ミョスガルド聖

最近、中枢の方が騒がしい

なんでも天竜人が一人、ドンキホーテ一族に連なるミョスガルド聖が魚人島に向かうらしく、その準備にてんてこ舞いなのだそうだ

事の発端は一年前、あのマリージョア奴隷大脱走事件を引き起こした張本人、太陽の海賊団船長フィッシャー・タイガーが死亡した

それからしばらくして、ある男が新たに王下七武海として招き入れられたのだが、その男というのがタイガーの右腕にして彼亡きあとに太陽の海賊団の船長となった魚人だった

その名も"ジンベエ"、海狭の二つ名を持つジンベエザメの魚人で、魚人空手・柔術の達人でもある操舵スペシャリストだ

人間には少々とげとげしく凶暴な面もあるが、仁義を重んずるその性格から魚人島の島民たちからは親分と呼ばれ親しまれている

…奴の性格上この話は断ると思っていたため、勧誘を受けたと知ったときは少し驚いた

まぁ後にその理由を知り納得もしたのだが

彼が七武海に入った理由は恩赦

ゼフの時にも言った通り、七武海に加入した海賊の仲間には政府より恩赦が与えられる

ジンベエはこの特権を使い、タイガー死亡直後に海軍を襲いそのまま逮捕されたアーロンという魚人を釈放

同時に、例の脱走事件後太陽の海賊団に身を寄せていた元奴隷たちを自由の身にし、魚人島に連れ帰ったそうだ

これを聞きつけたミョスガルド聖は、自ら脱走した奴隷を連れ戻しに魚人島に向かおうとしているのだそうだ

…ハッキリ言おう、私はミョスガルド聖は十中八九命はないと考えている

もとより海底１万mの深海にある魚人島に行く道のりは過酷にして危険

細心の注意を払い、万全の準備を整えようとも目指す船のおよそ７割が消息を絶つと言われる死出の旅だ

仮に運よく３割の確率を引いたとして、向かうのがあのミョスガルド聖では高確率で魚人島にて事故に見せかけ殺害されるのがおち

というのもこのミョスガルド聖、魚人の奴隷をコレクションしていると有名な天竜人だった

そんな人間が魚人島に行って助かるとも到底思えないし、海中で関係者を殺し船を適当な海域で破壊すれば証拠も残らない

事実、魚人島を目指し海底で消息を絶った船は、よっぽど操作願いや確固たる捷夫が鳴ければそのほとんどが海難事故として処理される

多少親族の天竜人がごねる可能性もあるが、何せ相手は深海、海軍ですら無傷で向かうのは難しい

その上魚人島はあいつの縄張りであり、難癖付けて攻めるのもほぼ無理

捜査をしてもそこまで力を入れることはないだろう

まぁ、本人はそんなこと露ともそんなこと考えていないだろうがな

…だが、ともすれば

あの人並外れたお人好しで他者愛の塊みたいな王妃様であれば

そのような人間であっても、受け入れてしまうのだろうか