ミニスカサンタ

ミニスカサンタ



「コラさんって結構分かりやすいのが好きよね」

赤くて短いスカートから覗く太腿が眩しい。ドライだのなんだの言うわりに季節行事をまめにこなす海賊団のキャプテンが、今日はサンタクロースに扮していた。

潜水艦という閉鎖的な環境下では意識して変化が必要なのだと、ハートの海賊団は季節の行事に合わせて宴を開く。

クルーの慰労も兼ねているので普段は厳しくつましく管理されている食料庫から、酒と塊肉も出して振る舞われる。

薄い紙で作った花で花見をしたのも、看板に出て月見をしたのも、その季節が連れてくる空気感と結びついていい思い出だ。

そして今日はキャプテン自らサンタの衣装を纏ってのクリスマスである。

一通りクルーと酒を酌み交わし、おれの横に座ったローの言葉に目を逸らした。

分かりやすいのが好きというより、お前ならなんでも好きという思いは、今日も受信不良を起こしていた。

というか男は皆ミニスカサンタなんて好きに決まっている。

この海賊団は男だからというより、ローに対して黄色い声を上げるのを楽しみにしている連中だらけなので、船長のコスチュームにも大はしゃぎだ。エロ目的というよりただ「かわいい〜〜!」と言いたいだけである。

サンタ服の裾が際どい位置で揺れるのをハラハラしながら見ていたので、やっと腰を落ち着けたローにおれも一息ついた。

手にしていた水のグラスを渡す。

「結構乾杯して飲んでただろ?酒強いのは知ってるけどちゃんと水も飲めよ」

「ありがと」

煙草吸ってくる、とわざとらしくないように立ち上がって食堂を後にした。



甲板で雑に煙草を吸い終わってから潜水艦の一番奥まった場所にある部屋、ローの自室に足を踏み入れた。

手持ち無沙汰で意味もなくシーツの皺を伸ばしていれば、ほどなくしてローがやって来た。

「コラさん」

ローが後ろ手で扉を閉めて、錠の落ちる音がした。

ベッドに座るおれの前にやってきたローが屈む。唇が触れ合って、おれはそっとおれだけのサンタになったローを抱き寄せた。

おれたちの関係はとっくにクルーに知られているところだが、一緒のタイミングで消えるのは流石に今からハメますと宣言するようで気まずい。

わざとらしくても時間をずらして部屋に向かうのが、なんとなく恒例になっていた。

「コラさん、ねえ触って」

手がローの尻へと導かれる。中が見えやしないかと内心穏やかではなかった短いスカートの上から撫でているとふと違和感に気付いた。

服の上からでも触れば下着の縫い目や肌との境界は分かるものだ。だが今日の下着は縫い目がやけに太い。ん、と眉を潜めたおれと目の合ったローが笑う。

「めくって」

何ともシンプルで淫靡なお誘いに抗えるわけもなく、いそいそと短いスカートへと手をかけた。

現れた光景にギョッとする。

履いてはいる。しかしこれを下着と呼ぶべきかは悩みどころだ。

ほぼ紐のような細い布が太腿の付け根と鼠径部に巻き付いている。下腹部にはハートモチーフのレースがあしらわれていて肌の色が透けて見える始末だ。

「えっろ……」

絶句したあとに出たのは正直な感想である。なんだこれ、エロ過ぎるだろ。どこにもかしこも隠れていなくて何も着けてないよりいっそ卑猥だ。

涼しい顔してとんでもないもんを履いている。

「もっとよく見て」

言われずとも視線が外せなくてまじまじと見てしまう。紐とレースがぐるっと巻きついているだけの光景。好奇心が唆られて、指を伸ばす。

「あんっ」

ハート型の凝ったデザインのレースに触れるとわざとらしい嬌声がして、にやりと唇を上げる。レースの縁をたどり、股間に指を潜らせると案の定にちゃりと濡れそぼった感触がした。一番隠すべき部分に布が存在しないことに、体中の血がどんどん巡りを良くしていく。

「これクロッチが無いからこのまま入るの」

片足を上げておれの腕に引っ掛けるように開脚したローが言う。

露わになった股間は確かにレースすら存在しなかった。初めて見るわけでもないのに丸見えになっている女性器に下半身がずしんと重たくなる。

「お前この状態で船うろついてたの?」

そうであれば流石に由々しき事態だと剣呑な声を出す。

「さっきは上にスパッツ履いてたから平気。今部屋の前で脱いだ」

「それもエロ過ぎるだろ」

はあぁ〜〜〜〜、とデカいため息が出た。普段は性の気配を感じさせない清廉な佇まいをしているくせに時々痴女のような行動を取る。男としては夢のようなシチュエーションだったが、どこで覚えてきたんだと不安にもなるところだった。

「でも好きでしょ?」

屈託なく笑う顔に更に腰のあたりが重くなる。おれの眼前でさらけ出している下着との壮絶なギャップで熱が集まる一方だ。

「ね、コラさん」

ローがおれの膝に乗り上げる。ボトムスの上からでも分かるぐらい勃っているところに、ぐいぐい剥き出しの性器を押し付けられて熱い息が漏れた。ローの体重でやんわり押し潰されていくだけでもう気持ちがいい。

どろりと受け止める布がないせいで愛液が垂れた。興奮しきっているのはローも同じだと、生理的な現象で見せられると今すぐ押し倒してどうにかしてやりたいと、暴力的な衝動が込み上げる。

「はやく入れて」

期待で熱を孕んだ息が交わって、矢も盾もたまらず前をくつろげようとしているのに興奮で指が震える。

夜はまだこれからだというのに、たった数秒のことがおそろしくもどかしく思えた。


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