ホビウタと砂漠の王女

ホビウタと砂漠の王女



私の名前はネフェルタル・ビビ、グランドラインにある砂漠の大国アラバスタ王国の王女、そして『クエ~?』ふふっ、私の友達の超カルガモのカル―よ。

私は今、4年に1度行われる王たちの会議、通称『|世界会議《レヴェリー》』に参加する父と共に、久しぶりに海へと出た。


潮の匂いを運ぶ海風を全身に浴びると心が躍る、果てしない水平線を見ながら懐かしい冒険の日々に思いを馳せながら私は手に持った新聞に目を落とした。


世界のあらゆるニュースが載っている世界経済新聞、その一面を飾るのは懐かしい麦わら帽子の似合う私たちの国の恩人、モンキー・D・ルフィさん。そして麦わらの一味の新しい手配書が一緒に同封されていた。


麦わらの一味の新しい手配書、懐かしい顔と、会ったことはないけれど手配書で見慣れた顔が並んでいるのをカル―と一緒に見る。


「ほら、カル―見て!新しいルフィさん達の手配書よ!」

「クエッ!」

「懐かしいな……ルフィさん元気そうね」

「クエ~!」

「うん……Mr.ブシドーにナミさん、ウソップ……さんは素顔だけど、傷だらけ??サンジさんも似顔絵じゃなくなったわね!トニー君の懸賞金も……あ、上がってるけど、落ち込みそうね……ミス・オールサンデーううん、ニコ・ロビンも前よりも良い表情してる……フランキーさん、それとブルックさん、私たちが会ったことはないルフィさんの仲間たち……ん?これは、ルフィさんの新しい仲間かしら……え?U・T……A、ウタ……ウタちゃん?ウタちゃんだわこの人!!間違いないわ!!」

「クエッ!!」


その、手配書はぬいぐるみのあの子と同じ名前を持った女性だった。

「|悪魔の人形《デビルドール》ウタ」という2つ名をつけられた人形ではなく、満面の笑みでこちらに手を振る、とても海賊には見えない、初めて見る筈なのに懐かしささえ感じる女性が、大切な仲間の名前で写っていた。

すぐに確信した、彼女は私の知ってるウタちゃんだって。

潮風に靡く髪を遊ばせ目を閉じて、私は麦わらの一味との冒険の日々に思い出していた。


***



麦わらの一味の船長のルフィさん、クロコダイルを倒してくれて、一緒に命をかけてアラバスタを守ってくれた人。

初めて会った時は双子岬に住むクジラのお腹の中だった。

Mr.9と一緒になってバズーカをクジラの中で使って、灯台守のクロッカスさんにも酷いことをしてしまった。その時に私はウタちゃんに、Mr.9はルフィさんに殴られたっけ。


「何となく殴っといた」(どーん!!)

「キィ!」


あんなやわらかそうな腕に殴られたなんて最初は信じられなかったけど、後々間違いじゃなかったって、むしろ手加減されていたんだって知ったわ。


ログポースを無くした私とMr.9はルフィさんの船に乗せてもらって当時の私たちの拠点だったウイスキーピーク、賞金稼ぎの町へと彼らを誘い込んだ。


飲ませて、食わせて、疲れさせて、眠らせて……そうして海賊を捕らえて海軍へと引き渡す。

組織の資金を稼ぐというボスの顔すら拝めない場所だったけど、私はイガラムと共になんとかその組織で私はミス・ウェンズデー、イガラムはMr.8と、コードネームを与えられる地位にまで漕ぎつけた。


イガラムとペアを組めたら一番良かったけどそうはいかなかった。でも、私とイガラムのペアになったミス・マンデーとMr.9は幸いにも気の良い人たちだった。


ペアを組んで、ウイスキーピークで色んな海賊を相手にしてきた。グランドラインの入り口にいる海賊なら数で押せばなんとかなってきたから。でも、彼らは……麦わらの一味は本当の強者だった。


100人いた賞金稼ぎを私たちは一人の剣士と、そして愛らしい人形1体に壊滅したのだ。


Mr.ブシドーは一味の皆が寝ている中、1人起きていた。

ウイスキーピークまでの航海中、あんな雪に春一番、嵐に霧に氷山、船底の水漏れ等々のトラブルで大騒ぎだったのに、1人ぐーすか寝ていたのに、ナミさんとウタちゃんに思いっきり殴られてタンコブを4段重ねほど作っていたのに、ただのお間抜けじゃなかったんだわ。


月を背にして、こちらに見せた不敵な笑みに私たちに緊張が走ったのを覚えている。そんな彼の肩には、船にいた時はよくルフィさんの肩に乗っていたウタちゃんがいた。


その後はもう大乱闘の幕開けだった。

Mr.ブシドーは本当に強くて……ナミさん曰くバケモノみたいに強くって、こんな強いのに一味の船長でも賞金首でもないのかって驚いた。

そして、ウタちゃんがあんなに強いなんて思ってもみなかったわ。


「賞金稼ぎ、ざっと100人ってとこか……相手になるぜバロックワークス、『キィ!!』おい、ウタお前もやんのか?おれだけでも『ギィ~!!』いってぇ!!わぁったわぁった!!耳を引っ張んなって!しまらねぇ!!たくっ……待たせたなお前ら……オシ……戦るか!」

『キィ♪』


なんて言って、嬉しそうに笑いながらMrブシドーは私たちと戦いを始めたの。

縦横無尽に駆け回るMrブシドー、なんとかミス・マンデーが彼の背後を取って、その怪力を持って大きな梯子を振り回そうとした時だった。


「キィ!!」

「んなっ!?なん、「ギィィ!!」ぎゃあぁぁぁ!!」

「おわっ、あっぶね!いつの間に!?って……おお~ウタやるじゃねぇか!助かった、ありがとよ」

「キィ!」

「う、嘘だろ!!なんだあの人形!!」

「み、ミス・マンデーを殴り飛ばしたぞ!まさか力で負けるなんて……う、嘘だ~!!」

「その前にあのでっけぇ梯子ぶっ壊したぞ!?どうなってんだ!!」


確実に後ろをとったはずなのに、ウタちゃんは的確にミス・マンデーが振り下ろした長い木製の梯子をその柔らかな腕で壊した、そしてそのまま鍛えられた肉体を持っていた彼女を空中で回転を加えながら、その柔らかな体を捻って攻撃をした。


ただのぬいぐるみじゃないのは明白だった。


その後はMr.9も私もイガラムも加えた100名全員伸されてしまったのだ。


***


そこからも怒涛の展開だった。

ボスからの指令を受けてやってきたMr.5とミス・バレンタインに、イガラムと私がBWが国家転覆を狙っているアラバスタ王国の王女と護衛隊長だとバレてしまった。

イガラムが、そして理由を飲み込めていないだろうMr.9にミス・マンデーがペアを組んだよしみだと、友達だからだと私が逃げるのを手伝ってくれた。それでも、Mr.5とミス・バレンタインは強く追いつかれそうになった時、ついさっきまで敵だったあの2人が助けてくれた。



――ハナクソ斬っちまった!!!

――……ギ

――そんな目でおれの刀を見るなウタ!!おれが一番ショック受けてんだよ!!

――畜生!なんてしつこいやつこんな時に!キャッ!?……え?

――キィキィ~!!

――クェ?


ウタちゃんが、まるで「もう攻撃しないよ!」と言わんばかりにカルーの頭の上に飛び乗って両腕を上げて必死にアピールをしてきて思わず武器を下ろしてしまった。ウタちゃんはピョンッっと軽やかに「助けにきた」と言ったMr.ブシドーの肩に戻りMr.5とミス・バレンタインの2人と対峙した時だった。


怒りの表情を浮かべた、お腹をおもいっっっっきり膨らませたルフィさんがやってきたのだ。


***


そしてMr.ブシドーはルフィさんと戦いを始めた。

凄まじい攻防、今までこんな強さの人たちを見たことがない。

思わず、この間に逃げた方がと思っていたら、2人の争いから逃げてきたのかウタちゃんがまたカル―の頭の上に乗ってきた。そしてジッと……Mr.5とミス・バレンタインから目を離さずにいた、今思うとあれはきっと護衛を放棄したMr.ブシドーの代わりに私を守ってくれてたんだね。


そうこうしている間に、戦いを邪魔するなと、彼らの視界にも入っていなかった2人のオフィサーエージェントを、私たちが手も足も出なかった、Mr.5とミス・バレンタインをルフィさん達はそれぞれ一撃で倒してしまったのだ。


オフィサーエージェントを瞬殺する強さを持った2人だったが、さらなる強者・ナミさんの登場によって戦いは終わった。


――あ、あのバケモノ2人を一瞬で……こ、こわい……

――(ガタガタ)く、クェ~ッ

――キィ……

――あらウタ、お姫様を逃がさな、んんッ!守ってたのねご苦労様♪……にしても、いい加減ジタバタすんじゃないわよっ!!あんた達!!

――いってぇっ!!×2


うん……ナミさんが一味最恐だったわね。


***


「色々……あったわね」

「クー?」

「カル―……本当に色々あったわね、ウイスキーピークで彼らの船に乗ることになって、巨人や恐竜がいる島に行って、雪が降る冬島の王国で桜を見た……夜の海は静かだったけど……船は、メリー号はあんまり静かな夜はなかったわね」

「グエ~……」

「ふふふっ!アナタはルフィさんとウソップさん、それとトニー君と一緒になって冷蔵庫荒らしをしようとしてサンジさんに怒られてたわね、夜な夜なトレーニングを始めるMr.ブシドーもいたし、寝ぼけて枕を投げるナミさんもいた……どんな日でもウタちゃんは起きていてくれたっけ」


そう、王国が近づくに連れて不安で仕方がなかった日はウタちゃんがよく傍に来てくれた。温かいミルクを持ってきてくれたり、私の話を聞いてくれたり……そして、時々ウタちゃんがキッチンの方に赴いては聞きなれたメンバーの悲鳴が上がったりしていたこともあった。


リトル・ガーデンからの出航後、ナミさんが倒れた。

医療の知識どころか風邪を引いたこともないと言うメンバーに驚愕しているとウタちゃんは腕にゴム手袋をしながらナミさんを必死に看病していた。私も、民間療法程度の知識しかないがウタちゃんと一緒にナミさんの着替えの手伝いや。ご飯を食べやすいようにクッションの位置を変えてサンジさんが作ってくれたスープを少しでも摂れるように腕を上げるもの辛そうだったナミさんい少しずつ飲ませたり、看護の域ではあったが一緒にした。


ウタちゃんは、その小さな体で沢山のことを一生懸命していてすごく頼りになる仲間なの。

それはアラバスタについてからも同じだった。


***


レインベースからアルバーナへと向かう道中、ラクダのマツゲ君の友人だと言う幻のヒッコシクラブのハサミ君に乗せてもらった時だった、クロコダイルの腕からルフィさんが私を庇ってくれた、そして肩に乗っていたウタちゃんを私に投げた。


「ちゃんと送り届けろよ!!!ビビを|宮殿《ウチ》までちゃんと!!!ウタ!!ビビを頼む!!」

「「「「「ルフィ(ギィ)!!」」」」」


心配で仕方がなかった、すぐにでも止まりたかった。

でも、もう国の命運のタイムリミットは切られた。ナミさんがMr.ブシドーが、サンジさんがウソップさんがトニー君が、私に心配するなと、だれがどうなっても生き残れと、1人で戦っているんじゃないと、守ってあげると言ってくれた。そしてウタちゃんはまるで「傍にいるよ」と言わんばかりに私の肩に乗って「キィ!」と包帯が巻かれた左腕を掲げて鼓舞してくれた。


カル―と一緒に反乱軍から私を庇ってくれた。「こっちだよ、違うこっち!!」と言ってるかのように迫りくる馬やラクダからまるで危険な場所が分かっているかのように私とカル―を誘導して守ってくれた。Mr.2に追いかけられて、戦乱となったかつて人々の笑顔と活気であふれる声が溢れていた通りが、悲鳴と怒号、土埃に火薬そしてむせ返る血の匂いで溢れていた。戸惑いながらも必死に走るカル―に流れ弾に当たってしまった後だって……


――カル―ッ!!

――ギィ!

――……ぐ、グエッ!!グェッ!!!グエ!!!

――うんっ……わかってるッ、わかってる!!

――キィ……キィ!?

――ム~~ダだって言ったでショ~~う!!

――キィ!!

――な~によ!!一度は仲良くなったけどこれも仕事な~~~のヨ~~!邪魔すんじゃな~いわ~よ~う、ダフッ!!

――!?

――よくやったなカル―隊長男だぜ

――サンジさん!!

――キ!

――遅くなって悪いなビビちゃん、ウタちゃん。このオカマは俺が引き受ける、『キィ!!』ウタちゃん、君はこのままビビちゃんを頼む!絶対にコイツを君たちの元には行かせないからさ

――キ……キィ!

――サンジさんっウタちゃん……うん、うんっ、行こう!アナタ達はカル―をお願い!!

――クェ~×2


Mr.2に追いかけられて、カル―がついに倒れてしまった。ウタちゃんがカル―と私を庇うように前にその小さな体で立ち向かってくれた、ウタちゃんに気を取れていたのか横から凄いスピードで超カルガモ部隊が現れてMr.2を吹っ飛ばしたの、そして彼らに連れられてきたサンジさんが残ってくれた。


私はサンジさんとカル―達を置いて、ウタちゃんと一緒に王宮へと再び走り出した。

国を愛する者同士の戦いで倒れる人々、壊れていく町並みに泣きそうになる私を叱咤して必死で王宮へと一緒に走ってくれたのがウタちゃんだった。


そして、王宮にたどり着いて、チャカに会って……王宮の爆破はできず、私はクロコダイルに手も足も出なかった。ウタちゃんが必死で戦ってくれた。だけどクロコダイルには勝てなかった。


クロコダイルに王宮から落とされた――

――ルフィさんとペルが助けてくれた

――王宮の下で、傷だらけだけど、生きていた仲間に会えた。

トニー君、ウソップさんにサンジさん、マツゲ君、ナミさんにMr.ブシドーが……ボロボロでケガだらけだったけど、皆生きて来てくれた――

――ルフィさんがクロコダイルと戦いに行ってくれた、私たちは必死に広場を爆破させる爆弾を探した





――広場の爆破は……ペルが止めてくれた

戦争はそれでも止まらなかった――

必死で声を上げた、戦いをやめて欲しいと、喉が痛かった、声が枯れてきた――

――そんな時、空からクロコダイルが降ってきた、そして国を、人を狂わせた雨が……まるで、争いは、国に巣くっていた呪縛は解けたのだと思わせるほどに……降り注いだ


――ルフィさん……

――キィ!

――ウタちゃんっ、うん!もう敵はいないッ!


戦いを!!やめてください!!……もうこれ以上っ、戦わないでください!!


あの時、国のみんなにも……私の声が、やっと届いたの。


****


彼らが旅立ちを決めたあの日、引き止めることはできなかった。

せめて、笑顔で見送ろうと港に行ったけど涙は止まらなかった。

一緒に行けないけれど、それでも私は仲間と思っていてもいいですか?と彼らに問いかけた。


海軍の追っ手が迫る中、無言でメリー号に並んだ皆が左腕の仲間の印を掲げてくれた。アラバスタ到着直前のルフィさんの言葉がよぎった。


――何があっても、左腕のこれが仲間の印だ!


お前はいつまでも仲間だと肯定してくれた。




***


麦わらの一味の皆がアラバスタを出航した。

パパもイガラムもチャカも、コーザにトトおじさん、皆が国を立て直そうと気持ちを一つにしていた。

その中で飛び切り嬉しかったのはペルが生きていたことだ。チャカと一緒に何も入っていない、ペルのお墓に行ったら「おれの……墓?」と呆然としている姿を見つけた時、チャカと一緒に滝のような涙を流したわ。生きていたことが本当に嬉しくて、その日はテラコッタさん自慢の特製アラバスタ料理が食卓に並んだっけ。


あの日の宴のような食事が終わってパパとイガラムとゆっくり話している時だった。パパがふと、彼女のことを話し始めたのは。


「ビビ……ルフィ君たちの仲間の、あのウタというオモチャの子だが」

「?ウタちゃんがどうしたのパパ??」

「うむ……いや、少し気になってな」

「何が気になるのですか?国王様」


イガラムが心配そうにパパに聞く、パパの深刻な様子に私も大切な仲間の名前を出されて不安な気持ちになる。カル―は分かっていないのか不思議そうに首を傾げていた。


「クエ~?」

「とある王国で……生きたオモチャが人間と共に暮らす国があるという。そこの国は、かつては奇跡の王と呼ばれた男……リク王が治めていた平和な国だったのだが……」

「そこがウタちゃんの故郷!!……だった??」

「クエッ……クー?」

「可能性はある、だが……その国はある日……もう8年ぐらい前になるか……当時の国王や軍隊が、国民から金を巻き上げあまつさえ切りつける事件が起きた、そしてそれを止めた英雄が……今の王となった」

「国を守るはずの兵士や国王が??そんなっ……その英雄、今の王って?」

「……?ッまさか!あの国のことですか!……数ある国の中でも海賊が治める異色の王国……たしか、グランドライン後半の海……通称、新世界にある国……」

「海賊!?……あっ!!」

「そう、クロコダイルと同じ七武海の海賊が治める国、『愛と情熱とオモチャの国』ドレスローザだ……我が国もクロコダイルによって乗っ取られるところだった、それにリク王達の事件も私はまだ信じられないのだ……ただの杞憂であれば良いのだが……」


海賊が治める王国、国民はそれを受け入れていて良い国王様だと、前国王を恨んでさえいるというその王国の存在。

まるで、この国が、アラバスタがもしもクロコダイルに乗っ取られていたらと思わせるほどの内容に私は胸がざわついた。

ウタちゃんがルフィさん達の敵になるなんてことは天地がひっくり返っても、それこそ何が起きてもおかしくない、常識のほうを疑えと言うこの海においてもありえないことだ。

それでも、その国の名前と王たちに起きた出来事を私はずっと忘れることは出来なかった。


2年後のある日の新聞でその国の名と、そして王の帰還、そして海軍大将の土下座という知らせが載った。とある海賊のことも、そう、ドレスローザでルフィさんがドフラミンゴを倒したと載ったの。

新しく更新された一味の手配に『UTA』の見慣れた名前の、でも見慣れない姿の女性でも、何故かな?すぐに分かったの『ウタちゃん』だって。


****


レヴェリーで小さな妖精さん、ううん小人属を見つけたの。その小人属と一緒にいたのはドレスローザから来たというレベッカだった、大切そうにルフィさん達の載った新聞を持っていたから分かった、彼女も私と同じようにルフィさん達に助けてもらったんだって。


人魚姫のしらほしも加わって私たちはそれぞれ、彼等との思い出を語り、私はレベッカ、ウタちゃんのことを聞いてみたの


やっぱりあの女の子はオモチャだったウタちゃんが人間に戻れたんだったことを知った。そして、彼女の歌に勇気づけてもらったことも。

私が思わず「ウタちゃんの、歌……また聞きたいなぁ」と溢したら、レオさんが目をキラキラさせてある物を取り出してきた。


「2人ともウタランドのお友達なら是非とも聴いて欲しいれす!バルトロメオが音貝を沢山送ってくれたのれす!!ふきょー用ってやつれす!!」

「え?」

「わたくしにも?でも……これは?お巻貝ですか??」


八宝水軍の13代目頭領のサイが若干苦笑いしながらルフィさんの子分仲間の1人が麦わらの一味の昔からの熱烈なファンらしく、ウタちゃんがドレスローザを出た後の宴で歌った曲を音貝に録音してくれたそうだ。

(ちなみに、そのファン歴は私が彼らに出会うよりも前と知って驚いた)


ドキドキしながら殻頂を押してみた、そこから聴こえた『歌』を聞いたとき、私は涙が出てきた。


脳裏にあの羊の船首の船での日々、麦わらの一味との冒険の日々、そしてあの小さなぬいぐるみのことを思い出す。心に響くこの優しくも力強い歌声は、間違いなく彼女だ。


皆に会いたくなる。


この先の海、新世界のどこかで彼らはきっと旅をしているのだろう、レベッカやしらほしみたいに、誰かが困っていればその手を取っているのだろう。決して英雄になりたい人ではない、だってあの人はヒーローのようにただ助けて終わりではなく、一緒になって宴を楽しみたいと思う人だから。あの日ルフィさんが目覚めた夜、宮殿でやった宴のように。


掻き込むどころか文字通り、吸い込むように食事をとっていたルフィさんの姿が浮かぶ。それに対抗して必死で目の前の食事をルフィさんに取られないように急いで食べる皆の姿、最終的には踊って、歌って、全員で笑っていた。

腹踊りをしていたルフィさん、その長鼻で皿回ししていたウソップさんと一緒になって皿回しをしていたウタちゃんの姿を思い出す。

賑やかで、笑いの絶えなかったあの宴が懐かしい。


この世界会議が終われば私はアラバスタへと戻る。彼らを追いかけることはできない。

彼らの本当の冒険を新聞からでは正確に知ることはできない、彼らの本当の冒険を知ることはできず、事実を捻じ曲げたであろう悪名だけが上がっていくの少し……ううん、本当はすっごく嫌だ。


皆にもう一度、会いたい、仲間だと言ってくれた彼らに。

そしてウタちゃん、人間に戻れた貴女に直接会いたい。

今度は貴女の声を、歌を直接聞かせて欲しいって思うのは、ちょっと贅沢かしら?でもきっと、いつだって優しかった貴女なら『聴かせてあげるに決まってるでしょ!』って言ってくれそうな気がするの!

だから、再会の日まで守られてるだけじゃない、諦めない強い自分でいられるように頑張るから。

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