて……』

「すみませんじゃあまた明日!」

耐えきれなくなって、改めて名を問う言葉を最後まで聞くことなく思い切り電話を切る。

番号自体は通知しているから、アオイちゃんがもし僕の番号を登録してくれていれば履歴を見れば名乗るまでもなくわかるはず。

ベッドに飛び込み、毛布を被り震えながら考えた。あの特徴的な話し方はアオイちゃんがよく一緒にいる博士の息子ってやつだろう。

そいつが、なんで。どうして、アオイちゃんのスマホロトムを。

ぐるぐると思考は止まることなく同じところを回り続ける。

今夜は寝付けそうにもなかった。


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