ミルクバスターズ
【第2章 かえんぐるま】
辛いもののプロフェッショナルといったらアカマツくんしかいない。1-4にバトルが強くて激辛大明神なんてあだ名もついているリーグ部の子がいるのは俺もよく知っている。ちょうどリーグ部も活動時間なはずだ。サバンナエリアのスクエアにいるだろうか。
「あ、いた!アカマツくん!」
「スグリじゃん!それと、友達?」
俺らはそれぞれ名乗ると要件を伝える。アカマツくんにも事情は伏せておいた。他に知ってそうなリーグ部員がいなそうで、良かった
「ブルレクの課題で~辛いサンドイッチ上手くいかなくて・・・すげえ辛いやつ、教えてもらおっかな~て思って」
「なるほどね。いいよ。任せた!・・・・こういう食材なら簡単じゃんね!」
流石食堂の息子。スグリくんとも仲が良いようで、安心感があった。教えてもらった通り、チョリソー、ぺパー、マスタード、食べやすいようにベーコンやレタスを加えてみる。そしてアカマツくんも隠し味に使っているという珍しいスパイスも少し貰ってきた。いい感じのサンドイッチになったのではなかろうか。あとはスグリくんに何かしらの効果があるかどうか・・・
「・・・ん!?」
あれだけの食材でここまで辛くなるものなのだろうか・・・チョリソーだってスパイシーというレベルだ。可能性があるとすればひとつまみ入れたスパイスだ。でなけりゃこんな痛いほど辛いはずない。ほおばる度に汗が止まらない・・・手持ちポケモンの育成で、興味本位でフィラのみをかじった以来の衝撃だ。デーツは表情一つに食べている。どういう味覚をしているんだ。ただ、スグリくんの様子が少しおかしかった。
「スグリ、くん・・・?無理しなくていいからな?めっちゃ辛いな、これ・・・」
「俺は・・・大丈夫。」
大丈夫なわけあるか。額から汗が吹き出し、瞳はもう涙目、時折鼻をすすっている。明らか辛い物が得意なリアクションではない。更に体の様子がおかしくなったら本末転倒である。デーツも様子に気づき声をかけてきた。
「一緒にね、ミルクを飲むと辛さが和らぐんだよ。胃袋のフィルターになるんだって。」
「そうなの?初めて聞いた。買ってねえわ~。でも俺どのみち飲めねえわ・・・腹壊すしな・・・」
物心ついた時から俺はミルクが飲めなかった。体質的に耐性がないらしい。スグリくんがミルクサーバーにされたという話をきいて少しそそったが、混ざれなかった理由一つが友達としての呵責から、もう一つがこの体質だ。残念ながらスグリくんが直々俺に注いでくれることになろうとも、楽しむことは出来ないのだ。
「そっかミルクか、俺は良いとしてスグリにモーモーミルクか何か買ってあげて・・・あ・・・。」
思いついたのは最低だがあまりに効率的なプランだった。あるじゃないか。ミルク。
わざわざ金を払う必要は、ないんじゃないだろうか。
「ミルク・・・・出せるじゃんね・・・どうする?スグリくん。」
もう何でスグリくんが涙目なのか良く分からなくなってきた。辛すぎて?悔しくて?恥ずかしくて?暫く我慢をしていたスグリくんだったが、いよいよ耐えられなくなった。
「あんま、見ないでな・・・?」
すると自らタンクトップをたくし上げ、桃色の乳首を弄り始めた。だいぶ弄られてきたのだろうか、以前看病の時に見た時よりも大きく、少し膨らんできたように見えた。小さな吐息とともにほどなくして母乳が出てきた。本当に目を離したすきの出来事だった。
母乳を止めるはずの実験のつもりが、自ら出す羽目になるという余りに本末転倒な結果に終わった。拍子抜けさに3人とも思わず笑ってしまう。
「これじゃ意味ねえな。」「にへへ・・・失敗だべ。」
「ごめん・・・恥ずかしい結果にしちゃって。」
「気にしなくていんだ。相談したの、俺だから・・・」
「ヤバい、俺も口の中痛くてきっつい!ミルクダメだから・・・俺サイコソーダ買ってくるわ!」
スグリくんの母乳止め珍道中はしばらく続きそうだ。
つづく(かも)
~登場人物~
スグリ:元チャンピオン。止まらない母乳を止める為に奔走。

カカオ:ドーム部員。スグリに協力。例えどんなに辛いものを口にしようとミルクは飲めない

デーツ:不思議ちゃんな美術部1年。母乳ストップ作戦の知恵袋

アカマツ:スペシャルゲスト。ご存知リーグ部四天王。彼の激辛サンドに活路を見出す
