メタセコイアのつぶやき
メタセコイア「人間の形を得たし、人間の真似をしてみるか。とりあえず家をつくり、田畑を耕そう」
「笛でも吹いてみるか」
「歌でも歌ってみよう。舞跳ねてみるのも良いか」
「面を作ってみようか」
「窯を作ろう」
「森がまた増えてきたな。俺以外の守るやつが欲しい。死骸を持ってこよう」
「こんな所に兎がいる。何故海水塗れなんだ、海の生き物ではないのに。傷が痛い?海水が染みているのだろう。傷を治して欲しい? あい、わかった」
「人間は花や草を改造しているな。俺もやってみるか」
「向こうで作っているパンとやらを作ろう。…美味いな」
「人の世界で勝手に物を借用してはいけないようだ。代わりに金銀光り物を置いておけば良いらしい。よく分からないな」
「木の数を数えよう。…少し増えている。抑えを強めなければ」
「神? 誰が? 俺が? 俺は別に神ではないが。祭? 酒はあるのか。なら少しの間だけそちらに行こう。森を押さえ付ける死骸は足りているしな」
「兎や蛙の絵物語が流行っているようだ。人は動物に自分と似た姿をさせるのが好きだな」
「ガラス細工か。とりあえず真似てみるか」
「あっち側みたいな装いが流行っているらしい」
「あの野菜はあんなに実を豊富につけていただろうか。あの糸を吐く虫はあんなにふわふわしていただろうか」
「この辺りも賑やかになってきたな」
「森の近くに住む人間達が死骸を焼き始めた。遠い所から持って来よう」
「あっちでは黒い死で人間がばたばた死んでるな」
「茶が流行っているらしい」
「森がざわめいている。…五月蝿いぞ。静かにしろ」
「海鳥が人間に食い尽くされたようだ」
「また戦か」
「釣りでもするか」
「人か。これを食って早く帰れ。帰り道は右手前のクラックだ」
「クラックが遠い場所に誤って繋がったらしい。あれは…森と生きる羽目になった人間だった何かか。誰も何もしないのなら居ないのと同じだな」
「カレーとやらを作ろう。うん、何をいれても旨いな」
「戦か。死骸を何体か拝借しよう」
「死骸が人と結びついた。そういうこともあるんだな」
「温泉とやらを作ってみたが俺にはあまり意味がないな」
「また何処かの景色か。宇宙から蟲が降ってきている。ここにも降るなら即座に消さなければな」
「人の幼体か。ああ口減しか。…ひもじいか。今ここで楽になりたいか、それとも別の場所で生きたいか?」
「…ん」
「調理道具が充実してきたな。調理方法もだ」
「またクラックが遠い場所に誤って繋がった。…人だったものが果実でさらなる進化をしたらしい。なるほど、森を宇宙の彼方にやるのは賢いな。その方法も有りか。ただこちらではやらなくても良いな。もう十分に抑えが効いている」
「写真か。便利なんだろう」
「奴隷が奴隷を作ったり、廃止したり…忙しい奴等だな」
「死んだか、人。…欲しいのか身体が。勝手に持っていけば良い」
「家具を作ろう。あちらのとこちらの形のを作ろう」
「首を刎ねる道具があちらで出来たらしい。たしかにアレなら斧や剣と違ってし損ねる場合はなくなりそうだ」
「人か。出口なら…何? 王に三日で城を建てろと無理難題を言われて逃げてきた? 今の人間にそれは出来ないだろう。…ふん、戻ったら殺されると。…しかし城か。城は作ったことはないな。…人、城はどこに建てれば良いんだ?」
「全体的に焼け野原だな。派手にやったものだ」
「悪魔? 違うが。 なんでも良いから橋を作って欲しい? 橋は作ったことはないな。…どこに作れば良いんだ?」
「ブリキとやらを使った玩具か。俺も作ってみよう。…やはり俺は絵が苦手らしい」
「糸を紡いでみるか」.
「落武者か。死ぬのか? …腹が減っている、行くあてが無い? じゃあこれを食え。出て行きたくなったら言え」
「家の天井を眺めていたら一月が経過していた」
「何の腹の足しにもならない花々を育ててみよう。何を育てるか。薔薇、菊、百合…」
「菜の花や向日葵は食えるのだったな」
「あっちで本を大量に作れるようになったらしい。幾つか仕入れてみよう」
「あちらの酒もこちらの酒も美味いものだ」
「ついに人間が森を改造しだした。これ以上は増えなくなりそうだ。まあ俺のやることは変わらない」