ホーキンス過去捏造

ホーキンス過去捏造


「素敵な金色ね」

「吸い込まれるような赤を持っているな」

「あら、ずいぶん背が伸びたのね」

「髪の長さも充分だな」

「そろそろかしら?」

「あぁ、そろそろだ」


ぼくは、両親に愛されて育ちました。

溢れるほどの想いと、願いを、詰め込まれて育ちました。

ぼくは、明日で七歳になります。



「素晴らしい金髪だな」

「なんて美しい赤い目なのかしら!」

「おや...綺麗好き、本が読める、占いの精度は素晴らしい...」

「それならあの部屋に置きましょうよ、浴室も本棚もありますし」


ぼくは、両親に愛されて育ちました。

溢れそうなほどに詰め込まれた欲望と、輝く黄金のために育ちました。

ぼくは、今日で七歳になりました。



悲しくなんてありません。

愛されているし、綺麗な部屋、綺麗な服があります。お祝いのパーティもしてくれました。


哀しくなんてありません。

沢山の本とタロットカード、石鹸にバスタブ、大好きなクッキー。他にも色々...。


かなしくなんてありません。

たりないものは、ひとつもありません。



「そうだわ!来年も再来年も、ずっとずーっとこうして集まってパーティをしましょう!」

「それはいい!きっと、いや絶対に楽しいな!」


ぼくはずっと笑顔だったし、朝の占いだって悪くない。

きっと大丈夫。

良い一日になりますように。


嘔吐く声と、詰め込まれていた赤と薄橙と、それから黄色。

全部がいっぺんに飛び出してくる。

体内に海があるのなら、今は満ち潮で、大荒れだろう。

溶け切っていない錠剤、ついさっきまで生きていたもの、何かの果実のようなかけら。

色とりどりな内容物を、うずくまったまま眺める。

周りの喧騒を横目に、ふと自身の髪が目に映る。

いや、これは、髪ではない。

触れようと手を伸ばせば、その形をした別物が見えた。


枯れた淡い黄色。

髪が揺れる度に、手を動かす度に、ザワザワガサガサと音を立てる。

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