メロメロの実を食べてしまったコルサさんの話Part2

メロメロの実を食べてしまったコルサさんの話Part2


某海賊漫画ネタ。


くさタイプをこよなく愛するジムリーダーで芸術家のコルサは、現在非常に虫の居所が悪かった。それもこれも全て、目の前に偉そうに座る男の所為だ。


由緒正しき貴族の末裔だというこの壮年の男は、パルデア地方有数の富豪で名家の現当主でもある。確かに身に着けている装飾品はどれも高級そうだが、自身の財力をひけらかしているかのようでセンスがあるとはとても言い難くーコルサから言わせればただ「下品」であった。事実男からはどこかこちらを見下す雰囲気が伝わってくる。


「一体何がご不満なのですかな?我が家は歴史も長い由緒ある名門貴族の家系です。貴方にとっても、芸術家としてのキャリアと更なる名声を積めるいい機会と思いますが。」

「…ワタシは自分が作りたいと思うモノを作る。人から指示されて何かを作る事は今までもこれからもない。そういう訳なのでお引き取り頂きたい。」


この当主はアポも取らずいきなりジムにやって来ては、家の栄光と名誉を表す作品を作ってくれと依頼してきたのだ。男はコルサの芸術性を理解している訳ではなく、ただ家名に箔を付けたい、有名な芸術家を金で囲い自らの地位を誇示したいだけ。それが分かっているからこそ余計にコルサを苛つかせた。こんな下らないやり取りに無駄な時間を費やすより、制作や手持ちのポケモン達の手入れをしたいのに。それが伝わったのか、腰に携えたモンスターボールがカタカタと揺れている。


「…ああ、それとも提示額が不足でしたかな?これは失礼。ジムリーダーもされているという事なので、ご生活には余裕があるのだと思っておりました。」


それを聞いた瞬間、コルサの中でプツンと何かが切れる音がした。

彼はゆっくり顔を上げると、おもむろに前髪をかきあげはぁ、と薄い唇から吐息をもらす。ソファーから立ち上がると優雅な動作で白くしなやかな指を男の顎にかけ、くいと持ち上げた。目を細め妖艶にほほ笑む。そのあでやかな動きと色気に男が思わず息を止めるとー


「メロメロ突風(リーゼ)」

一瞬で男の体が石化した。


自身に魅了されたものを石化するメロメロの実の能力を、芸術家で表現者のコルサは使いこなしていた。苛立ちのままに石像と化した男を砕き割ってやりたいところだが、流石に地方の有力者を抹消する訳にもいかないのですんでのところで耐えた。


「…最初に忠告した時点で引き下がれば良かったものを。キサマのような品性の欠片もない者などワタシの芸術の養分にはこれっぽっちもなりはしないが…まあその小うるさい口を塞げたので良しとしよう。これに懲りたら二度とワタシの前に姿を見せるな。」


男がその後どうやって元に戻ったのかは謎であるが、芸術家・コルサの色気に完璧にノックアウトされた富豪の男は多額の出資を申し出る代わりに「またあの時のように見下ろして欲しい」と土下座せんばかりの勢いで懇願に現れ、警察のお世話になったことですっかり権威を失ったと噂になっている。

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