メタルヒーロー キングアルファ
2023/03/19第一話「メタルのヒーロー参上!」
「知っているか? どんな物にも、魂が宿っているんだぞ。だから、長く大切に使ってやればきっといつか役に立つんだよ」
これは、死んだ祖父が口癖のように言っていた言葉だった。だから、昔のおもちゃを大事に何度も直して使ってきた。それが、こんな形で役に立つなんて……!
「もう、大丈夫だよ圭一君。これからは、僕が君を助けるから!」
西暦220X年。世界の技術は過去の人間が予想もしない程の発展を見せた。町中には空を飛ぶ車やスケードボード。あらゆる決済が電子端末のタッチ一つで済む。誰もが小さいコンピューターを持ってそれで会話する。
中でも、一番の発展を見せたのはロボットであった。工事に、配達に、警備にと、もはやロボットが絡まない職種など無いほどだった。無論、それで割を食らわない人間たちがいないわけなく……。
ここは、池田工務店という名前の寂れた工務店である。ここに、一人の少年が住んでいた。
「おーい、圭一君!」
「ん? なんだよ?」
作業場で、機械いじりをしている池田工務店と書かれたタオルを頭に巻いた少年がいた。
「うちの炊飯器が壊れちまったんだよ。直してくれないかい?」
「あー、いーっすよ」
「わりーね。この炊飯器もう10年も使ってるからさあ」
「ま、こういう旧時代の電化製品は修理すれば長く使えるモンなんですよおばあさん。あー、ここが悪いのか。この部品を取り替えれば、まだ使えそうですね」
ドライバーやニッパーなどを使い、器用に部品を取り替える圭一と呼ばれた少年。
「しかしまあ、圭一君も大変だねえ。お仕事がなかなか取れないんでしょ? だから、あたし達のこういうモノの修理とかも、圭一君がやっているんだもんねえ。こういうことをやれている圭一君なら、将来実家を継がなくても大丈夫だと思うんだけどねえ」
「いや。俺みたいのができることなんて、ほとんどが都市部でロボットに代わられていることっすよ。そういう所に頼めるなら、都心に行ける人間っすよ」
「そうだねえ……あたしらみたいな人間は、こういう下町で旧時代の暮らしをするしかないもんねえ」
220X年、貧富の格差は極限まで高まっていた。ロボットや最新テクノロジーに預かれる人間達は、ごくわずかで都市部に住む人間や金持ち以外いない。それ以外の人間は、寂れた土地で2000年代前半の暮らしをするしかないのだった。
池田圭一(いけだけいいち)。彼もまた、そんな寂れた暮らしをする人間だった。彼の父親が営む池田工務店は、前時代的な工具や重機しか無く、基本的に仕事が下町の建物修理や解体工事ぐらいしかなかった。最も、下町の古くなった建物は放置されるのが基本なため、その仕事もたまにしか来ない。最新テクノロジーの都市部での仕事なんか滅多に来ない。故に、こういった機械修理などで細々と生活していたのだった。
「ほら、直った。これでまたご飯が炊けるようになるっすよ」
「ありがとうねえ。こういうこと頼めるの、近場じゃここぐらいだもの。都市部じゃやってくれないしねえ」
「だろうなあ。旧式の電化製品なんて、都市部に持って行けば『何ソレ、化石!?』なーんて言われるのがオチっすからねえ。あ、料金は1000円っす」
「はいよ。それじゃ、頑張ってね~」
炊飯器を修理して、料金をもらえばまた機械いじりに戻る。
「ここをこうして……ここの配線をつなげれば……」
「よぉっ、まーた廃材集めて機械いじり?」
いきなり後ろから声をかけられたことで、手が滑って配線をちぎりそうになる。
「おおっ……っとぉ! あぶねーあぶねー! せっかくここまでできたって言うのに! 誰だ!?」
「アタシだよアタシ」
工務店の前にいたのは、圭一と同じくタオルを頭に巻いた女の子だった。
「舞那美(まなみ)? 今日はバイト休みか?」
「あったりー。やっぱさー、ロボットって高いんだよなー。人間がやるのが安く済むから、人間の需要があるんだよねー」
「確か都市部での出前のバイトだろ? チャリあればできるからいーよなー」
「テイクアウトって言ってよ。それに、都市部のバイトでタイヤのある自転車使っているのなんて、アタシぐらいだしねー。だから暇なの」
「ったく……お前なら都市部やってけるっていうのに、なーんでこんなとこいるんだか……」
彼女の名前は中宮舞那美(なかみやまなみ)。都市部で活躍できるという実力を持ちながら、なぜか寂れた下町にいるという少女。聞いた話では、自分の将来に疑問を持ち、夏休み前に高校を中退し実家を飛び出したらしい。
「ところで、何修理してんの?」
「何って、コイツだよ」
圭一が舞那美に見せたのは、おもちゃのロボットだった。その特徴は後ろに突き出た髪の毛のような頭部パーツと、顔面にある2対の線、白と青を基調としたスタイルだった。
「何ソレ? おもちゃ?」
「ああ、昔買った『メタルヒーロー キングアルファ』っておもちゃのロボだよ。この腕につけるラジコンで動かすんだ」
「でも、かなり年季入っているみたいね」
「そうなんだよ。長年遊んでるから、よく壊れるんだよ」
「壊れやすいんなら直してどうすんのさ? 新造でもするわけ?」
「んな金ねえよ」
「じゃあなんで直してるの?」
「……これさ、じいちゃんとの思い出なんだよ」
「おじいちゃんと?」
圭一はうなずく。
「昔、俺が小さかった頃、都市部にじいちゃんと遊びに行ったんだよ。じいちゃんは俺に何か買いたかったけれど、どれもこれも高くてさあ、俺がほしがるようなもの一個も買えなかったんだ。そんなのいらないって言ったけれど、じいちゃんはどうしてもってきかなかったんだ。そしたら、廃棄処分品だったこれに目が行って、一目惚れしたんだ。これなら買えたんだよ」
「それから?」
「案の定ゴミとして捨てられるものだったから、すぐ壊れるんだ。すると、その度にじいちゃんが直してくれてさ……言うんだ。『知っているか? どんな物にも、魂が宿っているんだぞ。だから、長く大切に使ってやればきっといつか役に立つんだよ』ってな」
「……」
「俺はそれを聞いて思ったね。そうだ。このおもちゃにも愛着を持っていれば、じいちゃんみたいに最後まで役目を果たしてくれるかもしれない。そう思って俺は大事にしてやろうと思ったのさ」
「へー……意外とロマンチストなんだねえ」
「うるせぇっ!」
圭一は照れ臭そうに笑った。
「でさ、じいちゃんは最後に修理した後、死んじゃってさ。それ以来俺が直しているんだ」
「そっかぁ……」
「でもなあ、ここまで直せたのはいいんだけど、足りないパーツがあってな。この部品が重要なんだよ。なんとかスクラップ置き場で探そうと思って漁っても出てこねえんだ」
「それってかなりヤバいんじゃない……?」
「ああ。だから困ってるんだわ」
「ふーん……そうだ! 都市部に行ってみない?」
「なんで?」
「都市部なら、裏路地のジャンクショップに置いてあるかも!」
「なるほど、いい考えだ。俺の金が無いってことを除けばな」
「お金貸してあげるよ!」
圭一の言葉をさえぎり、彼女は満面の笑みを向けた。 「いやいいよ。悪いって。そもそも俺都市部にあんまり生きたくねーし……」
「いいのいいの! 私が好きでやってんだからさー、そんなこと気にしないでよー!」
圭一の手を引っ張りながら、店を出る彼女に、圭一は振り回されていた。
「ちょっと待ってくれ! アイツ持って行かねえと合うかどうかわかんねーだろ!」
都市部。過去の人間が思い描いたような最新テクノロジーで発展した町。そんな所に旧式の電車でやってきた二人。古いホームから出てきて、サイバーシティという言葉が似合う、東京23区の町並み。
「相変わらず、見慣れない町並みだな」
圭一がそう言う。周りからさげすむような声が聞こえてくる。
「下町の人間だ……」
「200年前の人間がこんな所にいるぞ……」
そして、サイバースーツの人間に、空き缶やらを投げられたりする二人。圭一と舞那美は辟易する。
「下町の人間は、都市部に入っただけで物を投げられる。これだから都会ってヤツは。だか来たくなかったんだよ」
「そうだね」
都市部の人間が下町の人間をいじめる。そんな事はいつもの事なのだ。辟易する二人は、早速裏通りのジャンクショップへ入った。怪しい中国人っぽい店主がいる、アングラな店だ。
「舞那美ちゃん、久しぶりだね~」
「おやっさん、相変わらずこういう所でしか仕事できてないのね~」
「私みたいなのは、都市部の人間には嫌われているからねえ」
「ま、世間話はともかく。圭一君、アレ見せて」
圭一はポシェットの中からおもちゃを店主に見せた。
「おお! こりゃあ懐かしいねぇ~。どうしたんだい舞那美ちゃんたち?」
「あの、ここのパーツが足りないんですけど、ありますか?」
「んー……あぁ、あるよ。ちょっと待ってくれ……ホレ、これだろ?」
おもちゃの背中に取り付ける、金属部品を見せてくれた。
「いくらですか?」
「ま、廃棄処分品の物だしざっと1000円くらいかな」 ((安い!))
「じゃあそれでお願いします」
「毎度あり~」
二人は部品を買って、裏の組み立て場で取り付けた。すると、動くようになった。
「動いた……!」
「やったね! これで遊べるね!」
二人は喜んだ。
「さて、帰るか」
「ね、ねえちょっと……」
「なんだよ?」
「せっかく都市部に来たんだしさあ、喫茶店とか寄ってかない?」
「何しに?」
「……じゃあいいや、早く帰ってそのロボットで遊んでれば?」
「なんだよ、いきなり冷たくなりやがって」
急に態度が変わり、機嫌が悪くなる彼女に対して、戸惑いながらも、
「悪かったよ。今日はお前と遊ぶから許してくれよな」
と言う圭一に対し、そっぽを向いたままの彼女。その直後、突然、大きな地震が起こった。
「きゃあっ!」
「うおっ!?」
そして、彼らのいる場所の向こう。デパートの方から、巨大な重機ロボットが現れた。巨大ロボが街を破壊し始めたのだ。
「なんだありゃあ!? ロボットの暴走!? 都市部のロボットは絶対安全じゃなかったのか!?」
「みんな逃げろー!!」
逃げ惑う人々の中で、二人だけが逆方向へ走ろうとしていた。彼らだけでは無い。この場にいる全ての人々が、あの巨大なロボから避難しようと必死だったのだ。 しかし、二人は知らなかった。今彼らが逃げようとしている方向こそ、ロボットの方へ向かってしまうことになっていることを。彼らは知る由も無かったのだ。だが彼らにそのことを気にかける余裕など無い。ただひたすら自分の事だけを考えていた。またしても、揺れが起きた。それで、二人は転んでしまう。
「いてて……大丈夫か、舞那美!?」
「……うん、なんとか。痛っ!」
だが、彼女は転ぶ際に足を痛めてしまったようだった。すぐに立ち上がることは難しそうだ。
「ううっ、これじゃあ……」
「舞那美、俺がおぶってやる! 背中に乗れ!」
そう言って彼は、彼女の腕を肩に回し、おぶる体制になった。
「いいの? 私重いかもしんないのに」
「んなわけあるか。いいから乗れって! 急いで逃げるんだよ!!」
そう言われたので仕方なく乗ることにした。その時だった。再び揺れが起き、なんとデパートの上に先ほどの巨大ロボがいた。
「嘘っ!?」
「うわああっ!!??」
驚いてる暇はない。巨大ロボの腕が振り下ろされたのだ。このままでは二人の命がない。
(チクショウチクショウ、これで終わりなのかよ……! こんな……こんな終わり方なんて……)
「チクショーッ!」
大声で叫んだが、誰も来ない。無情に振り下ろされた腕。もはや、助かる方法などなかった。かに思われたが!
「な、なんだ!?」
突如、まばゆい光が発生しその、二人はそれに包まれた。それでもかまわず重機ロボットの腕は振り下ろされた。
暗闇の中、圭一は考えていた。
(俺……死んだのかな? 舞那美と一緒に……となると、ここは死後の世界? 俺はさっき、巨大ロボの腕に潰されて……ぺちゃんこになって……アレ? 痛くねえぞ……? てっきり真っ平らになってるかと思ったら、舞那美も無事だ!? どうなってんだ!?)
目を開けてみると、目前に巨大ロボの腕らしき部分があった。だが、それは圭一より2m以上高い場所で止まっていた。
「なっ」
いきなりの急展開に、驚く圭一。舞那美は気絶していた。そして、自分の後ろを振り向くと、そこにいたのは……。
「メタルヒーロー キングアルファ!?」
自分たちより大きい、多分3mはあるであろうおもちゃのメタルヒーロー キングアルファが、片手で巨大ロボの腕を受け止めていたのだ。
「おいおいおい!?」
さらに腕を振るい、巨大ロボの腕を弾き飛ばした後、蹴り上げて吹っ飛ばした! これには驚きしかなかった。
「ええ……?」
困惑する間もなく、キングアルファが自分たちの前に降り立った。すると今度は別の声が響いてくる。
〈圭一君、今まで僕を大切にしてくれてありがとう〉
「しゃ、喋った~!?」
「ぷふぁっ!」
驚いた圭一の声に驚いて、背中の舞那美も起きた。
「……えっ?」
舞那美はまだ状況が理解できていなかった。それも当然だろう。
突然現れたロボットが自分の目の前に立っていて、しかもそのロボットが自分に向かって話しかけてきたのだから。混乱している彼女を置いてけぼりにして話は続く。
ロボットの胸には、赤い字で大きく"KING ALPHA"と書かれていた。そして、彼はこう名乗った。
〈初めまして、僕はキングアルファ。圭一くんが直してくれたロボットさ、よろしくね。それと、僕のことは気軽にアルと呼んでくれて構わないよ。ちなみに、マイダーリンでも可!〉
そんなことを言いながら、ウインクをするキングアルファ。しかし、二人には彼の言っていることがよくわからなかった。
すると、腕を吹っ飛ばされた巨大ロボが、二人の方に向かおうとしていた。それを見たキングアルファは、二人を庇うように前に出た。
そして、胸の装甲を開くと、そこから武器を取り出した。それは、巨大なバズーカであった。そしてそのバズーカを、巨大ロボに向けて構えた。
すると、その銃口から光弾がチャージされ始めた。それを見て、何かとんでもないことが起ころうとしているのがわかった。だが、キングアルファは。
〈もう、大丈夫だよ圭一君。これからは、僕が君を助けるから!〉
そう言って、引き金を引いた。その瞬間、凄まじい轟音と共に、眩しい光が放たれ、巨大ロボは跡形もなく消し飛んだ。
あまりの出来事に、呆然とする二人だったが、やがて我に返ると、キングアルファの元へ駆け寄った。
そして、二人は同時に言った。
「すげぇ! 本当に助けてくれた! マジでヒーローじゃん!!」そう言って、興奮した様子でキングアルファの周りをぐるりと回る圭一。それを微笑ましく見ている舞那美。
だが、すぐに冷静になると、ある疑問を抱いた。一体なぜ、彼は自分を救ってくれたのか? このロボットは、いったい何者なのか? それを聞こうとすると、またもや頭に声が響く。
〈詳しい説明は、君の家でしようか。とりあえず今は、ここから離れよう〉
そう言われ、キングアルファは二人を抱え、空を飛んで移動し始めた。
***
その後、無事に池田工務店に到着した三人は、作業場で向かい合っていた。早速キングアルファは、自分のことを語り始めた。
〈さて、改めて自己紹介をさせてもらうよ。僕はキングアルファ、見ての通りおもちゃのロボットだ。僕は、君が子供の頃に買ったものなんだよ。といっても、ただのおもちゃじゃない。僕は、特別製でね。心臓部に使われているテクノメタルと呼ばれる特殊な金属で作られている。そして、僕を作った人は……〉
「作った人? それって誰なの?」
〈ああ、ごめんね。実は僕も、よくわからないんだ〉
「えっ?」
〈僕が作られた時の記憶はないんだ。気がついたら、あの倉庫の中にいた。そして古いおもちゃだからって廃棄処分されそうになっていたんだ〉
「そんな……酷い」
〈まあまあ、気にしないで。それで、その時に偶然僕を見つけて、買ってくれたのが君だよ〉
「そうなのか……」
そして、キングアルファは語り始める。名前はキングアルファであること。そして彼が、圭一に直されたこと。ロボットとは思えないほどに高度な人工知能を搭載していること。つまり、彼は人間と同じ知能を持っているということだ。他にもいろいろ聞きたいことがあったが、まず一番気になることを聞いてみた。
「お前って……ホントにロボットなんだよな?」
すると、答えはすぐに帰ってきた。
〈ああ、僕はロボットだ。だけど、僕は特別製だから普通のとはちょっと違うんだよねー。例えば――〉
そう言いながら、小さくなったキングアルファ。3mくらいの大きさから圭一達が見慣れていた、おもちゃのサイズになった。それから続けて言う。
〈――こういうこととかね♪〉
そう言ったかと思うと、いきなり圭一達と同じサイズになって空中浮遊をして見せた。驚く二人を見て笑いながら続ける。
〈こうやって飛べるってことは、君たちと同じように喋れるってことさ。まあ、他のロボットとは違ってちょっと特殊だから、そこまで気にしなくていいよん♪〉
圭一は心の中で(気にするわ!)と思ったが、口にはしなかった。 しかし、そんなことよりもさらに気になることがあったためである。それは、先ほどの戦いで現れた巨大重機ロボである。
「さっきのデカブツは何なんだ?」
その問いにキングアルファは答える。
〈あれは……わかんない〉
わからないという言葉に驚いた。あの暴走した重機ロボについて何も分かっていないらしい。だが、キングアルファは続けて言う。
〈でも、アレは確実に敵だよ〉
「何でわかるんだよ?」
〈だって、あんなことするようなヤツ、敵以外のなんだって言うのさ?〉
「いやいやいや! いくらなんでも飛躍しすぎだろ!? 大体、なんでそう思うんだよ?」
〈だってさー、さっき戦ってた時に気づいたけど、あの機械から変な音が聞こえてなかったかい?〉
「そんな余裕なかったわ!」
〈じゃあ、聞いてみる?〉
「どうやって……?」
〈これを使えば簡単さ〉
そう言い、胸の中からスピーカーのようなものを取り出した。
「それがあるなら早く言ってくれよ!」
というツッコミを入れる圭一の声に反応することなく、突然、そのスピーカーから音声が流れ始めた。それは、テレビの砂嵐のような音だった。ただのノイズだと二人は思ったが、そのノイズに混じって言葉が聞こえた。『ハ カ イ セ ヨ』ノイズの中から、そんな言葉が延々聞こえてきた。
「……ねえ」
「……マジか?」
「ああ、マジで大マジみたいだぞ……」
「……」
「…………」
それを聞き終わると同時に、二人が出した行動は速かった。 圭一はすぐさま取っておいた新聞を取り出して調べ物をする。
「やっぱりな……!」
そう言って、新聞の一面を圭一は見せながら言った。 そこに映っていたのは、あるニュースの記事だった。【突如としてロボット達が一斉に暴走を始め、工場が破壊された】というニュースの記事。
「多分だけど、関係あることだよな……」
「かもね」
その時、つけっぱなしのラジオから番組が流れてきた。どうやら始まったばかりのようだ。
『今日未明、東京で原因不明の爆発事故が発生しました。幸いにも死者はいないようですが、重症者が多数います』
『詳しいことはわかっていませんが、おそらく何かしらの攻撃を受けたのではないかと警察では推測しています』
「ロボのこと……何も話さなかったな」
「それだけじゃない気がするけどね」
『現在判明していることとしては、現場に残されていた文字には何らかの暗号が書かれているとのことなので解析中です。何かわかったらすぐにお伝えします』
「このニュース……なんか嫌な予感がする……」
「ああ……」
舞那美と圭一の二人は、押し黙ってしまう。そんなときだった。
〈だいじょーぶっ! 僕がいるから安心だよ♪〉
キングアルファが、おどけた口調で二人に語った。
「お前は気楽だな」
〈そりゃ、僕ってばロボットだからね~♪ あんなヤツら、ぜーんぶやっつけちゃうからね~っ♪〉
「お前みたいなロボットが他にもいればいいんだけどなぁ……」
〈え~! そんなことしたら僕のお仕事がなくなっちゃうよぉ~!〉
「わかってるって。冗談だって」
アハハハッと、大きな口を開けて二人は笑った。
〈ちょっとぉ~! 何笑ってるのさぁ!! 僕は真面目に言ってるんだぞっ!〉
「いや、悪い悪い。ただ、お前があまりにも能天気だからおかしくって笑っちまったんだよ」
〈もう~! 二人とも失礼しちゃうんだからぁ~!〉
「わりぃわりぃ」
“プンスカ”という擬音が聞こえてきそうな態度をする彼(?)を見ながら、二人は笑っていた。
一方、ここはどこかの部屋。そこには、椅子に鎮座する何者かがいた。侍の甲を彷彿とさせるデザインで、額と口の部分には『G』の文字があしらわれ、六角形の赤いレンズ、半六角形の銀の角がついた仮面を被り、黒いマントで全身を覆った何者かがモニターを見ていた。そこに映っていたのは、キングアルファだった。
「……フン、やはりか」
何者かは静かに呟いた。そして、彼はこう続けた。
「――計画実行の邪魔になる者は潰す」
そう言い残した後、モニターの電源を切り、その場を後にした。
第一話。終わり。