ミチカケル/オープニング

ミチカケル/オープニング


 ルフィに相談したい。ルフィに知られたくない。

 ルフィとずっと一緒に居たい。ルフィのために離れなきゃ。

 ルフィを信じている。ルフィを信じ切れていない。

 相反する思考にガリガリとココロを削られながらそれをひた隠しにして毎日を過ごしている。

 演技力には自信がある。だからルフィには気づかれていないはずだ。でも勘が良いというか人の気持ちに聡い彼なら色々と察したうえで黙っているのかもしれない。

 ああ、だめだ。ほんのちょっとしたことでも前向きな自分と後ろ向きな自分が自分の中で喋っている。

 ……本当に前向きなのだろうか?前向きというのなら笑ってルフィと別れた方が双方のためなのではないか? いや、違う。それだと彼は納得しない。納得するだけの理由を言わなければだめだ。それには私の身体の事を言わなければ。言いたくない。嫌われたくない。でも隠し事を続けて彼をだまし続けることの方が嫌われてしまうのでは? 理由があれば黙っていたことでルフィは嫌ったりしない。でも内容で嫌われてしまうのでは? 違う、ルフィはこんなことで人を嫌ったりしない。

 わかっている。

 こうして悪い考えがどんどん溢れてくるのは心が弱っている証拠だ。

 それによってまた心が弱り泥沼の悪循環に嵌っていることなんて、とっくにわかっている。

 それでも溢れてきてしまうのだ。抑えられない。冷静な時でも冷静でない時も私が私を削り、追い詰めてくる。

 時折、何もかも全て、そうルフィすらも捨てて逃げてしまえば色々と楽になれるのでは? と考える。

 でも、そうして逃げたところでどこに行くの? ルフィ以外の居場所なんて考えられないし、何の意味もないのに? 本当に捨てて逃げる勇気なんてないくせにその時を妄想して、現実はそうじゃないと安易な安心感に浸っているだけなのでは?

 

 だから、ルフィと体を重ねる。

 ルフィとのセックスは私が不感症という現実が突き付けられる行為ではあるが、なによりルフィと繋がっている事、ルフィへ奉仕していることで彼の役に立てていることが、現実を目の当たりにするよりも私の心を支えてくれている。

 こんな面倒な私と知り合いで、恋人でごめんね。という、また湧き上がってくる罪悪感も黙殺できるほどには。

 今日も色々な場所でルフィを射精させた。もちろんナカでしてる時は顔を見られないように、艶のある演技を続ける。ルフィの反応と演技に集中してれば余計な考えが浮かばないのも……いや、こう考えるのはルフィに失礼だ。セックスに集中しなければ。

 そうして今日も終わる。体力のあるルフィでもやはりかなり疲れてしまうのか、いつもピロートークをしているうちにすぐ寝入ってしまう。

 その安らかな顔をみて今日もバレなかったという安堵とこんなに純粋な彼を騙し続けている罪悪感とでまた板挟みになる。私は卑怯者だ。

 

 今までは諸々の都合でルフィと二人きりになる日が連続することはあまりなかったが、珍しく明日からは数日一緒に居ることもできるようだ。

 ……その数日間でルフィとの思い出をいっぱい作れば、打ち明けて離れられる決意が固まるかな?

 いっそのこと、バレてしまってルフィに失望されて嫌われて捨てられてしまった方が私にふさわしい末路なのかもしれない。アハハハハハ、これじゃあルフィを悪者にしてしまうじゃない。そんなのは駄目だ。悪いのは私なのだから。でもいっそのこと罰してくれた方が――。

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