ミヤコとミユが未知のルートを知るお話

ミヤコとミユが未知のルートを知るお話


夜中の ゲーム開発部の部室。

そこでは小さな影が二つ合い鍵を手に何かを探し回っていた。

 「…えーっと、次の台本は…ここの段に置いてあったよね…?」


 「どうですか、ミユ。見つかりましたか?」

 

 「…こ、こっちの棚にはないみたい…ちょっと、他の所も探してみるね…」

 二つの影…RABBIT小隊のミユとミヤコがゲーム開発部の部室の中で言葉を交わしていた。


どうして彼女達がここにいるのか…それには彼女達が現在携わっている

ゲーム、『アンハッピー・シュガーライフ』が大きく関わっていた。

それはキヴォトス全土を巻き込んだ砂糖事変からしばらく。

あの大事件を教育的ゲームに!とゲーム開発部に依頼され、

 依頼されてゲームを作るという(当時では)なかなかない機会にテンションの上がったゲーム開発部が最初のバージョンを作成、多種多様なシナリオ分岐やCG、

元アビドス生徒まで使った豪華な声優陣等が話題になり、新しいバージョンを売り出す事が決定。ミユやミヤコもアビドス組…アビドス砂漠の砂糖を使用せずに

アビドスに残っていた珍しい生徒だったが、アビドス側で貴重なシラフの人間だった事もありゲーム開発部がゲーム作成のための人員としてスカウトしたのだった。

前よりもかなり多忙になったゲーム開発部だったが、

 かなり生き生きと(時たまゲーム開発中に限界になってゲーセンに逃亡する事もあるが)ゲーム制作に打ち込む姿にユウカが巣立つ娘を見るような目で涙を流すような日々が続いていた…閑話休題。


 (…また次の収録まで時間があるとはいえ、備えておくに越したことはない…

ミユも同じ意見だったのは嬉しかったですが次の原稿は一体どこにあるのでしょう。

合い鍵はいつ使ってもいい…とは言われていましたが早めにここから出るか、

せめて仮眠室で休憩を取らないと明日に差支えますし…)


 彼女達がここに来た目的は一つ、

 現在任されているゲームの声優としての仕事を出来るだけしっかりこなすために

 次の収録用の原稿を探していたのである。

 

 (正直今の仕事は…アビドスにいた時よりもかなり楽しい。

 いつの間にかミレニアムの皆さんも何度もここを行き来する内に

 挨拶したり世間話に花を咲かせる程には打ち解けられて…

 でも、だからこそこの環境に甘えすぎてもいけません。

 私達の仕事はきっちりこなせるように、今のうちに準備しておかなくては…


 「……あ、あううう…」

 

 部室の中でふと今までの事を回想しつつ物思いにふけっていたミヤコ。

 彼女の思考は同じ部隊の仲間のミユの声でひとまず途切れる事となった。


 「おや、どうしましたミユ?こちらは今私が探していますから、

 ミユはスパコンの方を…」

 

  「ち、ちがうの…あの、何でもないから…!」


  どうしたのかとミユの方を振り返るミヤコ。

  振り返った先ではミユが顔を真っ赤にしつつ、

何故か体を乗り出して部室に置かれているスパコンの前で大きく手を広げていた。


 (ミユがここまで動揺を…何があったんでしょう?

 同じ部隊の仲間ですし、ミユが動揺した原因については知っておかななくては…)


苦楽を共にした仲間であり(恥ずかしくて言えていないが)

年の同じ妹のようにも思っている相手が顔を真っ赤にして何かを見せないようにしている姿を見たミヤコ。

 仲間が動揺している姿につい気になってしまい、彼女が体を乗り出して隠そうとしていた物が気になってしまった彼女はつい画面をちらりと見てしまった。

 

 (大きめのスパコンに…原稿?あそこに次回の原稿があるなら

 ミユが動揺したのはそこではない…

…ラフ絵用の画面が付いていますね、ミユが見たのはここでしょうか?)


 

 画面に映っていたのは普段√分岐を見れるように演算しているスパコン。

 そしてスパコンの下に次の原稿が置いてあり、次回用の印刷をした後に

 深夜でも演算を行っていたスパコンの画面を見てしまったようだ。

 ミヤコはミユの動揺した訳を知るため、思わずその画面をのぞき込んでしまい…


 (…あれは…私と、ミユ…?でも服が…)

  「………!?!?!?」


…スパコンの画面にはミドリがイラストを描きやすいようにと

  下書き用に簡単に出力したラフが描かれていた。

  …シャーレの下をコートを着て散歩するミユとミヤコのイラスト…

 そこだけ見れば仲睦まじい姉妹のようにも見えたそのイラストは、

 顔から下がコート一枚のみの着用しかしておらず

  さらに言えば顔があまり人にお見せ出来ないような…

  羞恥と興奮、恍惚が混じったような表情を二人はしてしまっていた。

 どう言いつくろっても「深夜徘徊」としか言いようのないこのイラストは

 完全にお子様には見せられない状態となっていた。


 「……!?な、ぁ…!!!」


 「…ご、ごめんね…その、私が変に触っちゃったから…」


もし今の状況をゲーム開発部に戻ってきた誰かに見られたりしたらまずい、

 と混乱する頭を総動員して声が出るのを抑える事に成功したミヤコ。

 あのイラストを見てしまい咄嗟に隠そうとしてくれていたミユは

 かなり申し訳なさそうにしつつも顔はまだ赤いままだ。


 「い、いえ…こちらこそ、その…すみません。

  ミユが頑張って見せないようにしてくれていたのに…」


 「へ、平気だよ…それよりもこれ…どうしよう?

  演算結果として出ちゃってるなら明日みんなに見られちゃうかも…」


 「……そうですね、もし映像を消したらそれはそれで不審がられるでしょうから…

 朝一番にここに来てモモイやミドリに簡単に事情を説明するしかないと思います。」

 (…正直オブラートに包んでもあまり話したくない事情ですが…仕方がありません。)


「…そ、そうだね。ここでデータを消しちゃったら明日の収録に支障が出ちゃうし…」

 自分の非礼を詫びるミヤコに大丈夫だからと対応してくれるミユ。

 それよりもスパコンにこの演算結果が残ってしまっており、明日にはバレてしまう事を危惧していたがそこに関しては明日先回りして事情を話そうという事で決着が着いた。


 「…あの、でもそのこっちの原稿…どうしよう?

 今演算してるって事はこっちにも今のルートの原稿、入っちゃってるよね…」


 「…致し方ありません。これは一度私達で持っておきましょう。

  テントまで持って行くわけにも行きませんから今日は仮眠室でおやすみですね。」


 「う、うん…モエちゃんやサキちゃんにもモモトークで連絡しておくね…」


 ひと悶着あったものの、何とかエ駄死なシーンを朝から部員達に公開してしまう

 恥ずかしい展開を避けられたことにほっと息を吐きつつ、

 ミユとミヤコは仮眠室へと向かうのだった…


  【この後、仮眠室で眠れずつい原稿を読んでしまい

  仮眠室にある個別用ベッドでギシギシと音を立ててしまい

 2人揃って夜の運動を行ってしまったり、

 それが災いして寝不足のまま朝を迎えてしまった結果、

 原稿は直接見せなくて済んだものの自分達のあられもない姿を結局見せる事になり

 朝っぱらから顔を真っ赤にしてミユと一緒にスパコンの演算内容について

モモイやミドリ、ユズやアリス達に説明する羽目になったりしたのだが、それはまた別のお話…】

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