メリーさんの甘々吐息囁き責め
それは、今日のようなじっとりとした熱帯夜の事だった。
寝るには些か早く、しかし遊びに出るにはもう遅い時間帯。やるべき事も特になく、ダラダラとネットサーフィンをしていると突然携帯に電話がかかってきた。液晶を確認すると「非通知」の文字。こんな時間にイタズラ電話か?だがこんな独り身の男にかけるなんてお互い運がない、せいぜいからかってネタにしてやろう。そう思って男が電話に出ると。
「……はぁー……♡もしもぉし♡私、メリーさん♡ふぅー……♡今駅にいるの♡」
可愛らしく囁く女の子の声と、それに似つかわしくない熱っぽい吐息。耳朶を擽るその響きに、思わず体が震えてしまう。
「これからぁ♡ふぅー……♡貴方のお耳を♡たーっぷり気持ち良くしてあげる♡ほぉー……♡次にかけるまでに♡んはぁー……♡イヤホンを用意してね♡」
そう言い残すと、かけてきた時と同じく唐突に切れてしまった。
一体今のは何だったのか?イタズラ電話にしてはあまりにも熱のこもった声だ。では何故こんな事を?
訳は分からないが、またかけてくるというのであればその時に聞けば良い。携帯電話にイヤホンをBluetoothで接続し、再び電話が来るのを待つ。
果たして3分後。
「もしもぉし♡私メリーさん♡今バス停にいるの♡」
非通知の電話はかかってきた。一体何の目的でこんな電話を、そう聞こうとするが、
「あ♡ちゃぁんとイヤホン用意してくれたんだ♡偉い偉い♡ご褒美に……ふぅー……♡」
イヤホン越しに両の耳を吐息がもて遊ぶ。まるで直にかけられているかの様な熱っぽさが、頭の中を溶かしていく。
「それじゃあ今から、たーっぷり♡貴方の大好きな吐息で、気持ち良くなってね♡はぁー……♡」
そして、長く短い夜が始まる。
「はぁー……♡右から柔らかく包む息……♡」
「ふぅー……♡左から細く長い息♡」
「んはぁー……♡あったかぁい息をかけられて♡」
「おほぉー……♡お耳がどんどん弱くなっちゃう♡」
イヤホン越しに暖かい息を吐きかけられる感触があまりにリアルで、その心地よさに体の力が抜けていく。ただ耳元で囁かれる、それだけの事がこれほど気持ちいいとは。
「うふふ♡もうすっかりとろとろになっちゃったね♡」
「でーも、まだ我慢♡楽しみは最後まで取っておかないとね♡」
そう言い残し、再び電話が切れる。後に残されたのは脳に渦巻く熱っぽい快感。早く、早く続きを味わいたい。
いつのまにか仰向けで倒れた体をもぞもぞと動かしていると、3度目の着信音が鳴り響く。
「もしもぉし♡私メリーさん♡今貴方の家の前にいるの♡」
通話ボタンを押した覚えはない。ひとりでに通話が行われている異常に、しかし脳は考えが及ばない。
「今からぁ♡貴方のお部屋にお邪魔して♡たーっくさんイイことしてあげる♡どんな風にされたい?なーんでも……♡好きなこと……♡してあげていいよ……♡」
「お耳を直にふーってするのも♡ちゅっちゅ〜って口付けするのも♡おちんちんシコシコってするのも♡」
「どんな風にいじめて欲しいかな?」
「ほら、頭の中に思い浮かべて……♡」
見ず知らずの電話相手に、体を隅々まで弄ばれる想像がとめどなく湧き上がる。竿は既に固く勃ち上がり、甘美な刺激を今か今かと待ち侘びている。
そして。
「もしも〜し♡」
「私達メリーさん♡」
「今貴方の隣にいるの♡」
「足元にもいま〜す♡」
気がつけば、西洋人形の様に整った顔立ちの女の子達が取り囲んでいた。
体を挟む様に添い寝する2人。腹の上に跨る様に座る1人。そして姿は見えないが股ぐらにも1人。その全てがまるでコピー機にかけたかの様に同じ見た目をしている。
「うふふ♡待たせてごめんね?」
「もう電話越しじゃ物足りないよね♡」
「ここからは直接♡弄ってあげるからね♡」
彼女達は一体なんなのか。得体の知れない恐怖に駆られたのも一瞬、これまでとは比較にならない快楽が襲いかかってきた。
「ふぅー……♡ちゅっ♡ちゅう♡ふーっ……♡」
「あむ♡じゅるじゅる♡れぇろ♡じゅるるる♡」
「うわ〜、乳首もコリコリに固くなってる♡くりくりされるの気持ちいい〜?」
「おちんちんからおつゆとろとろ〜って出てきてるよ♡もっとシコシコしてあげるね♡」
しなやかな手が竿を扱いて欲を高め、柔らかな指先が体を踊り心を虜にする。火傷しそうなほどの熱い吐息が耳を伝い脳を溶かし、凍てつきそうなほどの冷えた舌が掻き回す錯覚を覚えさせる。
4者4様の言葉と音が、一斉に耳から脳へと響き渡る。まるで全員が耳元でそれぞれ囁いているかの様な不思議な感覚に、頭を掻き回され快楽の渦へと沈められていく。
「あれ?おちんちんビクビクしてるよ♡」
「もう我慢出来ないのかな〜?」
「良いよ♡いっぱいびゅ〜って出して気持ち良くなろうね♡」
「だーめ♡もっと我慢して♡良い子はいっぱい我慢出来るよね♡」
「出ーせ♡」
「出すな♡」
「イっちゃえ♡」「イくな♡」「イけ♡」「イかないで♡」
早まる手つき、強まる刺激。相反する命令を交互にぶつけられ、思考すらも奪われた後に残るのは弾けるような快楽。
「きゃっ♡」
目の前が真っ白になる感覚と同時に、大量の精を吐き出して果ててしまった。
「あ〜あ、出しちゃった♡」
「いっぱい出せたね♡えらいえらい♡」
「でも、私達はまだ満足してないの♡」
「これからずーっと相手してくれるよね♡」
「そう、ずーっと、いつまでも……♡」
射精直後のぐったりした頭を動かすと、周りに佇む同じ顔をした大量の少女達。そのどれもが淫靡な笑みを浮かべ、こちらを見下ろしている。
「さあ、続きを始めましょう……♡」
少女達が身を屈め、一斉に手を伸ばして来た所で男の意識は闇へと落ちていった。
「……うん、取り敢えず台本の案としてはこんなもんかな。後はあいつに投げて色々膨らませてもらうか。ん?こんな時間に電話?誰だろ……もしもーし?」