ポポ肉と銀嶺族が治める冬島に眠る『秘宝』
オオナズチの人──偉大なる航路『バルディゴア』革命軍総本部
≪つまり今ドレスローザに向かうのは止せと?何じゃ藪から棒に・・・≫
そう電伝虫越しに愚痴を言っているのは数十年前から表向き情報屋として活動している『薄墨』ミズハ─本名光月ナズナだ。
「すまない、無理を言っているのは重々承知の上で、それでも頼みたいんだ・・・私達の目的達成の為に協力して欲しい」
通話相手である革命軍所属の女性はナズナに文句を言われても引く事無く彼女に頼み込む。
《・・・ハァ~》
女性が引く事は無いと分かりナズナは溜息をこぼすも、それでもそう易易と要件を聞く訳にはいかない。
そこで詳しい訳を女性に聞く事にしたナズナは旧知の友に電伝虫越しに問い掛ける事にした。
≪儂は善意で麦わらの一味の一員に入れて貰った身じゃ。彼等に不都合が無い事ならある程度は聞いてやるぞ、リジアよ≫
リジアと呼ばれた女性─『風翔』エストール・リジアはふてぶてしい旧知の友の態度に苦笑いを浮かべながら、要件をナズナに話す事にする。
表向きはリジアは名だたる億超え海賊を専門として二十年前から活動している賞金稼ぎで、本来は革命軍大幹部である。
実はリジアが革命軍入りする理由は他でも無いナズナ自身であり、彼女にドラゴンを紹介したのが切っ掛けである。
当時の光景を思い出しながらリジアはナズナにドレスローザに入るなと言っている理由を話し始める。
「実はな──」
リジアの話を要約すると、
・金獅子のシキがドレスローザに向かっている道中でリジア達が送り込んだスパイが正体を見抜かれ、シキに殺される寸前まで追い詰められる。
・しかし、突如として謎の特大サイクロンに襲われた為にその混乱に乗じてスパイは他の仲間と共に金獅子海賊団から逃げ出す事に成功した。
・当の金獅子のシキは特大サイクロンの元凶と思わしき存在と殺し合いを始めた。
と言った所だ。
「──で、金獅子のシキは憎悪を込めて『アマガ』と言う名を叫んでいたらしい・・・正直嵐が無ければ私達のスパイがシキに殺されていたが、我等の予定が大幅に狂ってしまった。ミズハは何か知らないか?知っているなら教えてくれ」
ナズナはアマガと言う名に勿論心当たりしか無い。
《あ~、アマガとは恐らく『災禍』アマガじゃな。儂の旧知の友であり、儂以上に何処に居るか分からん一種の災害じゃよ。シキの小僧の能力にとって奴は天敵であるが故に奴への憎悪は計り知れぬじゃろう、ざまあみろ・・・コホン、そんな事よりも儂に連絡した理由を早う話さんか》
「あ、あぁ。そうだな」
リジアはナズナが一瞬放った殺気に呆気に取られながらも、話を再開させる。
「スパイからの報告では金獅子のシキはドレスローザを経由して銀嶺族が治める冬島に向かおうとしていたらしい」
《銀嶺族が治める冬島・・・ちっ!遺跡目当てか金獅子のガキめが》
「・・・本当に何でも知っているな、お前は」
ナズナがそれを知っているとは思わなかったリジアは驚き、それを肯定した。
ナズナは深呼吸して金獅子のシキへの殺意を収めながら、ふと気が付いた事をリジアに話す。
《ムトならば金獅子の小僧本人で無いならどうにか出来ると思うが、何かあったんじゃろ?》
そう銀嶺族が14代族長『山神』ムトは並の相手ならば易易と叩き潰す事が出来る強者であるが、こう連絡が来ていると言う事は何かあった事を表している。
「実は『破天』と言う異名の海賊の襲撃、と言うよりムトさん側の勘違いが原因で殺し合いが勃発してしまってな。幸い二人共命に別条は無いらしい」
ナズナは『破天』─本名カーサス・レクスと言う人物には覚えがある。
同郷の同士であり旧知の友人、本業として料理人である『鬼蝦蟇』鬼塚カブラから自身を雇おうとした礼儀正しく、おまけに面白い若造だと聞いている。
カブラから聞いた人物像が正しいのならば大方レクスが放牧されているポポを野生の動物だと判断し、能力を開放して狩りを始めようとしたのだろう。
そこに誰かが通り掛かり彼が村に襲撃しに来たと誤解してムトに知らせた。
そして通り掛かった人物がレクスに襲われているとムトが誤解し、そのままレクスを殺さんと襲い掛かった。
概ねそんな感じでは無いかとナズナは予測を建てそれをリジアに話すと、彼女はそれを肯定した。
「因みに彼は比較的ムトさんより軽症で済んだらしいぞ」
そう言ってから二人共大事無く無事で良かったと呟いた後リジアは話を続けた。
「その後彼は誤って駄目にしてしまったポポの賠償と謝罪した後に新たにポポを正規な手順で購入し、更に医療品と物資を冬島に残して出航したそうだ」
《ほぅほぅ!思っていたより随分とまぁ、何とも面白い小僧じゃあないかのぉ!》
ナズナはレクスがカブラから聞いたよりも面白い男であると判断し、会える日を楽しみにしながらもリジアが今自分達にドレスローザでは無く、銀嶺族が治める冬島に向かって欲しい理由を察した。
《成程のぉ、大方の事は察したぞ。今ムト達銀嶺族には金獅子の小僧が放った刺客から里を守る余力が無い、そこで儂等麦わらの一味に銀嶺族の護衛を頼みたいと言う事か・・・》
「その通りだ。ドレスローザ近海は今金獅子のシキと『災禍』アマガの殺し合いが起こっている為、我等はドレスローザから離れられん。だから同盟相手に何とか了承を──」
《──話は聞かせて貰った》
リジアに対する返答をしたのはナズナでは無く聞き覚えの無い男性の声だった。
「貴殿は『死の外科医』トラファルガー・ローか・・・それはどう言う意味だ?」
《ドレスローザを後回しにすると言う話への返答だ。いきなり何の準備もせずに四皇級の相手と真正面から殺り合うなんてごめんだ》
そこまで言ってローは言葉を区切り自分の船の航海士ベポが言っていた事を思い出す。
『キャプテン!この本に書いてあるポポって肉本当に美味そうだよ!挿絵として載っている写真やポボ肉に関しての説明とかも美味しそうだし、何時か食べてみたい!』
そう言ってベポが見せて来た本の内容を思い出してローは人知れず溢れた唾を飲み干す。
挿絵↓
本に書いてあった内容は以下の通り、
肉は表面に茶色変色し始めた時に風味や旨味が生まれる。
しかし、これ以上加熱すると肉は縮んで硬くなってしまう。勿論固くなってしまえば汁が流れ出て、旨味が失われ、重量も減ってしまう。
・・・しかしポポの肉はそれ以上焼き変色し、色が更に変わる寸前に焼き終えれば絶品と言う他無い最高の肉となる。
脂肪の微粒が全体に行き渡っていり、口に入れると溶けるように柔らかい。
他にもちゃんと生状態だろうと焼いた状態だろうと保存療法を守っていれば半年以上は新鮮なままと書いてあった。
(・・・黒足屋の料理の腕は本物だ。もしかしたらポポ肉の調理方法や保存方法を完璧に履修しているかも知れねぇからな)
内心に考えている事をお首にも出さずローは話を再開させる。
《それに銀嶺族が放牧していると言うポポの噂は良く聞いているし、俺も興味があるからな・・・これは貸しだぞ風翔屋》
そう言ってローはナズナの了承を受けた後に電伝虫の受話器を置き、通信を終了させる。
「・・・ふ~」
自分の頼みが上手くいった事に安心しリジアは深く息を吐く。
そこへコーヒーを片手に彼女に近づく男が一人。
その男はコーヒーを自身を見聞色の覇気によって察知していたリジアに手渡し、リジアはそれを受取りながら後ろに振り向いた。
「有難うございます、ドラゴンさん」
コーヒーを持って来たのは革命軍総帥である『反逆竜』ドラゴンだった。
「任務ご苦労。これでナズナさんがドレスローザに近付く時には我等は目的を達成する事が出来る。・・・ナズナさんなら何の躊躇も無く金獅子のシキと殺し合うだろう」
手渡されたコーヒーを飲みながらリジアはそれに肯定をしめす。
「そうなってしまえば本当に誰もドレスローザに近付けなくなってしまいますから、今回の任務が上手く行って良かったです」
そう言ってコーヒーを飲み干した後、リジアは気になっていた事をドラゴンに質問する。
「そう言えばホワイト電伝虫を使用しなくて良かったんですか?海軍に盗聴されている可能性も・・・」
そう、本来なら盗聴防止として使用されるホワイト電伝虫を使用せずに今回の通話を行ったのはドラゴンの指示であった。
それを受けたドラゴンは真剣な面持ちで腕組みをしその訳を話し始めた。
「金獅子のシキの目的次第では我等革命軍と麦わらの一味だけでは戦力が足り無いかも知れん。そこで敢えて盗聴させる事で海軍を動いて貰う訳だ」
その答えに納得したリジアは立ち上がりドラゴンに向き合う。
「では、私は予定通りドレスローザに向かいます」
リジアの任務は特大サイクロンを最短距離で突っ切り、ドレスローザに向かう事である。
彼女の能力なら特大サイクロンが有ろうと問題無くドレスローザに向かう事が出来る上、もし金獅子のシキと殺り合う事になったとしてもリジアなら然程無理せず離脱出来るだろうとドラゴン達革命軍が判断した為だ。
外に移動したリジアは能力を開放しその身を龍に変化させる。
体表が鋼鉄の強度と性質を持つ鱗や甲殻に覆われており、それを丹念に磨き上げれば眩い白銀色に輝くであろう美しさを表しているのが見て取れる。
これが能力を開放した彼女、エストール・リジアの姿。
彼女が食べた実の名はリュウリュウの実幻獣種モデルクシャルダオラ。
通称『風翔龍』や『銅龍』と呼ばれる龍の力を宿した実である。
「──エストール・リジア、参る!」
そう言ってリジアはドレスローザに向かって飛び立った。 ──────────────────────────────────────────────────────
──海軍本部『ニューマリンフォード』元帥室
海軍元帥サカズキの命令で此処に招集された本部中将が二人。
「私達を召集した理由は何です?サカズキ元帥」
ムシムシの実幻獣種モデルアトラル・カの能力者であり、海軍本部中将──『石踏』アルカ・シャーン。
「・・・私とシャーン中将の二人を招集となると大方ドレスローザかパンクハザードでの一件、麦わらの一味絡みだろう」
リュウリュウの実幻獣種モデルゴグマジオスの能力者であり、海軍新世界機動部隊長にして海軍本部中将──『巨戟』ゲオ・マクス。
「或る意味マクスが言っちょる通りではあるが、一先ずこの盗聴した通話を聞け』
そう言って元海軍大将赤犬──現海軍元帥サカズキは自らの机の上に置いてあった録音機を再生させる。
録音は光月ナズナと億超え海賊を専門としている賞金稼ぎである『風翔』エストール・リジアの会話だった。
因みに世界政府が指名手配しているのは海賊『霞隠れ』トヨタマとしてであり、情報屋としての偽名である『薄墨』ミズハは疎か本名である光月ナズナとしては指名手配されていない。
・・・余談ではあるが過去彼女の正体を探ろうとした海軍諜報員やCPエージェント等の尽くがナズナの手によって葬り去られた事があって、それの二の舞を演じる事を恐れた海軍と世界政府上層部が彼女が前々から海賊として名乗っていた『霞隠れ』トヨタマと言う名を流用したのである。
閑話休題
その盗聴された通信の中には大監獄インペルダウンLEVEL6脱獄囚達の居場所、海軍が把握していなかった海賊島ハチノスにて起こった現四皇『黒ひげ』マーシャ・D・ティーチと元ロックス海賊団王直の決闘及びその結末の行方。
更に最悪の世代の一人麦わらの一味船長『麦わら』モンキー・D・ルフィと同じく最悪の世代の一人にして七武海ハートの海賊団船長『死の外科医』トラファルガー・ローの同盟等様々な情報が含まれていた。
・・・その中でサカヅキ元帥に招集された二人が注目した箇所は、
『《スパイからの報告では金獅子のシキはドレスローザを経由して銀嶺族が治める冬島に向かおうとしていたらしい》──《銀嶺族が治める冬島・・・ちっ!遺跡目当てか金獅子のガキめが》』
の部分である。
「分かっちょると思うが海賊『霞隠れ』トヨタマは名の知れた情報屋『薄墨』ミズハでもある」
その言葉を肯定するように二人は頷く。
海賊『霞隠れ』トヨタマ及び情報屋『薄墨』ミズハの名は所属問わずある程度歳を取った人物なら知らぬ者は居ない一種の都市伝説だ。
実はここに居る三人共ナズナ本人の面識があってよく共に茶を飲んだ中であるのだが、それはここには居ないガープにセンゴクやお鶴、現海軍大将黄猿──ボルサリーノと元海軍大将青雉──クザンの計8人の秘密となっている為他の人物は誰も知らないのである。
・・・尤も下手に探らせれば身分所属問わずに霧と共に消えて無くなるだけなので誰もバラしたく無いと言う事もあるにはあるのだが、ちゃんとした友情をナズナを含んだ9人とも持っているので問題無い。
閑話休題2
ナズナをよく知っているからこそ、この三人には一つ引っ掛かる事があるのだ。
「・・・そんな彼女がこうも露骨な態度を取ると言う事は何かしらの問題が、その古代遺跡に眠っているのかも知れ無いと?」
そう、マクス中将が言っている通りナズナはちょっとやそっとでは露骨な態度を取らないので余程の事が起きていると考えて良いだろう。
そんな意味を伴った問いに対しサカズキは首を縦に振り肯定を示した。
盗聴した通話内容を聞いてから腕を組んで考え事をしていたシャーン中将は腕組みしていた腕を解いてから、
「でもそんなにナズナさんならそれが危険な物なら自分の手で葬っている筈だ」
とひとりごちる。
それを聞いてサカズキ元帥は煙草の煙を吐き出しながら、
「わしもそこがちぃとばかし気になっておるんけんのう。彼奴程の女傑であるならば判断を間違う様な事は無いじゃろう。なのにも関わらず今回は露骨に動揺し苛立っておった」
と発言する。
「・・・やはり何等かの前提条件が無ければ意味を成さない遺跡であり、金獅子のシキはその条件を満たしている可能性があると判断した方が良いですか」
そう答えを出したマクス中将に続きシャーン中将が、
「それで私達二人を銀嶺族が治める冬島警護及び麦わらの一味対処の為に呼んだ訳ですか、サカさん・・・でも世界政府にそれを報告せずにいて宜しいので?」
とサカズキに質問した。
そうサカズキはこの件を世界政府上層部は疎か五老星に報告する事無く、勝手に動いているのだ。
それに対しサカズキは、
「必要無い」
と一笑する。
「偽名を複数使用しておるだけで世界政府に敵対行動を取って無かったナズナの婆さんを『霞隠れ』トヨタマ名義であるとは言え指名手配した件と言い、金獅子のシキとの裏取引とした件と言い、全く信用出来る要素が少な過ぎるからのぅ・・・今回は独断で動かさせて貰うと言う事じゃけえ」
そう言った後サカズキ元帥は中将二人に銀嶺族が治める冬島への出動任務を下し、二人は軍艦と部下を伴って銀嶺族が治める冬島へ向かった。 ──────────────────────────────────────────────────────
──新世界の何処かの海を進む海賊船上
「もうちょっとスピード出せないの!早くポポのお肉を食べてみたくて仕方が無いんだけど!」
そう部下に無茶振りをしているのはリュウリュウの実幻獣種モデルリオレイアの能力者『毒輪』アルテミア・セレーネだ。
セレーネとその旦那であるリュウリュウの実幻獣種モデルリオレウスの能力者『火輪』ヴァルツ・マーロウが船長をしている海賊団の船はポポ肉を求め、今銀嶺族が治める冬島へ向かっている最中である。
彼女に無駄振りされた部下は困りながらもその態度に無理は無いと肯定しながらその無茶振りを抑えていた。
事の発端はケロケロの実幻獣種モデルテツカブラの能力者であり、凄腕の料理人でもあるワノ国からの出国者『鬼蝦蟇』鬼塚カブラからポポ肉の旨さやその旨味を活かした調理方法、ポポ肉を使った絶品料理を教えて貰ったからである。
尚その場面を見ている当のカブラ本人はと言うと、
「・・・すまんぜよ。わしがおんしの嫁さんにポポ肉を勧めたばっかりににゃあ」
と申し訳無さそうにセレーネの夫であり彼女と同じくこの海賊団の船長をしているマーロウに謝っている。
その謝罪を受けながら全く気にして無いとマーロウは言う。
「そもそも僕達がオススメの食材は何かと聞いたのが発端だし、正直僕もポポ肉に興味津々だから問題無いよ・・・それに僕達二人は元々銀嶺族が治める冬島に行ってみたいって思ってたから」
そう言っているマーロウはポポ肉料理を想像しながら口内に溢れるよだれを飲み込み、昔読んだ本の内容を思い出して楽しそうに笑う。
「ほぉ~、そんな事を思っとたなかがか。なら銀嶺族が治める冬島に着いたら腕に寄りをかけて絶品料理を食わせてやるぜよ」
それを微笑ましいそうに見ながらカブラはどういった料理を作ろうか考えながら、今晩用の料理を仕込みに船の調理場に向かった。 ──────────────────────────────────────────────────────
──新世界の何処かの海を進む麦わらの一味が海賊船『サウザンド・サニー号』食堂
「ムトさんに会いに行くってのは本当かトラ男!」
そう晩飯の準備をしながら嬉しそうに声を上げるのは麦わらの一味が料理人『黒足』のサンジだ。
「そう言えばお主は『赫足』の小僧が料理長をしているバラティエに居ったんじゃたな・・・あの時のチビナスが大きくなりおって」
そう言いながらナズナはサンジの頭を撫でてサンジは照れ臭そうにしながらも、その手を優しく頭から剥がす。
その行動を見ながらサンジが麦わらの一味入りをする前に海上レストランバラティエに努めていたと言っていたのを思い出したローは銀嶺族が長『山神』ムトと接点があった事を悟り、これは期待出来ると確信する。
「ポポ肉についてなら俺も知ってるぞ!修行中にレイリーから貰ったんだ!」
そう言ってたんこぶが出来た頭を擦るのは麦わらの一味が船長麦わらのルフィだ。
・・・頭にたんこぶが出来ているのはつまみ食いをしようとしたのが理由な為養護不可能である。
「本当かルフィ!」
「どれくらい美味いのか俺達にも聞かせろよ!」
そうルフィに話し掛ける二人組は麦わらの一味が船医『綿あめ大好き』トニートニー・チョッパーと麦わらの一味狙撃手ゴッド・ウソップだ。
その質問に対しルフィは当時を思い出し「にしし」と楽しそうに笑いながら、
「それはもうすんげぇー美味かった!」
と答えてから続けて、
「でもよ、レイリーはただポポ肉を焼くだけでサンジが普段やっている様な料理はしてなかったんだ・・・だから俺サンジがポポ肉を調理するのスンゲー楽しみにしてんだ!」
と発言した。
「ヨホホホホ!ルフィさん達が楽しみにしている気持ち、私も分かります。もう五十年以上前の事になりますが、私もポポ肉を食べた事がありましてね」
そう発言するは麦わらの一味音楽家、そして世界をまたに掛けるミュージシャンでもある『ソウルキング』ブルックだ。
「あら、そうなの?」
そんなブルックの発言に反応するのは麦わらの一味考古学者『悪魔の子』ニコ・ロビン。
そのロビンの疑問に対してブルックはバイオリンを引き、「ええ」と肯定した。
食堂で茶を啜っていた錦えもんもポポ肉について興味津々の様でブルックを眺めている。
「私はシャンクス達から聞いただけで食べた事は無いかな・・・ねぇ、ブルック。ポポ肉について教えて!」
そう麦わらの一味歌姫ウタがブルックに頼み込み、ブルックは昔を思い出しながら話し始める。
「楽園側ではありますが、私が嘗て所属していたルンバー海賊団の者達と共に銀嶺族と交流ていた料理店に足を運んだ事がありました。その時頂いたポポ肉の美味しさを思い出すとほっぺたが落ちる程に・・・私頬無いんですけど!スカルジョーク!」
そう巫山戯るブルックを尻目にポポ肉について詳しく教えてくれそうなサンジに聞こうと思った錦えもんは晩飯の下拵えをしているサンジにどの様な料理があるのか質問する。
ポポ肉に興味津々なルフィとチョッパーにウソップ、会話を聞いていた麦わらの一味航海士『泥棒猫』ナミもサンジ特性ドリンクを飲みながら耳を傾ける。
「ポポ肉を使った料理と言っても種類は結構ある。昔クソジジが作ってたレアステーキは絶品だったし、俺がバラティエでよく作ってたウェルダンステーキも捨て難い。他にも味噌に漬け込んで味噌風味にするのもありだし、味噌じゃなくて醤油で締めるってのもまた乙だしなぁ・・・あぁ、肉の表面だけを強火で軽く焼いた状態をレアステーキと言って、肉の内部に赤みが残らないようによく焼いた状態の事をウェルダンステーキって言うんだ」
そうやって美味しそうに料理を喋るサンジを囲みながら各々が自分が食べたい料理の名を出し、それをサンジに質問する。
ナズナはそうやって食堂に集まっている者達を眺めながら久し振りに銀嶺族が治める里に向かう事になるなぁと思いながら一人甲板に出る。
ナズナが甲板に出るとモモの助が一人で海を眺めているのを見つけたので彼に近付き、モモの助もナズナに気付いた様で明るい表情で手を振ってくる。
モモの助は八歳で有るのにも関わらずワノ国が将軍光月家が跡取りだ。
この場に居る者達の中で光月家の存在を知っている者は光月家が家臣狐火の錦えもんと『薄墨』ミズハだけで、誰が詮索してくるか分からぬ為に表向きは錦えもんとモモの助は親子と偽装している。
その事でモモの助がストレスを溜め込ま無い為にも銀嶺族か治める冬島に向かうのは有りかと考えていたナズナはモモの助に話し掛ける。
「モモよ、お主は銀嶺族と言う一族を知ってはおるかの?」
ナズナにそう問い掛けられたモモの助はトキトキの能力によって未来へ飛ばされた自分にとっては数年前、世間では約二十年前の事を思い出し楽しそうに答える。
「銀嶺族と言うとポポ肉でござるか!昔ロジャーや父上と共に食べた事がありまする!・・・そう言えばナズナ殿は食べた事がポポ肉を食べた事があるのか?」
そう笑いながら聞いてくるモモの助の頭を微笑ましそうに撫でながら肯定し、これから銀嶺族が治める里に向かうとモモの助に伝えるナズナ。
・・・丁度その時、
「野郎共ぉー!此れから銀嶺族が治める里に向かって全速前進だぁ!」
と船長の号令が轟き、其れに船員達が答える。
それを眺めながら面白くなりそうだと一人微笑むナズナであった。 ──────────────────────────────────────────────────────
──麦わらの一味とセレーネ&マーロウが銀嶺族が治める里の近海に辿り着いた同時刻、近海の海中に潜む金獅子のシキ傘下の海賊潜水艇内
「フフフ、アーッハハハハハハ!遂にこの時が来ぞお前等ァ!」
「「「「うぉー!」」」
金獅子海賊団傘下の男は自らの海賊団員達に力強く言い放ち、船員達もそれを受けて雄叫びを上げる。
彼等が金獅子のシキから受けた命令は銀嶺族が代々守り通している古代遺跡──その最深部に眠る『とある秘宝』を持って来る事だった。
遺跡自体には然程重要性は無くて、その為とある秘宝について知っているのは者達は居らずナズナでさえも確証を持っていない程に『それ』は過去の銀嶺族達の手によって厳重に守られていたのだ。
・・・この男が金獅子のシキの元にやって来るまでは。
「──長かった、本当に長かったぞ!銀嶺族の愚か共め!『あの秘宝』と俺の“能力”さえあれば我等銀嶺族は世界政府に取って代わり、世界を征服出来たものを!」
その男の慟哭を聞いて船員達も口々に銀嶺族への罵詈雑言を吐く。
そうこの海賊団は嘗て銀嶺族から追放された者達の子孫達によって結成された海賊団なのだ・・・船長を除いて。
「あの時は銀嶺族共とそれに協力したモンブラン・ノーランドの邪魔が入ったばっかりに敗北してしまったが、今回はそうはいかん・・・あの時の雪辱を果たして秘宝を手に入れた暁には目障りな金獅子のシキや四皇達を殺し、世界政府に成り代わり世界を支配してくれる!」
そう言った後男の姿が褐赤の鱗を纏った巨大な龍に姿を変えていく。
神話のドラゴンを思わせる堂々たる威容、強靭な四肢と翼を有する龍らしい姿を持ち、頭部には歪に捻じ曲がった一対の巨角を冠する『赤龍』と呼ぶべき姿。
これが男の能力、リュウリュウの実幻獣種モデルムフェト・ジーヴァだ。
・・・実際はモデルムフェト・ジーヴァの模造品と言うべき物ではあるが、その性能や能力は本物と何一つ違わない。
尚男はそれを知らない訳だが、世の中には知らなくても良い物が沢山あるので問題無かろう。
男は自らの気分が昂ぶっているのを感じながら、覇気と古龍種が持つエネルギーを放出させながら高笑いする。
「待っていろ、支配されるべき愚か者共よぉ!アーッハハハハハハ!」
世界を支配せんとする赤き龍の侵攻の魔の手が銀嶺族の里に迫るのであった。