ミガリちゃんにお好み焼き食べて欲しい

ミガリちゃんにお好み焼き食べて欲しい


「お好み焼き、ですか?」


アビドスの砂漠で遭難していた、赤髪の少女……「瀬戸ミガリ」を保護して数日。対策委員会にも少しずつ馴染んできた彼女を労うため、学園の一室でちょっとしたパーティーを開くことにした。

外食にしなかったのは、少し前、世間話の中で飛び出した「お好み焼き」のワードに興味を持っていたから。ちょうど先生も詳しかったし、一緒に作って一緒に食べるというのも悪くないはず。

シロコちゃん達に野菜を任せて、ユメ先輩と粉を仕込み、先生に渡す。慣れた手つきでホットプレートに広げられた生地が、食欲を煽り立てる香りを広げていた。


「ん~っ!? 美味しい! 美味しいですこれ!」

「こんなに美味しい料理、初めて食べました! もっと食べたいです!」


満面の笑みを浮かべ、ソースの塗られた生地を口に含む「ミガリちゃん」。勢い良くがっついてるようで、皿にキャベツの欠片も無く、口元をソースで汚すこともない。どこかお嬢様じみた優美さが、私達の胸中を掻き毟ってくるようで。


"ミガリも焼いてみる?"


ウキウキワクワクとした様子で次を待っていた「ミガリちゃん」に、先生が投げ掛けた提案。彼女も少し驚いていたけれど、すぐに「やってみたいです!」なんて。

先生からヘラを受け取り、緊張した面持ちでプレートの前に立つ。恐る恐る慎重に、生地の下へヘラを差し込んでいく。


『よう見ときやユメ先輩、ホシノ! これがウチの特注、本場大阪のお好み焼きや!』

「えっと、こ、こんな感じでっ……えーいっ!」


勢い良く両手を持ち上げた「ミガリちゃん」。ミガリに比べれば全然なってない動きで宙を舞った生地は、くるくると空中で何度か回った後……


べしゃりと、プレートの端で崩れ落ちた。

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