ペンギン氷割り&最強船ポーラータング号パターン
(前略)
──その時だった。
「うおおおおおッ!!」
海底から響く絶叫に、拳を振り上げた黒ひげが、その幹部たちが、逃げ惑うハートの海賊団の船員たちが、思わず動きを止める。刹那、凍った海が薄い飴細工のようにひび割れた。
「な、何だ?!何が起こって──」
「……!」
空高く昇った威勢の良い水柱が太陽の光線に当たって砕ける。真っ二つに割れた海。そこから飛び出すのは、槍を手にしたツナギ姿のペンギン帽子。驚愕した黒ひげの指の力が緩み、ローは激しく咳き込む。
「あ……あり得ねェだろ!氷の海だぞ?!生きてるわけが──」
「ゴホッ……言っただろ?極寒港育ちなめんなって」
氷の海に飛び出したツナギ姿のクルーたちは、負傷をものともせずに凍った海面を滑走し、黒ひげの幹部たちを翻弄する。海底に潜むシャチと海上で跳ねるペンギンは、想定外の事態に右往左往する帆船へ突入していく。先ほどまでの勝ち誇った態度とは一変し、顔中に冷や汗を浮かべた黒ひげに、ローは心からの嘲笑を浴びせた。
「てめェの敗因は能力に固執したことだ。どんなに強ェ能力を持とうとも、慢心していりゃ無能力者に足もとを掬われる。どうだ──舐めてかかったおれのクルーは強ェだろう?」
「ゼ……ゼハハハハ!だから何だ?てめェが今まさに死のうって状況には変わりねェだろう?!」
再び握り締められた拳が淡く輝く。だが、ローの耳は低く呻る海の燕の羽音を聴いていた。
「まだわからねェのか? 今まさに死のうって状況なのはてめェのほうだ!」
地面が割れる。長い冬に待ち望む、太陽の色をした船体が煌めく。海賊旗の笑顔と視線を合わせ、ローと黒ひげの身体は汚濁した海へと飲み込まれていった。
※小説版基準だとポーラータング号は地盤をも割る最強オカルト潜水艦。海中逃走の勝負うやむやフェードアウトパターン。