マハーバーラタ神話大戦 プロローグ
インドの大叙事詩「マハーバーラタ」に語られる、クルクシェートラの大戦争。
大地の女神プリトヴィーが、人間が増えすぎて大地を支えるのが苦痛だとヴィシュヌに訴えたことが、この長大なる物語の始まりだった。
神々は、人間を減らしてプリトヴィーの負担を減らそうと決めた。
人間を減らすには、クシャトリヤ全体を巻き込む大戦争を引き起こせばいいと彼らは考えた。
正しくない者たちを統べ、戦争を引き起こす人口削減機構……人悪のカリスマをもつ甘い光が必要だった。
だから、上半身は金剛で、下半身は花で作られたドゥリーヨダナが生まれた。彼だけでは不十分であると思ったから、補助端末として彼の叔父シャクニが機能した。
正しくない者たちを殺し尽くし、戦後に秩序をもたらす者たちが必要だった。正しき者たちを守護する者たちが必要だった。
だから、パーンダヴァ五王子が正義の心をもって生まれた。
彼らの人生は苦難に満ちるという確信があったから、ヴィシュヌは化身クリシュナとして彼らを支え、導いた。
こうして、正しい者たちが正しくない者たちを殺し尽くした。正しかった者たちでも、大戦争の中で正義を失っていった。
18日間の戦争を経ても大地の女神が悲鳴を上げていたから、怒りの化身が正義のもとに戦う戦士たちを殺したのを神々は善しとした。
こうして、大地の女神の願いは果たされた。
──果たして、こうするしかなかったのだろうか?
大地の崩落を防ぐ方法は、これしかなかったのだろうか?
⬛︎⬛︎ならば、あんな悲劇は起こさない。
⬛︎⬛︎の言葉を聞いた神々はきっと言うだろう。
お前は甘すぎる、お前は平等すぎると。
否、⬛︎⬛︎は甘くとも平等ではない!!
⬛︎⬛︎は許せなかったのだ!!
⬛︎⬛︎が────⬛︎⬛︎⬛︎が、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ことを!!
ああ、そもそも。プリトヴィーよ。
お前が⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──!!
そうだ。だから、せめて。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
あんな悲劇を起こさせまい。
たとえ、どんな手段を使ってでも────。
ぐだ
「おはよう、カルナ」
カルナ
「マスターか、早起きだな」
ぐだ
「うん。ビーマに朝ごはんを食べに来てって言われたからね」
カルナ
「そうか。ならばオレも行かない訳にはいかんな。ビーマの代わり映えのしない朝食も、たまにはいいだろう」
〈警報〉
ぐだ
「管制室に行こう、カルナ!」
カルナ
「承知した」
[管制室]
ダ・ヴィンチ
「朝から集まってもらってごめんね、マスターくん」
ぐだ
「大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
シオン
「これを見ていただければ分かると思いますが……いつものアレです。また北インドに特異点が発生しました」
マシュ
「また、ですね……」
素ヨダナ
「今回もわし様は何も知らんぞ!?」
ビーマ
「そうか。で、今度はどんなドゥリーヨダナが増えるんだ?」
アルジュナ
「ドゥリーヨダナの関係者かもしれませんよ、兄ちゃん」
ユユツオルタ
「私としては、どんどん増えて欲しいけれどね」
シャクニオルタ
「何を言うユユツオルタ。ドゥリーヨダナでなければ壺に入れてもつまらんだろう」
チトラーンガダー
「やはり北インドか……。いつ出発する? 私も同行する」
(戦いたくてウズウズソワソワしている)
ガネーシャ
「花◯院……じゃなかったチトラーンガダーさん」
シオン
「静粛に。……トリスメギストスⅡによれば、この特異点の時代はピンポイントで突き止められています。ズバリ、クルクシェートラの戦争の直前……パーンダヴァ五王子とドゥリーヨダナの和平交渉が行われている真っ最中です」
ラクシュマナ
「なるほど。つまりビーマ達はマツヤ国にいるってことか」
ぐだ
「マツヤ国、っていうと……」
アルジュナ
「私達兄弟が追放生活の13年目にお世話になった国です。今回の特異点の時代では、ヴィラータ王が治めています」
ビーマ
「懐かしいな」
マシュ
「地理的には、クル国の南方、ヤムナー川の西岸に位置しています。対岸には、パーンダヴァ五王子の皆さんの共通の妻であるドラウパディーさんの母国、ドルパダ王が治めるパンチャーラ国があります」
チトラーンガダー
「そうなのか。私はそのあたりの地理には詳しくなかったのだが、アルジュナ達に味方する勢力が固まっているのだな」
素ヴィカルナ
「特異点の攻略の際には、今までの経験からしてパーンダヴァ側に協力を頼んだ方がいいでしょう。それに今なら、パーンダヴァが戦争への準備をしていますからドルパダやドリシュタデュムナ、サーティヤキといった一騎当千の戦士たちの協力も得られるかもしれませんよ」
素ドゥフシャーサナ
「認めたくないがまぁ、そうなるな。あとマスター。もしも第三勢力が現れてクルクシェートラしてる暇じゃねえ! ってなったら、迷わずカウラヴァ側にも行けよ! この特異点の時代が戦争準備中なら、カウラヴァにはビーシュマ殿やドローナ師もいるし、タイミングが良かったらシャリヤ王もいるかもしれないからな!」
ぐだ
「シャリヤ王って確か……」
カルナ
「ああ。パーンダヴァの四男と五男、ナクラとサハデーヴァの母マードリーの兄だ。クルクシェートラの戦争中ではオレの御者でもあったのだが、あれは戦士よりも御者が向いている。オレよりもな」
素ヨダナ
「あまりこの話はしたくはないが、カルナが戦死した後にわし様たちカウラヴァの総司令官になった男だ。味方につけて損は無いぞ?」
シオン
「皆さん慣れすぎていて私が言いたいことを全部言ってしまいましたね。まあ、そんな感じです」
ダ・ヴィンチ
「ただ、みんなに一つ気をつけてほしいことがあってね……」
素ヨダナ
「どうしたというのだ?」
ダ・ヴィンチ
「いや、この特異点、人理定礎が常に変化している不安定な特異点なんだ」
全員
「不安定……?」
マシュ
「原因になりうるものはありますか?」
シオン
「それが皆目見当もつかないんです。インド亜大陸が崩落するかと思えば、今度はインドの地上にある一切合切のものが消滅するといった感じで、未来の予測が毎秒なんて遅すぎるくらいの速さでコロコロ変化しています」
ダ・ヴィンチ
「マスターくんにはこの原因を突き止めて欲しいんだ。インド亜大陸が崩落するにしろ、インドの地上が全て更地になるにしろ、この特異点は一秒たりとも放っておけない」
マシュ
「今回も頑張りましょう、先輩!」
ぐだ
「そうだね」
シオン
「というわけで、特異点攻略メンバーを発表します。今回はかなり人数が限られますね。何しろマハーバーラタの名だたる戦士たちが生きていますし、そのことを考慮に入れて……こちらの皆さんになりました!」
カルナ
「オレか、承知した」
アルジュナ・オルタ
「わかりました。必ずやマスターを無事に帰還させましょう」
チトラーンガダー
「ウッヒョー!! 戦争だァ〜!!(我が身に代えても、マスターを守ると誓おう)」
スヨーダナ
「かあさま、大丈夫なのか……?」
ユッダ
「思ってることと言ってることが逆転してるだけだし、大丈夫でしょう。……私は機構の有識者として同行を求められたのか、なるほど」
ヴィヤーサ
「サーヴァントとして特異点に同行するのは初めてだけど、頑張るよ」
マシュ
「以上の皆さんと私です。居残り組の皆さんには定期連絡をもとに考察などを担当してもらうことになりました」
アルジュナ
「マスター、不振な点があれば余すことなく伝えてくださいね」
ビーマ
「久しぶりに待機組になったな……まあ、現地の俺やアルジュナ、兄弟たちなら十分マスターの力になると思うぜ。ならなかったら説得するから呼んでくれ!」
アシュヴァッターマン
「一応パールヴァティー様達にも話は通しておくからな。ダ・ヴィンチ! マスターが困ってるようなら追加レイシフト頼むぞ!」
カリ化ドゥフシャーサナ
「ちぇー。居残りかよ」
カリ化ヴィカルナ
「まあまあ。疲れて帰ってくるマスター達のために労いの準備をして待っていればいいじゃないですか」
素ヴィカルナ
「そうですね、ゲームの準備をして待ちましょう」
素ドゥフシャーサナ
「マハーバーラタ体験記のマイナーチェンジはダメだぞ」
ジャヤドラタ
「義兄上、マスター達の持ち帰った情報を元にDLCを作ろうとするのはやめてください」
魔性ドゥフシャラー
「ごめんねジャヤドラタ。ヴィカルナ兄さんってこういうところあるから」
ユユツオルタ
「スヨーダナ。ギー壺を作って待っていますからね」
シャクニオルタ
「ドゥリーヨダナ達よ。誰が一番マスターの役に立つか賭けてみないか?」
ヨダナオルタ
「ふむ……? わし様は…………あまり、話を聞いていなかったからな……。よく、わからん……」
偽王
「そんなことをしている暇があるのなら、カルデアスタッフを手伝った方がいいだろう」
素ヨダナ
「わし様は当然カルナに賭けるぞ! 部屋で寝ているバーヌマティーの分もだ!」
ラクシュマナ
「あー……、母さんの方が煽ったから返り討ちにしたってことね。りょーかい、後で母さんにマサラチャイ持ってくよ」
素ヨダナ
「……ラクシュマナーは何をしておるのだ?」
ラクシュマナ
「姉さんなら『クリシュナお義父様に会ったら罪悪感で死ぬから無理』って言って部屋に引きこもってるよー」
マシュ
「……さーん。みなさーん! 行ってきまーす!!」
ぐだ
「あんまり変なことしないでねー!!」
ビーマ
「おう、俺とアルジュナが見張っとくぜ、マスター。帰ってきたら美味いもんをたらふく食わせてやるからな!」
シオン
「マスターさん達の肩の力が抜けて良かったと思いましょう。……この特異点、最悪の事態が起きたら地球が消滅しますし。そんなのナイナイ! って思って何度計測してみても、地球消滅の可能性が残されているんですよね……。今のところ、たったの0.0000000000001%ですが」
ダ・ヴィンチ
「妖精國のように、終末装置があるわけでもなさそうだし、南米と違ってORTがあるわけでもないのにね……。うーん、どうしてだろう」
ヴィヤーサ
「今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど……!? なんとかして現地の私やダウミヤ、ナーラダに協力してもらわないと……マスターの性格からするにドゥルヴァーサスとも上手くやれそうだし、それにあの人やあの人もマスターになら力を貸してくれそうだ。……どうしようどうしようどうしよう、私だけが聞いちゃったはずだから、私が何とかしないと……いや、なんでも一人でやるのはよくないね。せっかく私の知り合いたちが沢山いる時代に行くんだ、みんなで協力して、世界を守らないと」