ミチカケル/一日目

ミチカケル/一日目


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 一日目。

 しばらく水入らずの二人きりで過ごせるという事で、まずは部屋の掃除と買い出しだ。

 保存の効く飲食物は重いが、二人での買い出しだしなによりルフィは見た目の割には大の大男もびっくりの力持ちなのだ。しかもさりげなく自分の方に重いものを集中させる気遣いも持っている。……本当に、いい男だよね。私じゃ到底釣り合わないくらいに。

 掃除と買い出しが終わった後はお風呂に入る。疲れた体で入るお風呂はとても心地よくて、二人して転寝してしまった。

 起きたときには時間もお腹の具合もちょうどよかったので、ルフィに何がいいかと聞くと肉!! と元気よく返事をしてくれた。

 まったくもう、野菜や魚介もちゃんと食べなきゃだめだよ? なんて言うと、いやわかってるけどやっぱ肉のが……とちょっと拗ねる。ふふ、頼りになる時はすごいかっこいいのに可愛いよね。

 リクエスト通りお肉メインの料理を出し、二人で食べる。ルフィはいつも美味しいと言ってくれるし、その食べっぷりは作る側としては凄く嬉しい。

 食べ終わった後はお片付け。ルフィは力加減がうまくできなくて結構な確率で食器を割ってしまうので二人の間でルフィの食器洗いは禁止と取り決めてある。

 だけれども、いやだからこそだろうか。食器を下げて水に浸しておく事を率先してやってくれる。

 できないことはできないとすっぱり諦めるが、自分ができることは誰に言われるでもなく、かといってやたらに主張せず自然とやってくれるのだ。これなら私が居なくても恋人に困ることは無いだろう。むしろ私がいるからこそ困ってたりしてね。

 いけない。初日からまた暗い思考に偏ると際限なく堕ちてしまう。

 ご飯の後しばらくは二人で遊んだり話したりで過ごして、なんとなくで始めるのがパターンだった。

 ルフィから誘うこともあるがそれも稀だった。ルフィが誘う前に色々と耐えられなくなった私が誤魔化すように、塗りつぶすように先に求めていたから。

 ただ、今日はルフィからのお誘いだった。それも珍しく、やってみたいことがあるから、私がよければ付き合ってほしいとリクエスト付きで。

 以前髪でシテ欲しいとリクエストされて以来なので少々面食らってしまい返事が遅れるとルフィが慌てた様子でいや、ほんとダメならダメって言ってくれよ!? 無理はさせたくないし嫌われたくないからよ! なんて言ってる。

 バカだなあ、私がルフィを嫌いになるわけないじゃない。ルフィが私で気持ちよくなってくれるなら新しい事なんていくらでもやってあげるのに。

 もちろんそんなことは馬鹿正直に言えやしない。久しぶりのリクエストだから珍しいと思っただけだし、ルフィになら……何でもしてあげるよ?

 そう返事をすると安心したのかため息をついている。そんなに緊張するなんて、どんなプレイなのかな? 大丈夫、頑張ってできるようになるからね。

 それじゃあ行くぞ、とルフィが宣言し顔が迫ってきてキスをする。私はそのままルフィを肉棒に手を伸ばそうとするが、その手をルフィに取られ、抱きしめられて身動きを封じられてしまう。

 ……今日はルフィがリードしたいのがやりたいことなのかな? でもそれは改めてリクエストすることじゃないよね? そんな疑問が浮かぶが、身動きを封じられている今意識はだんだんとキスに集中していってしまう。

 そうしてキスだけの時間が続く。性的な快感は相変わらずないけど幸福感で満たされた頭ではそれが長かったのか短かったのかなんてわからない。

 終わった後はなんだか口寂しくてもっと、と考えるが今日はルフィがリードしたいようなので続きを待つ。

 すると体に軽く触ってきた。触るというよりは撫でるような軽いタッチでさわさわといろんなところに触れてくる。

 親しい人以外には絶対触らせない髪もルフィに触れられるとくすぐったさとそれを上回る心地よさで満たされる。

 そうしてしばらく私の頭を撫でで髪を手で梳いていたルフィの手が頬を撫でた。

 その流れで首筋へ、首筋から肩へ、肩から腕、腕から手。胸やお腹、お臍。鎖骨、肩甲骨、背中、腰骨、お尻、太腿、脹脛、足。

 頭から足のつま先までまるで人体の部位を確かめるかのように、今日一日で私のすべてに触れるかのように巡っていく。

 なんだかくすぐったい様な面映ゆい様な気持ちを誤魔化すようにルフィの下半身に手を伸ばすとまたもや遮られてしまう。なんで……? 私にもルフィに気持ちよくさせてよ……。

 そうした不満を察知したのか、ルフィが私に触れるのを中断して、今みたいに性器に触れないようにお互いの体を触り合いっこしようと言ってきた。なるほど、やってみたいことってのはこれの事だったのか。

 それなら否なも何もない。ルフィからしていいことを解禁されたのなら私も思う存分触ってやる。

 ルフィの細いけど、力強くしっかりを私を掴んでくれる指に触れる。

 いざという時は私を守ってくれるその腕に触れる。

 割れた腹筋も、がっしりと広くて頼りになる背中も、ルフィの自由奔放さを支える脚も、子供っぽいけど真剣な表情は誰よりも大人っぽくなるその顔も、元気さを象徴するかのような髪も。

 愛しい人の好きな部分を余すことなく体現するその体に触れていく。ああ、やっぱり私はルフィの事が好き。大好き。愛している。そう深く深く実感することで自然と涙が出てきてしまいルフィが驚くが、胸が幸せいっぱいで感極まっただけだと伝えると安心してくれた。ほんと、優しいよねルフィ……。

 そうしてお互い触りに触り合い、でも決定的な部分には触れず過ごす。

 そして唐突にルフィが終わりを告げる。今日はここまでにして、また明日続きをやろうと。

 夢中になっていたので気づかなかったが、結構時間が経っていた。

 しかしなぜ途中でやめるのだろう? 数日は二人きりで過ごすのだから次の日の予定など気にせず今から本番をしても問題ないのに。

 明日は特に予定ないからヤろうよ、と誘うもルフィのやりたいことは先ほどの触れ合いだけでは完全な正解ではなかったらしい。

 今日みたいな触れ合いだけをしばらくやってみたいとのこと。

 なぜ? と素直に疑問を投げかける。たしかにいつもと違った安心感というか、じっくり触ることで改めてルフィの事好きだなーと再認識したりと新鮮なプレイだったけど、そこまでやったらいれて最後までやったほうがルフィも気持ちいいだろうに。

 私の質問は想定済みだったようでルフィは間を置かずよどまずに答えてくれた。

 いつも俺ばかりウタにしてもらう事が多かったから、俺がリードしてみたいんだ、とか。ウタの体は綺麗だし、いつかじっくり触らせてもらいたかった、とか。今日お願いして実際にやってみてなんかすげー充実感あって満足したから明日もやってみたいし、そのための体力とっておきたいんだ。とか

 最後のは回復力あるルフィなら別に平気なのでは? と思ったけど、そういえば数日連続ではやったことがないので、それなら確かにルフィの危惧はわかる。

 私でルフィが気持ちよく射精していないのはちょっとひっかかるけど、ルフィがやりたいというのだからそこを曲げさせるという気は起きなかった。

 私が納得するとルフィはししし、俺に付き合わせちまって悪いな、ウタ! と笑顔で言ってきたので、私はおねーさんだから年下のワガママくらい許しますーなんて言うと、子ども扱いするなよー。年下つってもお互い大人の年齢だし恋人同士じゃんかよー。なんて拗ねている。ふふ、負け惜しみ言っちゃって。

 出た、負け惜しみぃーといつもの返しをするとまたもや笑い出す。

 このオチが決まったやり取りは恋人同士になる前から、それこそ小さな頃から始まった私達の絆を証明するものの一つだ。ルフィ同様、私もまた笑っていた。

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