メンタルマッチポンプ(不本意)

メンタルマッチポンプ(不本意)






※モブ×姉者の純愛

※モブというかオリ主か男夢主に近い

※姉者はちゃんと曇るし人形ルートに向かう





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外出は、さすがに許されなかった。幾重にも重ね掛けされた弱体化の封印もそのままだった。


しかし、自分をベッドの上に閉じ込める拘束は外された。思考力を奪う精神安定措置は段階を踏んで軽減されていった。

屋敷の中や中庭ならば自由に出歩けた。二人で顔を突き合わせて専門書を読み議論した。パンケーキを作って一緒に食べた。

妊娠安定期には、軽くなら剣の鍛錬すら許された。


過ごす時間を積み重ね、何度も誠実な気配と共に「愛している」と伝えられた。

ドゥウムが自分で考えて選択したり自主的に行動したりするとすかさず褒めて、薄れていた自我を優しく引き出された。

なぜそんなことをするのかとドゥウムが首を傾げると、男は「私には貴女しかいないので」と静かに微笑んだ。



愛で表面をコーティングした執着や支配欲を囁かれることには、慣れていた。

でも自分の意思や選択を尊重されたのは、もうずっと前、弟たちとセル以来だった。

……幸福、だった。

毎日丁寧に慈しまれて、兄弟たちや子どもには及ばないがいつしか大切な相手になっていた。

他人に兄弟の話をしたのは、本当に生まれて初めてだった。

もう10年以上も続く終わらない陵辱の日々で、大分削り取られて小さくなった『自分』が息を吹き返していくようだった。




男は前当主の長男で現当主の兄だった。極めて明晰な頭脳と美しい立ち居振る舞いであるその男が、きっと今回の『旦那様』なのだろうと思っていた。

この家でドゥウムが孕んだ子の父親、自分に種を植え付けた、最も将来と血統を期待された者だと思い込んでいた。

…実際には、男は魔力の少ない無能と烙印を押され、幽閉される身分だった。


ドゥウムがそれを知ったのは、珍しく家の当主が来ないままドゥウムが子を産んだ、その翌日のこと。

当主の怒鳴り声と人を殴る音が響く中でのことだった。


「囚人を勝手に部屋から出すな」

「命令もないのに拘束を外すな」

「出来損ないの分際で」

「貴様は『いないもの』だろうが」

「温情に縋って生かされている身分のくせに」


ドゥウムが別邸だと思っていた屋敷は離れだった。男が家の恥とされていた人間であったことを知った。

そうして最初に自分が男を『旦那様』と呼んだときに戸惑った様子を見せた理由を理解した。

男と似た気配、それでいてずっと魔力が多い少年。現当主は、無事に我が子を産み落とし、あと数日で返却する予定の母胎の様子を確認しにきたのだという。

母胎用の隠し部屋の外で男と談笑するドゥウムの姿を見た当主に、男は厳しく折檻された。



ドゥウムは、黙って立っていた。

当主───『旦那様』の意思は何よりも優先されなければならない。

そういう契約だ。自分がここで従順に子を産んでいれば兄弟たちの身の安全とそれなりの待遇は保障される。

そのためだけにドゥウムは何度も何度も何度も、何度だって。

抱かれて。輪姦わされて。嬲られて。身体中全て余すところなく。貶められて。呪いも魔法も薬も。すっかり変わり果ててしまって。無力感を刻み込まれて。指も腹も尻も首筋も髪も全部全部。愛を囁かれて。ナカが思考が骨格が。見えもしない美貌を褒めそやされて。

太い腕に組み敷かれて鳴くことしか、もうできなくて。

それで。


だから男が何度も殴られ、蹴られ、怒鳴りつけられ、鞭や魔法で執拗に痛めつけられる様を、ただ眺めていた。

頭の中はずっと続けられてきた調教と凌辱のフラッシュバックで動かなかった。しつこく毎回繰り返された『契約は兄弟のためになる』『その胎で社会に献身しろ』という呪縛に雁字搦めになっていた。


できたのは、立ち尽くすことだけだった。拳を握り締めることすらなかった。

ただただ嫋やかに、麗しく。

『旦那様』───高位貴族の当主たちの慰み者として相応しい挙措を教え込まれた身体は、そんなはしたない振る舞いを許さなかったから。



散々仕置きを受けて動けなくなった男をその場に置いて、隠し部屋に連れ戻された。

男とそっくりな『旦那様』は、貴重な母胎のために誂えられた部屋へと歩を進めるドゥウムを背後から一分の隙もなくじっと注視していた。

行くな、とかけられる言葉。届くことのない優しい手が後ろから伸ばされる気配を。

ドゥウムは完全に、無視した。





子を産んだあとの『検分』を受けるのは、すこし辛い。

魔法で調べられたり指で触診されたりするのならばなにも問題はないのだが、あいにく売女の扱い、それに託けて抱かれることが多いのだ。

治癒魔法をかけられてもまだ骨格や膣の損傷が治りきっていないし、ホルモンバランスとしても性欲が出にくい時期だ。

締まりも悪く挿入れ心地もよくないはずなのに、産んだ数時間後やなんなら直後の身体を求める『旦那様』もなぜかやたらと多い。

案の定、今年も『旦那様』に組み敷かれた。

腰を擦り付ける。呼吸や腹筋の圧力で敏感なナカを締めつける。媚びた甘い声でいやだだめだと鳴いてみせる。

もう10数年も母胎として使われているドゥウムは、覆い被さられたら男を悦ばせる振る舞いを自然と取るようによく教え込まれている。

胸、口、膣、後孔。全身どこもかしこも簡単に快楽を拾えるよう、徹底的に育て上げられどうしようもなく浅ましい。……靭く聡明な一つ下の弟と揃いの身体になれたと言い換えたのなら、まぁ少し嬉しくなくもない。

今回も散々当主の欲を煽り、結局トぶまで啼かされた。

精を強請ることでしか価値を示せないドゥウムをザーメンタンクなどと呼んだのは、たしか3年前の口の悪い『旦那様』だったか。





事後の疲弊した身体は気づけばいつも使用人の手で整えられている。

『旦那様』が通ったからか先ほどまでとは大分違うデザインの服。整えられた髪には香油と少しゴツゴツしたバレッタ。

汚れたシーツも取り替えられている。損傷を無視して無体を強いられたナカと腰の、刺すような痛みだけが痕跡だった。


静かに横たわったまま、終わったばかりの蹂躙を思い返す。

……自分に欲を向けているときの当主の魔力は少し質が変わっていた。10ヶ月間限りない慈愛を注いできた男と、ほとんど同じになっていた。

この屋敷に来たその日のうちに朦朧としていた自分にたっぷりと種を植え付けた気配、乱暴に触れる手、征服欲に満ちた冷笑、侮蔑を含んだ声音。

それまで彼だと思い込んでいた記憶と、一致した。


彼はドゥウムを嘲笑いながら抱いたことはなかった。ドゥウムは彼の子を孕めなかった。

そんな事実を理解して、どうしようもなく力が抜けた。




靴の音。慣れた気配が近づく。


下半身の痛みを無視して、ふらつきながらベッドから降りて彼の気配を出迎えた。

ドアを開けて絨毯を踏みしめて近づく気配は、なぜだか激情を堪えた尋常じゃない様子だった。


男に抱きすくめられ口付けられる。

男に抱き締められたのも口付けられたのも、これがはじめてだった。

恐怖、嫌悪、悲痛、憎悪、罪悪感、激怒、無力感。

内心を表す男のぐちゃぐちゃな気配の中で、一際色濃く纏っていたのは、それは確かに情欲だった。

……先ほどの当主による『検分』の最中、ずっと彼が部屋の外からこちらを窺っていたのは感知していた。

だからきっと、彼はドゥウムを視姦していたのだろう。

経験上、他の男に抱かれるドゥウムを直視した男から向けられる感情は一つだった。

この激情を、嫉妬だと期待してしまってもいいのだろうか。


乾ききった大地にしとしとざあざあ慈雨が降り注ぐように、10ヶ月間ずっと満たされなかった乾きが急速に解消される感覚。

義眼と目隠しで隠された眼窩の奥がつぅと熱くなった。

彼が、自分に昂って、求めてくれた。

こんな、股を開くことしかできない自分に。

地位や財産どころか意思も自由も尊厳も、何一つ持たない自分なんかに。

ようやく。

ドゥウムの唯一の価値を。




男の厚い舌にぐちゅぐちゅと口内を犯されている。硬さを帯びた股間に、先ほどまで『旦那様』に手酷く嬲られていた下半身を服の上から擦り付ける。背中に回されキツく拘束する腕や手を指先や掌で愛撫する。


このひとがいい。

はやくほしい。


激痛がどうでもよくなるほどの、くらくらするほど強烈な性感。

息ができないほどの多幸感だった。


上品なレースをあしらわれた目隠しを涙が濡らし、後から後から頬を伝って流れ落ちる。

快楽以外の理由で流れる涙なんて、久しぶりだ。

たしか、末弟によって多少改心した実父が弟たちを生き返らせたときが最後だったはず。

かき混ぜられていた口が離された。混ぜ合わされた唾液をコクリと飲み込んで、唇にたっぷりとついた唾液も舌で舐め取る。

嬉しくて幸せで口角が上がってしまうのを抑えられない。


「おかして。」


どうか好きなように使ってほしい。この身体すべて余すところなく貪って。触れて。この胎に注いで。孕ませて。

あなたのこがほしいのです。

泣きながら微笑みながら懇願した。



ヒュ、と息を呑む音。男が濃厚に漂わせていた性の気配が一瞬で消え去る。

一切の悪意なく、反射的といったふうに思いっきり突き飛ばされた。

無抵抗にベッドに背中から倒れ込む。

位置関係は当然把握していた。この柔らかなベッドならば受け身を取る必要もない。

……なぜ、こんなに急に彼は萎えてしまったんだろう。

ドゥウムは特に粗相していないはず、なのに。


明らかに動揺している男に、急にどうしたのか問いかける。

ゆっくり、と、男が口を開く。

震えた声で願われた。


「逃げ、ましょう。そうじゃないと、貴女が壊れてしまう。」


終身刑の罪人、使い古しの孕み袋に向けるにしては、彼は随分と大きな感情を持っていたようだった。

自己陶酔も支配欲もない。ただただ切実で純粋な祈り。


「……どうして?」


───そんなの、意味はないのに。


わからない。

ここから逃げたところで、生きていく方法なんて知らないのだから。

昔はお父様の城で、今は『旦那様』方の屋敷。

ドゥウムは飼われて孕むことしか知らないのに。



かつてドゥウムは弟たちを使い捨てようとする実父に抗っていた。自分にもなにかできることがあるんじゃないかと強さを追求し続けた。

結局何の意味もなく、多くの人々を傷つけ殺しただけに終わってしまった。


末弟は養父や友人のために、真っ向からお父様に歯向かった。

自分はまるで逆らうことなく、従順な部下として大切な弟たちをみんな死なせた。


その結果が今だ。

何も為せない、生きる価値がない。背負っているのは罪ばかり。今のドゥウムにできるのは、契約に従って兄弟のためにこの社会への奉仕を続けることだけ。


だから、もう別に、いいんじゃないか、と思う。

実際ドゥウムがマッシュを産んだのは、神覚者を生み出すという社会貢献になっただろうし。

貴族たちの下で育つ子たちはみんな、大切に慈しまれているのだし。

だって人格が壊れたって、そも自分は胎と見目しか役に立つ部分がないのだから。




つらつらと述べると、はくり、と男の口から声にならない吐息が漏れた。

彼の気配がまたガラリと変わる。

恐怖を打ち消す、鮮烈な決意の色。


「貴女には、幸せになってほしいんです。」


吐き出すように叫ぶように、途中で何度もつっかえながら、男はドゥウムへの想いを語った。


兄弟のことを話すときの僅かに緩んだ口元が好きだ。

精密な魔力感知によって細かい文字も読めてしまうほどの才覚が眩しい。

磨き上げられた剣技に惚れ惚れした。

本のページを捲る指先を美しいと思った。

パンケーキを何度も何度も作って食べて、レシピを際限なく研鑽するその在り方が好ましい。


長く長く、数えきれないほどの愛を唄い続けた。


……そうして。

自分の弟に向けていたのは明らかに貼り付けた笑みだった、鳴く声も甘く蕩けていたのにどうにも悲痛だった、と言った。

大切な女が意思を潰されてこの日々を続けるなんて耐えられない。

どう考えても一方的な搾取としか思えない契約だ。

ドゥウムを死んだことにして搾取する輩に任せて身内の扱いが本当に良くなっているとは思えない。


───一緒に屋敷から逃げてしまおう、と。


ドゥウムがはじめて聞く鋭利な声で、告げた。



うれしかった。

こんな自分がありきたりな幸せを望まれたことが。

自分を嬲り嘲笑う『旦那様』たちとの契約に不信感があったのも、事実だった。


だから、彼とならば自分も、なんて。



そんなことをうっかり期待してしまったから、いけなかったのだろうか。





箒でドアを突き破って当主が怒鳴り込んできたのは、ドゥウムが男の言葉に頷いてからほんの数分もしないうちのことだった。

後から思うと、伝言ウサギの改良版でも仕込んでいたのだろう。

当主に逆らう意思を、知られてしまった。


「なんってことを!!してくれたんだ!!!」


当主は男に憤っている…いや、憎悪を向けているようだった。


「母胎に意思も自我もいらない」

「従順な人形に躾ける」

「それが我々の間での取り決めだ」

「母胎の正しい扱いは伝えたはずだ」

「当家に協定を破らせたな」

「よりにもよって貴様のような無能が」

「役に立たないカスが」


禍々しく高まる魔力に冷えきった気配。

当主は、『本気』だった。

久しぶりの戦闘の気配に、10ヶ月かけて少しずつ回復した脳髄が熱くなった、が。


───この戦力差じゃ、まず勝てないな。


杖は部屋の棚、届かない場所に安置されている。魔力はほぼ使えない。産後の損傷と先ほどまでの凌辱でふらつきながら歩くのがやっと。

そもそも監獄の署長に管理されている今のドゥウムは、身体能力をそこらの手弱女と変わらないくらいまで封じられている。

高位貴族の当主、若き俊英と華々しく称えられる今年の神覚者候補には、到底勝ち目がない。

早く、逃げなければ。


杖を一振り。当主が唱えた呪文とともに攻撃が男に突き進んだ。全身をバネのように使って男を床に押し倒し、覆い被さって庇う。


寸前で魔法は停止した。

やはり自分の価値ならば、この人を守り切れる。


頭と首、背骨。当主の杖と男の急所を結ぶ直線上にドゥウムの身体でもっとも価値の高い胎の辺りを差し込む。

それ以外の出血量が増えやすい部位も可能な限り抱き込んで衝撃に備えた。が。


「契約を忘れちゃいないだろう。その一族の者を渡せ『母胎』。穴風情がオレの邪魔をするな。」


「……ぁ。」


獰猛な嗜虐心に染まった、己こそが秩序とばかりの声がドゥウムを射貫いた。

『旦那様』の命令に、力が抜ける。

そうだ、弟たちの、セルの、ためには。

従順に、献身しなければ。

大切な大切な家族のために。


「ぃ、や、…だ。」


性感と無力感を刻み込まれた身体が過去のフラッシュバックで震える。

全身が強張って動けない。

それでも、折れられない。

これは昔何度もあった、お父様を前にしたときと同じ状況。

どちらに転んでも大切な何かを失う二択に追い込まれ、足掻く様を嘲笑らわれる地獄。

ずっとドゥウムはマシな方を選び続けてきた。


でも。


提示された選択に乗るのは最悪手だと。

どちらを選んでも喰われるときは自分から相手に選択肢を突き付けることが活路となるのだと。

そう、男に教わった。


だから、今度こそ、自分は────。


「これでいいか?」


それまで動いていなかった男に、突然くるりと身体を反転されて突き放される。

男が当主の射線に無防備に晒された。

今のドゥウムの腕力や体幹は、そこらの一本線の成人男性にすら容易く抑え込まれる程度しか動けない。

バランスを崩して倒れ込んだ身体を支えるため咄嗟に体重をかけた後足。

深く傷ついた下半身は無理な負担にビキリと悲鳴を上げ、ドゥウムが激痛を堪えて体勢を戻すまでに一瞬の隙を作った。


容赦なく魔法が射出される。

男が咄嗟に張った防壁は即座に破られた。

攻撃が届く寸前で男にドゥウムの渾身の体当たりが届くも、辛うじて躱したその位置に追撃を何回も撃ち込まれた。


液体が噴き出し、どさりと人が倒れる音がした。

濃厚な血の匂い。

……男から、生きている気配が、完全に途絶えている。

かつて自分が多くの戦場で作り上げてきた、死の気配。

『あのとき』の弟たちの肉体と、同じ感覚。

数分前までドゥウムを愛していると言っていた男は、完全に頭を潰され、死んでいた。


身を挺して男を庇ったはずのドゥウムには、一切傷がなかった。

当主の魔法操作は、極めて優れていたようだった。




気づけば温かい血溜まりの中にへたり込んで、男の頭を抱いていた。

手のひらと頬に触れる割られた頭蓋骨。男の髪を濡らし、ドゥウムの腕を伝って流れ落ちる血と脳漿。

もう全身血塗れだった。男だったモノに浸されている感触がやけに鮮明に脳に突き刺さった。


なにも、考えられなかった。


絨毯と擦れるだけの靴音を立てて近づいてくる『旦那様』と視線を合わせるよう、反射的に顔を上に向ける。

煮えたった憤怒と憎悪。

不穏な気配と冷徹な声が部屋に響き、よく躾けられた肢体が勝手にビクリと震えた。

従わなければならない、という衝動に突き動かされた。


「薬だ。早く飲め。」


手の中で軽い音を立ててぶつかり合う錠剤。

血濡れた手の上で転がしていると、感情はまだ無風状態だが徐々に思考力だけは戻ってきた。


渡された3粒はすべて種類が違った。はたしてこれは鎮静剤か、洗脳用か、アフターピルか、催淫剤か、それとも。

………まぁ、何だろうが自分には関係ない。


命じられたこと全て、受け入れるほかないのだから。

命じられていないことは、なにもしてはならないのだから。




大粒の錠剤をナイトテーブルに常備された水で飲み下す。

『旦那様』に少し前に検分していただいて洗われたばかりの身体を、もう一度洗浄された。

数十分も経たないうちに意識がぼやけ、身体が火照りはじめる。


床に死体となって転がっている男に数ヶ月前外されたきりだった鎖や枷、繊細な腕輪や緻密に織り込まれたレースが、『旦那様』の手でドゥウムの身体のあちこちに乱暴に取り付けられる。

手を煩わせてしまって申し訳ないな、と思った。

魔法医たちが入ってきて手際よく点滴や呪いを施されるのを他人事のように感じていた。


次に目覚めたとき、彼のことを少しでも覚えていたらいい。

洗脳も精神操作の魔法もいくらでもできることを、ドゥウムは知っている。

この一年の出来事の痕跡は、きっとこれから喪われてしまうのだろう。


「阿婆擦れの罪人が。…一生こうして償っていろ。」


もうこの世のどこにもいない彼とそっくりな『旦那様』に、そう吐き捨てられた。






揺蕩うような意識でぼんやりと横たわっていると、あっという間に時間経過がわからなくなってしまう。

あれから何時間、あるいは何日経ったのか。

まだ、彼のことは覚えている。…はず、だ。


覚えのある男たちが部屋に入って、ベッドに横たわるドゥウムに手を伸ばしてきた。

いつも同じ顔ぶれの、身分の高そうな男たち。

意識はあるのに、身体が全く動かない。全身が火照っていつもより敏感になっていた。

これから何が始まるかは、よく知っている。

毎回次の家に渡される前に行われる、拘束と封印の調整と『検分』だった。


談笑。嘲笑。強い支配欲と征服欲の気配。

一番『旦那様』に好まれる笑い方になるよう、ゆっくりと口角を上げた。





イノセント・ゼロの───お父様の娘であるドゥウムが胎として孕まされ、その肌を凌辱されるのは、当然のことだ。

当然の扱いなはずなのに、はじめてのときからずっと、いやだなぁ、と感じていた。


でも今はなぜだか、全く嫌悪感がなかった。

全身を這い回る指に与えられる性感を、うっとりと甘受した。


下着を脱がされ、あるいは服の隙間を広げられて、肌を嬲られる。

なんて、気持ち、いい。


使用人たちが酒や軽食を運んできた。

くったりと無抵抗な脚を大きく開かされ、完全に発情して淫液をタラタラ溢す秘所を晒された。

ヒクヒクと惨めに精液を強請る淫乱なその姿。

貞淑とはほど遠い娼婦の証に、一気に男たちが盛り上がった。


鳥篭のような狭い部屋に本来想定されていない人数が入り、熱気と男たちの低い笑い声で埋め尽くされる。


何本もの太い腕で拘束され、甘い声で鳴き、ナカを貫かれる。



次に意識を取り戻したらきっと次の屋敷への馬車の中だ。

着いたらまた、使えるかどうかの『検分』を受けて新たに種付けされることになる。



この日々は、おそらく今後一生続くのだろう。


前後の穴をみっちりと埋めて揺さぶられる。

胸を乱暴にわし掴みにされ、吸いつかれ、出はじめたばかりの母乳を飲まれる。

手で、髪で、脚で、頬で、自慰をされる。

無価値な自分とは全く違う貴い人間たちに貪られるのが心地よくて、蕩けた顔で微笑んだ。










麻痺して歪んだ心の端。

ひび割れた感情で、もうありえない未来を想った。


本当は、彼がよかった。

触れられるなら。子を孕むなら。容姿や具合を讃えられるなら。




……彼一人が、よかった。







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あねじゃ

自分にえっちなことをしようとする男によわよわになる心因性デバフがかかっている

自尊心ぼろぼろだけどまだ現実はちゃんと認識できてた時代

めっちゃ弱体化してるけど感知能力や戦闘センスは健在

今回真っ当な恋愛や遮断されてた部分の教養を知って危険域を脱したメンタルを全力でオーバーキルされた


おとこ

魔力が少ないから幼少期から役立たず扱いされてた

受け答えふわふわの姉者とパーフェクトコミュニケーションした、わりと元気になった姉者との議論についていけた、などだいぶすごい

姉者にえっちなことしたら駆け落ちokされそうだな…とアイデアクリティカル叩き出して、でも姉者が傷ついた結果なのわかっちゃってやっぱ無理だった

血縁者はみんなきらい、愚かなのに無駄に強くて逆らえないから


とうしゅ

まだ10代 親が数年前に死んで兄が天才で学友とは打算多めの付き合いでだれも自分を見てくれなくて拗らせた

兄に当たりがキツいのは嫉妬も多い

姉者借りられたのは親の友人の紹介。いい娘紹介しようとかやったのに断られ続けたから今回は変わり種あげよ的なノリ

兄を殺してしまったのでこのまま闇堕ちキャンセルがかからないままだと手遅れになる







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