ミホーク と いっしょ!

ミホーク と いっしょ!


ミホークに目撃されるホビローさんの話。

時系列的には「はじめての かいぎ&ハンコック と いっしょ!」より後。とっても短い。ミホーク視点。










(……ぬいぐるみ、か?)


 認識したのは、当然だが初めて彼らが出席した会議――久しぶりに開始に間に合い、既に居たハンコックと共に七武海の出席が3名となった時からだ。とはいえ最初は屁理屈をこねる新人程度で、他の七武海よりも気にしていなかったように思う。おれの判断基準は強さであり、それをある意味真っ向から秘してみせたトラファルガー・ローと言う存在を眼中に収めるわけがないのも至極当然の事だった。


 それが覆ったのは、2度目以降に海軍基地で鉢合わせた『プロキシ』が、取り巻きのクルーなしに1人で来ているからかは分からないが身の丈ほどの刀を手にしていたからだった。『プロキシ』が振り回すにしては随分と長いそれは妖刀と言われる類のもので、剣士としては目に留まるのも当然だった。とはいえ『プロキシ』はおれとしては戦いたいと思わず、彼らの『キャプテン』と相まみえる時でなければ対峙したところで満足できないだろうと不干渉でいた。妖刀を見かければ視線で追いかけるぐらいはしていたので、『プロキシ』としては気づいていたかもしれないが。


 だからこそ海軍本部のある島の街にて机の上に見覚えのあるその妖刀が見えた時、おれは近くに『プロキシ』やその他ハートの海賊団が居ないのを見て近寄る気になったし、近づいたからこそこうして――机に立てかけてある刀の傍に置かれたオモチャと「目が合う」なんて状況になったのかもしれない。






(ハートの海賊団は……店の中か?)


 その店は店の外側の壁がガラスになっていて外から店内に座る客が見えるようになっている、バイキング形式の飲食店だった。ここは海軍本部に近い上に七武海だと知られている身だ、海賊であれど大手を振って普通に入れる店ばかりで、彼らも帰りがけに食事をしていこうと思ったのだろう。その一番外側の席に座って食事をしていたらしい。とはいえそれは憶測で、おれが刀に気づいて近寄った時点で特徴的なあの揃いのツナギの集団は見えなかった。まぁ十中八九食事を取りに行っているのだろうし、一般人がやっている店だ、客の武器を触るという愚策を起こすような店員も客もいないからこそ、刀を置きっぱなしにしていても問題ないのだろう。ちょっと店内を見回せばそもそも客が少ないし、店の奥の方によく『プロキシ』として顔を出している部下の特徴的な帽子が見えたし、その男に近寄っていくシロクマも見えた。


 いや、気になるのはそこではない。気になるのは――店の中故に『プロキシ』はマントを脱いでいたらしく、刀の傍にあの特徴的なマントが置かれているのだが、それに埋もれるように置かれた……いや顔を出しているかのような状態になっているオモチャだ。アザラシのような柄の帽子を被ったユキヒョウを模しているらしいそのオモチャは僅かに刀を抱き込んでいて、その状態でその黒い目がこちらを向いている。


 何故こんなところに? だとかこのオモチャは彼らのものか? とは思いながらも何となく視線を外すのも躊躇われ、ガラスを挟んで見つめ合う。元々窓際には『プロキシ』が座っていて、外からは見えなくなっていたのだろう。新品なのかしっかり洗われているのかは分からないが、オモチャは小綺麗で丁寧に扱われているのが伺えた。こんなところまで持ち出しているのだとすれば随分な溺愛ぶりだ。誰の持ち物なのだろう、マントの近くに置かれているという事はやはり『プロキシ』か? と思いながらオモチャを観察して……僅かに、オモチャが動いた気がして眉を寄せた。今、動いて






 パッ、と視線を上げればギョッとした顔のシロクマと目が合った。気配を感じたのでこちらに気づいたのだとは分かっていたが、やはりオモチャを持っているところを見られたのが恥ずかしかったのだろうか。慌てたように店から出てくる『プロキシ』の片割れ(初対面の時と同じペンギン帽のクルー)に、こてりと首を傾げた。


「鷹の目!? なんでここに……」

「上納金を納めた帰りに通りがかっただけだ。刀が見えたからな」

「刀? ……鬼哭です?」

「鬼哭というのか」

「ええ。……何度か視線を感じてましたけど、もしかして見たいんですか?」

「否、あれは妖刀だろう。近づく気はない。……使い手本人が出てくるなら話は別だが」

「なら無理ですね。『キャプテン』があれを抜くのは滅多にないんで」


 言い切って言外に今は無理と言うクルーに肩をくすめる。視線を席へ戻せばシロクマがオモチャを膝上に乗せてもふもふと撫でていた。当人(……当クマ?)もモコモコしているが、もふもふしたものが好きなのだろうか。シロクマが窓際に座ったためおれからは視覚へ移動してしまった刀――鬼哭に仕方ないと割り切って息を吐いた。おれが行く事を察知してか、「それじゃ、おれもここで」と言って店内へ戻ろうとする背中に口を開く。


「……お前達の『キャプテン』に伝えろ。おれはいつでも対戦できるのを待っていると」

「……ええ、伝えておきますよ」


 頷いたのを見て踵を返した。妖刀をわざわざ手元に置く人間だ、妖刀に飲まれないだけの強さはある筈。とはいえ彼らのスタンスから対戦が叶うのはいつになる事だろうな、と思いながらその場を去るのだった。











※全て手話orモールス信号でお送りします

『……セーフ……?』

『どうだろ……?』

『分かんね、っていうか『キャプテン』よく動かずにいれましたね』

『ん? ……『動かないのは慣れてる』ってー』

『そう……いやとりあえずベポもう抱えてなくていい戻せっつーか隠せ』

『うん、ごめんね『キャプテン』……おれが立たなきゃ見えないようにしてたのに……うん? うん、ありがと』

『とりあえずとっとと食って出よう。感謝の印としての招待だし普通に食って出れば問題ないだろ』

『『賛成』』

『と言うか咄嗟におれが持ち歩いてるみたいな感じにしちゃったけど、しばらくオモチャ好きアピールしてた方がいいかな……?』

『……後で相談するか』












 ちなみにその後しばらく、開き直ったのか様々なもこもことしたオモチャを購入したり持ち歩くシロクマが目撃されたらしく、一見あのシロクマは屈強に見えない(実際の強さは覇気がなければ彼らの中で一番の筈だ)のもあって見ていて和むという感想を耳にしたりするのだが、それはまた別の話。


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