ミチカケル/エンディング
、、
、、
、、
、、
目が覚めたとき、最初に思ったことは私、生きてる!? だった
視界に最初に入ったのは、バツが悪そうに、心底私を心配していた表情でのぞき込んでいたルフィだ。
起き上がってすぐ抱きしめられる。ちょ、寝起きに強めのハグはキツイって!
そう文句を言うと慌てて離れる。そして、ほんとゴメン、ウタ! 自分を抑えきれなかった! 無事でよかった!
と謝ってきた。
そんな大げさな、とは思えなかった。
実際ヤってる最中の快感は強烈かつ凶悪で、私という人格が消し飛ぶんじゃないかってくらいヤバかった。
最後の方なんか、私、明らかに狂人みたいになってなかった?
ルフィに話を聞くと、私の意識がまだあった頃、つまり変に笑い出して意識がブラックアウトしてからもしばらくルフィは止まらなかったらしい……。思った以上に体が、というか腰がだるい気がするのはそれでか。ルフィめ。
そして欲望を思う存分私にぶつけ、注ぎ込んだ後ようやく冷静になったルフィが見たのは呼び掛けても返事をせず、それどころか胡乱な瞳でえへへへと笑ってたり、もっと、もっとルフィもっと、と譫言のように繰り返す私の姿だ。
そりゃあ驚いたし慌てたことだろう。
あんなに私がダメって、やめてって懇願したのに止まらなかったルフィさんの責任だよね、コレは。
そうジト目で睨みながら文句を言うと、いや、俺の責任でもあるけどウタだって! と反論してくる。
むっ、実際ヤバい事態になったのは私なんですけど?隙を与えぬ私の反論にルフィはたじたじだが、引き下がらない。
うっ、それを言われると辛ぇけど……いやでもだってよぉ! あんな可愛く挑発されたんじゃ、我慢の限界とっくに超えてたのによぉ……! 卑怯だぞ、アレは!!
ふぅん、へぇ……? そこで卑怯とかどーとか、負け惜しみ……ってやつぅ?
っていうか、挑発なんてした覚えないんだけど。しかも、かわっ……ン゛ンッ。可愛い挑発とかなにさ。やめてよねー負け惜しみに加えて言いがかりなんてー。
自分の優位は覆らないという確かな状況だからか、私は余裕たっぷりに論破していく。
セックスはなんかもう負けを認めるのもばかばかしいほどルフィにいいようにされたのでこれはいい。いやよくないけど、その内リベンジすればいいのだ。
だから優位に立てるこの状況では勝ちを譲るわけにはいかないのだ。
それこそ卑怯だ? 大人げないって? ふふん、聖者でも相手にしているつもりかしら。残念だったわね。私とはこういう女なのよ!
そう思っていると、ぼりぼりと頭を掻きながら、あーうー。と何か言いたいけど言いにくそうなルフィ。
ふふん。この言い合いの勝者である私が。そう! 私が聞いてあげようじゃないの。
ほらほら、きーたげるから素直に言いなさい。
そう水を向けると決心したかのように言った。若干どもっていたけれど。
いやほら、その。改めてスルときによぉ……ウタ、おまえさあ……。快感に不慣れだと思うとかさあ……上目遣いで優しくしてとかさあ……ただでさえ可愛いのにそんな可愛いこと言われたらウタの事が大好きな男しては我慢できねぇっつーかさあ……もう、全部俺の気持ち全部吐き出すまで愛したいってなっちまうんだよなあ……いやほんと、抑えられなかったのは悪いと思うけどさあ……あの場面であんなの、やっぱウタだって悪ぃよ。
……がっ、ぐっ……。うぐっ……ぐぐぐ。
こ、この! ルフィは! この!
さらっと可愛いとか大好きとか愛したいとかいっちゃってんじゃないわよ!
ぐぬぬぬぬぬ。さっきまでの勝ち誇った気分はどこへやら。
言われて思い返した自分の台詞と、ルフィとの台詞でまたもやボンッと音が出そうな勢いで顔が熱くなる。
くそっ、くそっ、くそぅ……。この五日間ルフィに翻弄されっぱなしだよほんと。
もー……! もー! もおおおお! と声を荒げながらルフィを素手でポコポコする。
体にうまく力が入らないが、そんなことはどうでもいい。とにかくこのたまらない気持ちをぶつけなければ気が済まないのだ。……仮に私が万全でもルフィには通じないけれど。
ルフィはそんな私の力が全く入らないへなちょこパンチをちょ、ゴメン。悪かったってウタ、ごめんって! と謝りながらも全部けてくれている。ほんと、色々と広いね、ルフィは。
ぽこぽこ。ぺちぺち。ぺしぺし。
一頻りルフィに必殺の打撃を浴びせて満足した私は改めてルフィに向き合う。
ルフィもかしこまって私に向き直る。
ねえ、ルフィ。今から私がいう事を、最後まで聞いてくれる? たぶん、途中で言いたいこともあるだろうけど、言葉を挟まず最後までしっかりと聞いてほしいの。ワガママなのはわかってるけど、聞いてほしいの。
……ん、わかった。口を挟まねえ! 男に二言はねえし、ウタとの約束は絶対破らねえ!
うん、ありがとうルフィ。
えっとね、色々と迷惑かけてごめん……ううん、私を救ってくれて、ありがとう。
小さい頃から大好きだったあなたの恋人になれたのが私で、私の恋人になってくれたのが貴方で本当に嬉しくて幸せだった。
……ルフィはところどころ何かを言いたそうに口を開くが、約束した通りぐっとこらえて口をつぐんでくれている。だから、安心して決意したあの言葉を言おうと思う。
だから、ねえ。ルフィ。
これからも私をルフィの恋人にしてくれる? 私の恋人として、ルフィを選んでもいいかな?
ルフィが夢をかなえて、結婚して、子供ができて……子供が成長して結婚して、私達にも孫ができて……
そうしてしわしわのおじいちゃんとおばあちゃんになっても仲良く一緒に過ごせたらいいなって思うの。
……どう、かな?
ルフィは最後まで真剣に聴いてくれていた。ルフィはいつもの調子であたりまえだ! とは言わずに、じっくりと言葉を選んでいるようだった。
私の言葉に、いつも以上に真剣に応えようとしてくれいるのがわかる。
だから、私は心穏やかに待つことができた。そうしてルフィからの言葉は――。
まずは最初に、俺は迷惑だったなんて思ったことは無い。
そんなことは無いといいかけたが、ルフィは私の話に何も言わず、黙って最後まで聴いてくれた。なら、今度は私の番。
それに、俺だってウタに救われているんだからおあいこだ。ウタが傍にいるから幸せだし、小さい頃ウタが歌ってる姿を見てからずっと好きだった。……まあ、長い間それが女の子として好きだったって気づけてなかったけどさ。友達に言われて色々考えて、ようやくだったんだ。
でも、自分の気持ちに気づいてからウタに伝えるまでも随分と時間がかかった。その好きは自分だけで、ウタはそういう気持ちじゃなかったら? もしも俺が気持ちを伝えて、今までの関係すらなくなったら?
そう思うとなかなか一歩を踏み出せなかったけど、いつまでも怖がってなにもしないなんて俺じゃねえ! って奮起して告白したんだ。そんとき、ウタがOKしてくれてめちゃくちゃ嬉しかったんだ。
ああ、自分が好きなだけの一方通行じゃなくて、ウタも俺の事好きでいてくれた。相思相愛だったんだって。
ウタが幸せだと俺も幸せだし、ウタが悲しんだり苦しんでると俺も悲しいし苦しかった。
悩みや不安に気付いても何もしてあげられなくて、自分がふがいないと思っていた。
でも解決するのに協力できるかもしれないってわかったときは絶対にウタと協力して成功させるぞ! って思ったし、成功してよかったとおもってる。……まあ、ちょっとウタが可愛すぎて暴走したのは、うんまあ。悪ぃ。
……あ、で、そーだ。えっと。うん。
オホン、と咳払いして区切りを打つルフィ。
ウタ。俺はこれからも恋人としてウタの傍に居たいし、ウタに恋人として俺を選んでほしい。
俺が夢をかなえて、ウタと結婚して、俺達の子供ができて……その子供達が大人になって、俺とウタみたに隙あって愛し合える相手と出会って結婚して……そうしてまた子供が、俺達にも孫ができるくらい一緒にいてよ! しわくちゃのばーちゃんじーちゃんになっても、仲良く散歩したり、縁側でひたなぼっこして楽しく話したりしてほしい!
だから、これからもずっと、ずっと一緒に居てくれるか?
ウタが隣にいてくれないと俺は幸せじゃないんだ。だから、俺の傍にいてくれるなら俺は全力でウタを守るし幸せにする!
……これが、俺の正直な気持ちだ。
いう事は終わった、とでもいった感じで口をへの字に結び。私をまっすぐ、じぃっと見つめてくる。
先に話した私の言葉から、私がなんて答えるのかわかってるだろうに。
ううん、わかってる。これは、私もちゃんと口に出して答えるべきこと。
小さなころから大好きな男の子に、成長してっかっこよくなった恋人に、これから生涯を共にするかけがえのない伴侶たる最愛の人に。
はい、これからも末永くお願いします。大好き、愛してるよ、ルフィ。
そうして熱い口づけと抱擁を交わす。
セックスが目的ではない、お互いの愛を確かめ、交換し合うようなキス。
私の人生の中で、短く、だけれどもとても長く感じられた、暗闇の迷路に居たような期間はこれで終わりを迎えたのだ。
これから先、全てが順風満帆とはいかないだろう。
二人が経験する初めての事はまだまだたくさんあるし、その都度悩み、試行錯誤しながら進んでいくのだ。
それでも、ルフィが私と共に歩んでくれるなら私は最強でいられる。アナタと、最強でいられるのだ。