ホワイトデーエラスレSSもどき

 ホワイトデーエラスレSSもどき


 穏やかな日差しの降り注ぐ昼下がり、エラン・ケレスはベンチに腰掛け、一人の少女を待っていた。

 「お待たせしました。エランさん」

 「大丈夫。僕もさっき来たところだから」

 読みかけの本を閉じ、ベンチのわきに置く。 

 少女が隣に座ったのを確認し、可愛いらしくラッピングされた小さな小袋を渡す。

 「スレッタよかったらこれ」

 「ありがとうございます」

 反射的に受け取ったものの、プレゼントを貰うような覚えもなく、しげしげと眺めてしまう。

 「この間、貰ったお菓子のお礼」

 「ああ、あの時の!」

 以前、地球寮の女子達でお菓子を作った際、美味しかったのでエランにもお裾分けしたことを思い出す。

 「そんな気にしなくても」

 「僕が、したいと思った。それに、君が好きそうだったから」

 「あ、ありがとうございます……」

 そんなに喜んで貰えたのかと嬉しく思うと同時に、こんなに可愛いらしい物を貰えるのかと少し恥ずかしくもある。

 「開けてもいいですか?」

 「どうぞ」

 淡いピンク色の包装紙を縛る綺麗な赤い色のリボンをほどくと中には、瓶に詰められた色とりどりのキャンディーが入っていた。

 「ありがとうございます。エランさん!食べるのが勿体ないくらい綺麗です」

 「喜んで貰えて良かった」

 キラキラと袋の中身を眺めるスレッタを見て、エランの口許が自然と綻ぶ。

 穏やかな昼下がり、春の日差しに似た優しい光が、二人を照らしていた。

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